スルーしないでよマーーーチ♪
私と錬徒と凛凛とフレアは晩御飯を食べた後、暇潰しに近くのコンビニへ行った。
今日はゲーム大会があるので、そのお菓子の買い出しをするのも兼ねて。
凛凛の提案で、コンビニから帰る前に、遠回りをして軽く散歩をする事になった。
暗い路地を歩く私達。
夜になると、この一帯は雰囲気がガラッと変わる。
高層マンションや閑静な住宅街がひしめくので、路地がかなり多く、その道は静かでとても暗い。景観を損なわない為か、電柱が少ないからだ。
駅周辺に近寄れば、また雰囲気が変わるのだろうけれど、私達は静かな夜風を堪能したかったので、わざとこういう道を散歩している。
意外かもしれないけれど、このメンツは案外、黄昏たり物思いに浸るのが好きな部類の人間達だ。錬徒なんて一見そんな感じは全くしないが、実はと言うと、あいつが一番そういう面を持っている気がする……
散歩中、凛凛が、マンションの入り乱れた中にポツンとある薄暗い公園に入りたいと言い出した。
そこは、やけに掃除が行き届いているし、遊具なんて新品ぐらい綺麗で、公園の面積も結構広い。立派な公園。
だけれど、この公園は何処か奇妙で、この前ここを通った時、幽美ちゃんが、「ここはあまりよくない場所ですわ……」と言ったぐらいの場所でもある。
雰囲気で言えば、誰もが知らないふりをする公園、無意識に焦燥感が湧く公園、そんな感じ。
「はぁーあ、良い気分。私ここ凄く好きだわー」
ギィ―イ、ギィーイ、ギィーイ、ギィーイ……
凛凛が、酷く静かな公園にブランコの音を響かせながら言う。
ビュービュービューと振り子のように揺られて、金に輝く瞳で満月を見ている。
その様子を見ていると、きっと将来美人になるんだろうなと私は思った。
だけれど、『だろうな』と言うのは間違いで、この子は確実に美人になるのは決定済み。
何故知っているのか?と言われたら、『見たから』としか言いようが無い。
「わかるわー、なんつーか、俺の地元に雰囲気が似てんだよなー」
錬徒、あんたの地元やっぱ狂ってたのね。
錬徒も凛凛の隣でブランコをリズムよく漕いでいる。ダボッとした、黒いジージャンとセンター分けのグレー髪だけで見れば不良だ。その髪はとても満月の光を吸っている。
「あたしはちょっとここは微妙かな……」
フレアはブランコの囲いに腰掛けて言う。
その格好は、鮮やかな夜色が入ったパーカー、デザインがスタイリッシュ。
真紅の髪はサラっとし、ストンと落ちている。
「なんでフレア?」
私はフレアの隣で言った。それが普通の感性だよ、と実は思いながら……
「え、だってー……ここって、境界がおかしいっていうか……交わっちゃいけない所と交わり過ぎている感じがするし……ほら、あれも」
フレアが指差した。
そこには、シュールなオブジェがあった、とても奇妙な像とも言える。
恐らくは、なんの悪意も無い芸術家が過剰に演出し過ぎて、独りよがりな感じで作ったんだろう。
それが、間違った意味をこの場所において成してしまい穢れを放っている。
穢れとは、本来その秩序にあるべきではない事を言うらしいが、確かに、ここにあるべきでは無い見た目であるから納得だ。
「ほんとだわ……気色の悪い形。境界が歪ませてそう……」
私は少し寒気がして公園を見回した。
「そこがいいんだよ!非日常って感じで。あたいゾクゾクしちゃう!てか、フレア、お前、自分の能力差し置いて、そんな事よく言えるなー(あはは)」
フレアの能力……斜跳目鬼と天視姫か……
「うっさいわねー、んーまぁ……確かに『狭間』はそんな感じだけど……でも、違うの!!!」
フレアがむくれながらも恥ずかしそうにする。
「私も、遊園地のお化け屋敷みたいでゾクーッ!って感じがするから好き!!」
凛凛は楽しそうにブランコをブンブンと漕ぎながら言った。
様々な秩序や世界が、『場所や時間や行為』によって交わり、境界が不安定になると怪現象が起こると古くから言われたりもするわよね。例えば逢魔ヶ時とか。
「ちょっとずれてると思うよ?そういうのが楽しいって」
フレアが溜息を尽いた。
「仕方ないわよフレア。非日常の存在から見てもイレギュラーな子達だし」
あなたも含めてね。
私は少し笑いながらコソコソっとフレアに言った。
「聞こえてるよ、レシカねーちゃん。俺の事、ぶっとんだイケメンって言ってるでしょ?」
「あはは。でたわ、錬徒の自認イケメンギャグ!もう、100回目ぐらい聞いてるから全っ然おもしろくないわ!(ケラケラ)」
凛凛が底抜けに明るい声で錬徒を貫く。
「フフッ、言われてんの錬徒。乙女三人の前で泣いちゃダメよ?」
フレアが言い、私と顔を見合わせクスクスと笑い合う。
「泣くかよ!俺が泣くときは、ブサイクって言われた時か、おもんねーって言われた時だけだ!」
「今泣きなさい、きっと今がその時だわ」
わたしはすかさず言った。
その時だった……
「え……ちょっと待って……今、なんかいた」
フレアが公園中央付近を指差す。
「何っ!?え?怖いんだけど……?」
私は強いけど、一応怖がり。びっくり系苦手。びっくりさすのは大好き。
「あれじゃね、さっき俺の事ぶっとんだイケメンって言ってた奴がいるんじゃね?そういえば、レシカねーちゃんでも、フレアでもない声の気がしたし……」
何言ってんのあんた?
……
……
「あ……いた。一瞬、見えたわ」
凛凛が真顔でフレアが指差した方向と全然違う方向を指差す。
「スルーしないでよマーーーチ♪」
錬徒がブランコから飛び降りた。
軽々と、世界一の新体操選手でも不可能であろう空中回転を決めながら。
そして、公園の地面をズシャリと踏み、首をポキッと鳴らす。
「さーて、逃げるなら今のウチだぜ?ユー・アー・モンスター達。」
公園の中央には、確実にここに居るべきではない何かが三体、奇妙な風格を持ち立っていた。
あれらはお化けという存在かもしれない……




