レシカ、今日も可愛いぞ♡
西宮浜から帰宅した私と幽美ちゃんは、取り敢えずこの話は二人の秘密にしておこうという事にした。
幽美ちゃんは、せっかく楽しんでいるみんなの気持ちを暗くしたくないらしい。
私は、それを静かに受け入れ、「何があっても助けるから」と心から誓って、彼女を強く抱きしめた。
また一つ、強大な試練が増えてしまった。
私は全てをクリアしていけるのだろうか?
不安。
恐怖。
物凄くある。
一人で脱走したあの瞬間には、何もなかったのに。
私も人間だ。
全てはとても大切な事だと理解しているが、勝手にストレスは湧いてくる。
だからこそ……
やらなければいけない事がある。
「ねぇ、やっぱりあなたって弩級の変態よね?」
ヨゼがベッドの上に座り、黒いビキニ姿で豊満かつ乳白な肌を大胆に露わにし、私に言った。
「ごめんなさい。あなたの言う通りだわ。今回はストレスのせいもあるけれど……」
私とヨゼの声が予備の部屋の密室空間に響く。
「……ごめん。私、やっぱりストレスかけちゃってたよね」
ヨゼが申し訳無さそうに俯いた。
「違う違う、貴方の事だけじゃないのよ。他にも沢山重なっちゃって……私、あなたが相談してくれた事、凄く嬉しかったんだよ?それは間違いなく本当なの」
ハグをしようとしたが、至極の肌にダイレクトに触れる事に気持ちが躊躇してやめた。
「ありがと……でも、ストレス与えた分、私ちゃんと頑張るから。レシカに人生捧げるっていっちゃたしね」
ここまでくれば、卑猥な感じがするだろうけど、ちょっと違うの。確かに、卑猥なんだけれど、ちょっと違うはず。神聖なの。
「助かるわ」
私は微笑んで頷く。
「じゃあ、次どーぞ……」
ヨゼが頬を紅潮させて、恥ずかしそうにしながら言った。
「では……ゾウで」
「うん……」
ヨゼは返事をし、四つん這いに体勢を変えた。
「パ……パオーーーン」
ヨゼは体をくねらせ腕を鼻のようにし、ゾウの鳴き声の真似をする。
「ハァ……凄くかわいいわ」
私は息荒く眺める。あの人一倍クールで、ちょっと頑固で、恋愛なんて興味なさそうなヨゼが、ビキニ姿で愛らしく動物の鳴き声をしているんだもの。
「ちょっと下手だったかしら?」
ヨゼはツヤツヤの長い黒髪をサラっと体に垂らし、首を傾げた。
「下手ぐらいがいいのよ」
「今の凄い変態っぽいよ」
「あ、ごめんなさい」
「いいのよ」
もういっそ、私もビキニになっちゃおうかしら。それで、一切触れあわず、延々と動物の鳴き声の真似をするの。
それって……
もはや……
原始的なえっちさだわ。
いいえ、これはそんな話でもないかもしれないわね。
美しい私達が、堅苦しい人間の思考を捨てて、ただリラックスする。一種の催眠療法とかかも。(超適当)
「じゃあ、次……ハトお願い」
「……ハト?」
「無理……?」
やってみるわ。
ヨゼは縮こまる。
「ポーポーポッポー……ポーポポッポーポッポー……」
ヨゼは唇を尖がらせ、不慣れにリズムを刻む。顔全体が物凄く赤い。
「ちょっと!!!それ!!!朝とかのやつっ!!!」
私は思わず大爆笑して吹き出す。
「え!?何!?なんか違った!?」
かわいいかわいいかわいい、バカ程カワイイわ。
最高よ。
グラミー賞(なんの賞かは知らない)
「いえ、いいのよ。フフッ。偶然のファインプレーみたいなものよ」
私は笑いながらも、全然間違ってないよ、とジェスチャーする。
「そ……そう。なんか嬉しいわ……」
あ、何かが開いた音がしたわ。
「じゃあ……次は、子猫」
ヨゼは手を猫のように丸めて鳴いた。
「ぷにゃーーー」
「た、たんま……」
ダメ、ヨゼ子猫、ダメ。
瞳もなりきって、まん丸ちゃんだし。
「大丈夫レシカ?」
飲まれているわ、主催者の私が飲まれている。
「ええ……じゃあヘビ」
「プシャー!!!」
ヨゼは大胆にも私に抱き着き、耳元で鳴いた。
「あああ、うんオッケィ。オッケィ」
私は万歳しながら困惑する。ヨゼの素肌がこんなに近くにあるのが初めてで、鼓動が治まらない。心臓がブレイクダンスしてるわ(私って陽気ね)
「なにがオッケィなのかなぁ?」
耳元で囁くヨゼ。あぁやばいわ。
ヨゼの適応能力を忘れてた……もう、自分のモノにしてる。
「う、うん。ストレスはもうだいぶ削除されたわ」
削除って何よ。
「あら、そうなの?」
「ええ、間違いなく。キャッシュはクリアになったわ」
「変な言い方ね」
私の首に回してる手を正面に持ってきて、私の鼻をピンと突っついてきた。
「作戦大成功よ」
バッチグーと親指を立てる私。
「それは、よかったわね!」
……
……
ヨゼはどいてくれない。目をパチクリさせる私。
「えーっと……」
ヨゼがとろんとした目で言う。
「今日はしないの?……ちゅー」
ヨゼちゃんが小悪魔になっちゃたわ……
「服……着て……しよ?」
私にも美学がある。この格好でするちゅーは単なるちゅーの部類に入るだろう。
でも、いつもの服を着たちゅーは、秘密のスキンシップ的な透き通ったものなのよ。分かる???
「じゃあ着ましょうかね……」
軽く溜息をつくヨゼ。
「ごめんね、矛盾してて」
「全然いいわよ。でも、あなたとちゅーしたいから着るわ!」
ヨゼは献身的な彼女みたいな笑顔を浮かべた……
「ねぇヨゼ」
「何?」
「また……付き合ってくれる?今、怖い感情全部消えてたのよ……」
「勿論よ」
「ありがと」
「次はピンクのビキニでも着ましょうかしらね。ふふっ」
ヨゼはウインクして私の頭を、「よしよし」と言いながら撫でてくれた。
「次は……私も……着てみよっかな」
二人でそんな事した日には……
「楽しみに待ってるわ。きっと大丈夫よ。私達ならどんな状況でも清らかなままでいられるって」
私の美学、理解してくれてたんだ……
「でも、待てない気持ちもあるから、これだけはさせて貰うわね」
ヨゼはそう言って、私の頬に軽くちゅっと唇で触れた。
「……」
頬なのに、やけにいつもより恥ずかしいし嬉しい。そんな感情に浸って無言になる私。
「レシカ、今日も可愛いぞ♡」
不愛想で、いつも窓の外ばかり見ていたクラスの問題児が、こんなことになるなんて……




