レシカ舞踏。星屑のウインク。
「じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ♪じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ♪」
私、古王 レシカはタワーマンションに到着するなり、即行にシャワーを浴びている。
ジュワーっと流れる熱いお湯が、いつの間にか女性らしくなった私の体を純粋無垢に磨き上げる。
浴室に居ながらも、その気分は水遊びするミューズ(女神)さながら。
私の磨かれた肌は、湯煙の中で発光してしまう程にどんどん美しく洗練されていく。
湯煙が輝く神秘の理由を知る為に、私は鏡を腕で拭った。
「えっ!!!だれかしら!??凄く美しい子だわ!!!」
雪白の肌が、お湯で少し赤くなりとても艶めかしい。太ももなんて黄金曲線を描きながらツルツルに煌めいている。
その人物は、おへそまで長い暗幕みたいな黒髪を両手に有り余る程に絡ませ、はて?という顔をしている。
可愛過ぎて直視出来ない程の顔には、アクアマリンの宝石みたく淡く輝く右眼、深く暗い果てしなく荘厳な左眼。
対極に輝く唯一無二の瞳達。
可憐に怪しくという点ではその二つは似てもいるけれど。
私は、じーっと鏡を見つめている。
「え!!?まさかっ!!?この女神ちゃん……私じゃなーいっ!!!もうっ!!どうし・ま・しょ!!!」
私は口を両手で抑え自分の可愛さに頬を紅潮させ、いーーーっと足をバタつかせた。それは、この可愛い乙女のありのままの姿を見られるのが私だけという事に歓喜するように。
ふぅ……さらに大人っぽくなった気がするわね。
施設にいた三年間で大人らしくなった体を確認する為、太ももから、腹を通り、胸を通過して、顎まで、至高のピアニストみたいな繊細な指でなぞってみる。
最終的には右眼の目尻をそっと撫でた。
切れ長で大きく、少し冷ややかな瞳。
上品なまつ毛は天使の羽みたい。それが嬉しくって伏し目がちになってみた。
「はぁ……かわいい」
感謝しなきゃ。
にょろっと細長い白磁の胴と四肢で、カーテンコールみたく仰々しいお辞儀を鏡に向かってする。
私は真剣な顔で鏡を見つめて張り付きながら言う。
「ねぇ……結婚しましょ?」
「ええ……いいわよ」
最早、異常者。というのは重々承知。
小芝居は続く。
「でも、私、もうすぐあがらないと……のぼせちゃうもの……」
「そうね……名残惜しいわ」
「そんな悲しい顔しないで、あなた笑顔が一番可愛いのに、ほら、笑ってよ、ちゅっちゅっちゅ」
もし、私の王の左眼の召喚達がこれを見ているならば、一体どう思うんだろう?
むしろ、この美しさに対して命令を聞いているのかしら。
なーんてね。
もう、あーがっろっと。
私は脱衣所を出てから、新品のタオルで体を丁寧に拭き上げる。
フワフワで新品で無きゃ絶対にダメ。
施設に居た頃、私のせいで専門のタオル業者があの極秘の閉鎖区域に出入りしてたのはちょっと笑える。
先生は、私のそんな数々の儀式的な奇行に「みんなが不気味がってるよ」、と笑いながら言ってきた事がある。
でも、そうは言われても、仕方ない物は仕方ない。
それに一応、こんな私でもあのクラスではリーダー的な存在だったと思う。
異常な能力を持って生まれた子達は一風変わった子が多かったのだけれど、私の素直な言葉には、何故か心から笑っていた気がするから。
懐かしいな、みんなも先生も……昨日まで一緒だったけど。
想い出を振り返れば、全員仲良しで良いクラスだった気もする。
年下組のみんな、無茶な事ばっかり言ってごめんね。
レシカ様生誕祭とか無理矢理やらせちゃってホントごめん。
嬉しかったよ凄く。
先生、悪戯でいきなり後ろから胸揉んだりしてごめんなさい。あの時の、「ふひぃっ」みたいな声、一生忘れないから。
先生も私が思うくらいすごく綺麗な人だと思うから、絶対幸せになってね。
引きこもってパソコンばっかしてちゃダメだよ?
……
クラスのみんなもだよ、本当に絶対に幸せになってね。
また、いつか会おうね。
これは、さよならじゃないんだからね。
私、色々頑張るから。
……
よし、がんば!私。(勝手に一人で元気が出るタイプ)
風呂上がりのまま、想い出に浸り過ぎて、体がスースーしてきたので、取り敢えず下着を着ける事にした。
滑らかに体をしならせながら、甘い香りのする薄ピンクの下着を手品みたいに一瞬で着ける。
その柔らかな下着は、私の柔らかな体に溶けるようにすぐさま一体化した。
なんか、魔法少女の変身みたいだわね。
そして、洗面台の鏡に乙女の一撃。
「てへっ」
舌をペロっとだし、顎を抑え、星屑が飛び散るようなウインクを一撃。
私はタワーマンションの最上階に位置するこの部屋で、下着姿のまま、フローリングを滑るように舞う。
「おいっちに♪おいっちに♪……ふんふん♪ふふふん♪」
ストレッチもかねた優雅で軽やかな舞踏は、床をキュッキュっと喜ばせる。
くるくると回る視界に映るのは、窓から見えるこの街一望の景色。
「パパとママ、執事ーズのみんな、やってくれたわね!この部屋最高じゃないのっ!」
私ってなんでこんな愛されてるのかしら?
私がみんなを愛してるからなのかな?
そんな愛の恍惚に浸って、下着姿で踊っている最中、ソファーに置いたスマホが鳴った。




