キャンサー、ベリーかっこよキュートなもう一つの私の姿。
「キャンサー!!!サジタリアスッ!!!」
容赦はしない。
わたしは巨蟹と人馬のゾディアックサインを呼び出した。
河川敷に大きな黒円が現れ、いつも通り銀河が映し出される。川の水面が揺れるくらいに空間が震え、私の左眼はビカビカと激しく点滅する。
強力な召喚を二体同時に顕現するので、少し時間がかかってしまう。
奴のU字型の吸盤だらけの手が巨大なUFOキャッチャーのようにこちらへ飛んで来た。
「おらあああぁぁぁっっっ!!!」
私を庇うように血沼の空間が現れ、その空間から出て来た三つ指の巨腕が奴の手首をがしりと受け捉えて抑える。
来螺は血色の稲妻と共に一瞬でその地点まで行き、その勢いで血に染まった禍々しい腕で破滅的なアッパーカット。
「ギュオオオオオオォォォッ!!!」
奴は幾つか肉がぶっ飛び、呻き声を上げた。だが、その部分からうねうねと神経が伸びて繋がりだし、急速に再生していく。
「カスタム!!!」
災人がそう叫んだと同時に、スクリューの機械獣が恐ろしく速いスピードで地を六足歩行で這って、そのままジャンプし奴の肩へとしがみついた。
そして口のスクリューを激しく回し、四本の鋭い腕と尻尾を針のように尖らせて、ミシンのように目にも止まらぬ突撃を縦横無尽に駆け巡りながら浴びせかける。
奴は雄たけびを上げ、もう一つの腕でカスタムを鷲掴みにしようとした。
しかし、カスタムはそれをあっさりと交わし、奴の体の背中側に回り出す。
災人は、私の隣で薄い虹色の魔圧を纏いながら目を瞑って集中している。
これも災人の能力。カスタムの体を自身が遠隔で操作する事もできる。災人自身の身体能力にカスタムの肉体を合わせた弩級の機動力が可能になる。
そして、アッパーカットを決めた来螺の姿が見えない事に私は気づいた。
上を見上げる私。
空に何かいる……
あれは、来螺だ。しかし、異形の比率がかなり多くなっている。
両腕が悪魔のように変化し、太い尻尾と身の丈程の翼膜が立派に生え、バタッバタッと優雅に羽ばたいている、それらは全てが鮮やかな血色だ。
まるでそれは、魔を束ねる王が降臨したみたいな姿で、陽に血色の部分を怪しく輝かせ、口を大きく広げて鬼のような形相をしている。
次の瞬間――
鮮血の稲妻が爆発的に激しく光り、来螺の姿が消えた。
一瞬の静寂。
そして――
轟音と共に、何十体もの来螺が同時に分身して存在している。
あれは実際には残像で、瞬間移動的な速度で動いているだけなのだけれど。
だが、それらの来螺が奴に決め込む超インパクトの威力はどれも一級品のような音がしている。
「ひぇーーー、やっぱ二人共強いね。私も負けてらんないわ」
とうとう、私の目の前にはキャンサーとサジタリアスが現れた。
と言っても、防具と武器みたいな物だけれど。
キャンサー。
それは、非常に防御力の優れた異界金属出来たアーマードボディスーツ。
まるで、私の為に作られたかのようなスタイル抜群さが際立つ、ベリーかっこよキュートな装甲服。
細部まで洗練されたデザインは、曲線が非常に滑らかで、ローズゴールドの色合いもとても美しい。
まさに、アンドロイドの女神として生まれ変わったもう一人の私って感じ。
ジェット翼が付いているので飛行も可能だし、魔のエネルギーを変換し酸素を作り出したり貯える事も可能で、宇宙や水中にだって行ける……はず。行った事無いから分かんないけれど。
私が銀河を照らすミューズになりたいって言うのも、こういう能力で無意識に宇宙に行けるかもって思ってるからかもしれない。
ちなみにくびれのラインとヒップのラインが特に可愛くて気に入ってる。後、金属で出来たマントっぽいのがついてたり、スカートみたいなデザインを演出してくれてる所も最高。
まるで本当に、私がカスタムオーダーしたみたい。
「さっ、キャンサー!装着モード」
AIのように喋りすらしないが、私の声に反応して支持を実行してくれる。
キャンサーはまるで生き物みたいに形が変形し、私の体に自動的に装着されていく。
ふぅ……
全能感を感じるわ。
自分の限界能力が飛躍的に向上した事を実感し、少し恍惚状態。
私はサジタリアスを持ち上げた。
「キャンサー、サジタリアス、リンクよっ!!!」
私がそう言うと、片手に持っていた近未来的大型銃は、瞬く間に形を変え、原初の炎が鋭く揺らめく大型ビームサーベルへと変形した。
これも超かっこいい。
私は奴を見た。
目の前では、嵐のような攻防が続いている。
さすが、上級レベルのデーモン……強いわね。
だけれど――
私は足に思い切り力を入れる。
バキキキキキッッッ!!!
足元の地面が凹み、周囲が隆起した。
せーっっっの!!!
「あたしの方が、100倍強いっつーのー!!!」
ズウゥゥゥーーーン――
ローズゴールドの残像を残す超一閃をぶちかまし、気づけば対岸へと着陸。
私が通り過ぎた川面は遅れて水しぶきが高く上がっている。
宙に何かが飛んだ。
奴の左腕だ。
「ギョワアアワワワァァァァッッッ!!!!!」
本当はこんな事はしたく無いんだ。
それはホント。
可愛くあって、なにもかもを笑顔にしてあげたいの。
なにもかもを幸せにしてあげたい。
でも……
生きて無きゃ、その夢は叶えられないから……
ごめんね。




