まるで違う世界で生きてる私のような……
赫の歴戦兵との戦いの後、私達は微妙な空気感になりながらも、阪急西宮北口駅に直結する複合型商業施設に到着した。
みんな、敢えて戦闘の事は口にしないでおこうといった雰囲気が道中そこにはあった。ケバルライのみが「レシレシ、また強くなったんじゃない?」と一言、私を褒めていた。
この絶妙に距離感のある雰囲気を一旦終わりにする為にも、私が頑張らなきゃ。
「取敢えず、火蘭君がブラ欲しいって言ってたから、そのお店から行こうかしら?」
私はありもしない事実を捏造する。
「は!?言ってないしそんな事!もぅ!」
火蘭君は何故か両腕で胸を隠した。そういう仕草が女の子っぽいんだよと私とヨゼは軽く笑う。
「いいわね。私も欲しいわレシカ。念の為、今、私のサイズ計ってくれない?」
ヨゼものってきた。
「はいはいはーい!!!レシカお嬢様の大変なお役目は、このケバルライめが変わって承りまーす!さぁーてお宝拝見!たのしぃーなぁー!(ニチャアー)」
ヨゼの胸元をうろつくケバルライ鮫。
「ねぇ、ケバルライだっけ?おっぱいはお宝じゃないわよ?どちらかと言うと、夢に近いかしら。おっぱいで夢いっぱい……なんちゃって」
ヨゼ……最近凄くイメージ変わるわ。あなた今まで難しい顔してたけれど、そんな事考えてる子だったの?
「そっか……まだ私はおっぱいについて何も知らなかったんだね……自分のおっぱいについてすら何も知らないのかもしれない……」
ケバルライは哲学的な事を言って自分の顎をさする。
どんなホームズなのよ。
「ちょっと、はしたなくありませんか?皆様」
プリオルが私を見て、同意を促してくる。
「おっぱいは、やっぱいーですわね!」
テリオルはお姉ちゃんを見習った方がいいわね。
と、なんとなく場が和んだ所で私達は、清楚で気品あるお嬢様ファッション的なブランドの店に入った。
「ヨゼ!これなんかどう!?」
私は英国風の大きなリボンのついた白いブラウスと、ウエストがタイトでエレガントな広がりが美しい艶黒のスカートを渡す。
「うん……凄く可愛いわ」
普段は制服か、カジュアルで男っぽい服装しかしてないヨゼは、それこそ本物の宝物を見るような乙女の眼差しをみせる。
「じゃあ、買いだわね」
私はあっさりと言う。
「でも……あのお金、本当に使っていいのかしら?」
ヨゼは申し訳無さそうに言った。
「そんな気まだ遣ってたの?いいのよ!」
私はヨゼの両肩に手を置き、心の底から笑ってみせた。
「ありがとレシカ………」
ヨゼも鏡のように同じ感情で笑う。そして続ける。
「でも一千万円って……」
ヨゼと火蘭君には一千万円ずつ送金したのだ。
「ノープロブレム、タイムイズマネー、タイムズスクエアよ」
我ながら適当な言葉。
「ふふっ」
「じゃあちょっと火蘭君のお洋服選んでくるから、他のも見ててね。あ、戦闘様にスカート以外買うのも忘れずに、ヨゼ空飛ぶから、ラッキースケベ隊長ってあだ名で呼ばれるのイヤでしょ?」
それで思い出したわ、ヨゼのデーモンの一件、早く作戦考えないと。
「うん、それはイヤね。合点承知だわ」
ヨゼは海兵みたく敬礼した。
なにそれ、凄く可愛いわね。使ってこ。
ケバルライとプリテリコンビにも、好きなお洋服買ってあげるから、適当に見といてと告げて、私は店内をぐるっと一周し、既に出来上がってる火蘭君美少女計画のイメージに近い服を買い物かごへ、ぽいぽいと放り込んだ。
そして、店前の通路にある長椅子に座る火蘭君を手招きして店内へと呼び込む。
正論による抵抗をブツブツと繰り返す火蘭君に、お洋服を持たせて試着室に放り込んだ。
「もういーかい?」
そう言って私が覗こうとすると、
「まだだよ!!」
と少女のような声で、強気な口調が返ってきた。
暇なので、店内の全身鏡を見る私。
「やっぱりあなたって綺麗ね……」
始まる独り言。
透き通った形の良い薄水色の瞳。
小さくプルンとした桃色の唇。
神が作りし黄金比の曲線で出来た体。
へそまで伸びた、天上の香りのする黒髪。
「あなたの方が綺麗よ……」
一人二役。
私の美しさが負けるというなら、恐らくヴァルゴしかいないだろう。
そもそもあの存在はなんなのだろう?性格は先生を真似したかのような穏やかさがあり、容姿は、瞳と包帯ぐるぐる巻きのシルエットしか分からないけれど、ほんの少し私に似た系統の気がする。まるで違う世界で生きてる私のような感じ……
「私達どうしたら触れ合えるのかしら?」
とても気持ちが高ぶってきた。
私は鏡に手を触れる。このモードになると周りが見えない。
「クローンでも作っちゃう?うふふ」
「そうね、ふふっ」
「ねぇ、レシカ何してるの?」
突然の声に、私は先程の戦闘以上に焦り、バッと振り返った。
そこには、完璧美少女として顕現してしまった火蘭君が私を奇妙な物でも見る目で見ていた。
「あ、ああ、えーっと、演劇とか興味あるの……実は……へへっ」
「へー……」
全部見られたのかしら?もしそうなら、火蘭君の恥ずかしい所全部見せて貰わないと帳尻が合わないわ!
「この服さ、ボクが男って事を無視したらかなり可愛いね!足がすーすーしちゃうけど……」
軽く笑いながらそう言う火蘭君は、何事も鼻っから否定しないのが良い所。後、美しい物には美しいとちゃんという所が好きだわ。
そんな火蘭君は、ピンクのミニスカートを恥ずかしそうにギュっギュっ掴んで動かし、白くて細い太ももを精一杯隠そうとしている。白のニーハイソックスを履きこなす内股姿はまさに流石としか言えない。
私が見惚れていると、火蘭君は艶やかな桃色の唇を尖らせて言った。
「で、どう?」
「パーフェクトよ。今夜その格好でキスしましょ」
「……今夜?」
「イヤかしら?」
少し屈んで薄っすら微笑み、火蘭君の瞳を覗き込んだ。
目で分かる。この子も高ぶっているわ。
「……誰も見てないなら……別にいいけど……」
私分かってるのよ?内心凄く嬉しいんでしょ?
「いっその事、ヨゼも誘っちゃう?」
火蘭君は息を吞み、少し固まった後、私の瞳に吸い込まれるように赤面しながら「……うん」と頷いた。




