真四角ですわ……質感がタコっぽいですわね……
一通り挨拶が済んだ後、今日は、この家からすぐそばにある超巨大ショッピングモールに三人で行くと言う話をケバルライとプリテリコンビにすると、ケバルライは私の周りをぐるぐると周回しだして「私も行きたい!」を連呼し、プリオル&テリオルはぴょんぴょん飛び跳ねて、私の袖口を持ち「お嬢様一生のお願いですわ!」と声を揃えて言ってきた。
もはや、執事達と言うよりか、親戚の従姉妹。
火蘭君とヨゼは「別にいいよ」と軽い返事をしたので、取り敢えずうるさいし連れて行く事にした。
その前に……
「よし!出来上がり!」
私は、テーブルにお気に入りの化粧品七つ道具を広げ、火蘭君に徹底的なガーリーメイクを施してみた。元々長いまつげを、さらにくるりんと巻き上げたり、リップで唇に艶やかな桃色を溶かしたり、チークで頬にキュートさを弾けさせたりと、まるで、握手会に出席するアイドルみたいに洗練された出来栄えになった。
「これ、青花達が来る前に洗い流させてね……」
火蘭君は鏡の自分を神妙な顔で眺めている。傍から見れば、知的故に虚ろな姫と言う感じだ。ガラスの靴が似合いそう。
「えー、ダメ。可愛いじゃん、だから、見せたいじゃん」
火蘭君の透き通る紫の長髪は、私のヘアアイロン技術によって、いつになくストレートに肩に落ちている。
「……レシカは、ボクがみんなに馬鹿にされてもいいの?」
「いいわよ。もっと好きになるかも」
「たまに、君が本当に分からないや」
この部屋にいる女の子達を見て見なさいよ、可愛過ぎて、手で口押さえちゃってるじゃない。
そんなこんなで私達は支度し、タワマンから徒歩十分程の距離にある、西日本最大級の複合型商業施設へと向かった。
道中、私の両腕にプリオル&テリオルがしがみつき、「お嬢様、一緒にやりたいゲームがありますの!」「お嬢様問題ですわ!私が最近作った花壇に植えたお花はさて何でしょう!?」など、甘えん坊の磁石ちゃんみたいに、ずっと喋っていた。
そして……それは突然現れた。
「ええっと……レシカ、これ何?この地域のあるある?」
ヨゼは曲がり角を曲がった先に突如現れた巨大な物体を指差して言った。
「ないないよ……逆に何、マジで」
既に全員がその物体を酷く警戒している。
私は少し呆れたようにそれを見上げた。
閑静な住宅街の中、ショッピングモールはもうそこに見えている比較的人通りの多い場所に、それは明らかな違和感を漂わせながら堂々君臨していた。
「真四角ですわ……」
プリオルが指で四角形を作り、その間から覗きながら言う。
「質感がタコっぽいですわね……」
テリオルが少し後退る。
「デカいね……レシレシ、私がやろっか?」
目つきがもう別人の如く、極氷のように冷たいケバルライ。
「どう……するかな、、、一応、ボク、魔術展開しとくね」
火蘭君がそう言うと、街灯程の高さのある生物っぽい四角形の物体と私達の足元周辺の地面から、草や花が物凄い勢いで芽吹きだした……
「ケバルライは待機、ここではあんたの能力使わない方がいいわ。火蘭君は巨人聖剣で私の援護して」
「うぃーす」
すこしつまんなさそうだが、余計な事は言わないケバルライ。
「任せて」
火蘭君は、目を閉じブツブツと呪文を詠唱している。
「私は?」
ヨゼが言った。
「ヨゼとプリテリコンビも、ケバルライと見学しといて。まだ実地の連携慣れて無いから私の攻撃で巻き込んじゃうと怖いし。それと、どんな感じで奇襲してくる異形達を私が倒してるか見てて欲しいわ」
「……わかったわ。でも、危ない時はすぐ参戦するからね」
私がウインクしてチュッとすると、ヨゼは微笑んで一歩下がった。
「お嬢様の仰せのままに」
プリテリコンビは深々と頭を下げ、お辞儀した。
「さーって!!!あんた何者かしら!!?」
私は周囲四十メートルが花畑と化した道路で叫ぶ。
混じり気の無い黄色や白色などの、鮮やかで美しい花々の中に異質な立方体が莫大な量感で居座る。
その花畑の四方には先端には、種類が全く異なる輝く剣が四本刺さっている。
……
無反応。
静かなそよ風だけが花畑を揺らす。
「あら、私達の早とちりかしら?なら、ごめんなさい。もう行かせて貰うわね。バーアーイィ♪」
私は一人、その物体を横切り、花畑の道をずんずんと進む。
そして……
背後から聞こえる、唐突な伸縮音。私に向かってきている。
「サジタリアス!!!」
叫ぶと同時にハイジャンプし、両手には瞬時に顕現した大型未来銃を構える。
そして、宙で体を捻じって振り返り、相手の全体像を把握する。
「おぉ……これは……」
なにかしら……
もう四角形でもなんでもないわね。
未完成な巨獣の肉体。皮膚の無い筋肉がゴムのように爆発的に膨張しては縮むを繰り返してる。その中央にドス黒いクリオネみたいな何かが核としているのが見えた。
私の視線に気づき、そいつは肉で自分を完璧に覆う。地上で私を捕まえるのを空ぶった腕の一部と、他三本のとても長く筋肉質でグロテスクな巨腕が、宙の私にまで一瞬で昇って来た。
フルバーストじゃ足りなそうね……
仕方ない。
「アイン・アル・ラミ!!!」
次の瞬間――
うっ……
尋常では無い反動が私を襲う。
空高く吹き飛ばされた。
随分下に見える地上辺り、サジタリアスから噴射された無数の光の雨粒のようなものが無重力みたく空間にとどまっている。
私は喉が壊れる程に叫んだ。
「みんなぁぁぁーーー!!!逃げてぇぇぇぇぇぇ!!!」
数秒後。
無数の光の雨は形を変え、至極激しいレーザービームの嵐となり轟音と共に花畑に降り注いで壮絶なうねりをあげた。




