5-21『メルの恩返し』
――お前のせいだ。お前が居るから周りの奴らは死ぬことになる。勇者パーティーもこれで終わる。
――お前のせいだ。
――お前のせいだ。
寝ると毎回こんな風に俺を責め立てる声が聞こえてくる。
それは昔の俺の仲間たちの姿形をしていて、口々に俺を責め立ててくるのだ。
もしかしたらこいつらは俺を恨んでいるのかもしれない。だって、こいつらが死んだのは俺のせいなんだから。
俺が居なければこいつらも死ぬことはなかった。俺だけだ、俺だけが生き残ってしまった。
これは俺の罪に対する罰だ。
俺はきっと死ぬまでこの病に苦しめられ続けるのだろう。だが、これは俺の業だ。受け入れて生きていかなければならない。
これが永遠に繰り返される。
そして、最悪な気分で目を覚ますのだ。
「おはよう」
「え、あ、おはようございます。さっき、ユイさんとルリハさんからこっちに降りてくるっていう手紙が届きました。なので、お二人が来るまでボクらは待機ですね」
「そか、ありがとう――で、なんでお前は俺の顔を覗き見てるんだ?」
目を覚ましたらすぐ目の前にメルバードの顔があり、驚いてしまったがとりあえず挨拶をしてみると、慌てて何事もなかったかのようにメルバードは離れて手紙について報告してきた。
怪しい。
人の寝込みになにかしようとしていたんじゃないだろうな。顔に落書きとか、メルバードならワンチャンあり得るから怖い。
人が折角優しくしてやったのに悪戯をするのはちょっとお灸をすえてやる必要があるかもしれないな――そう思って近くにあった水たまりで自分の顔を見てみるが、特に落書きなどはされていない様子。
だったらあいつ、俺が起きるまで一体何をしていたんだ? 正直謎になるんだったら落書きをされていた方がまだマシだったぞ。
「――ま、話したくないならそれでいいが……」
「そ、それよりも、ちゃんと眠れました? 疲れ取れました? ボクを助けるためにあれだけ頑張ってくれたんですから、ボクよりも疲れていると思ったので」
「あぁ、おかげさまでな」
本当はあんまり疲れが取れているわけではないが、メルバードを心配させないためにそう言っておく。
別にいつものことだし、このくらいの疲労だったら疲れている内には入らない。むしろ俺からしたらメルバードやユイ、ルリハの方が心配だけどな。
特にユイとルリハはこれからこっちに降りてくると言う。迎えに行くことも頭をよぎったが、これで入れ違いになるのは最悪だ。
「そうだ、これハルトにあげます」
「ん? 俺に?」
「はい、諸々のお礼です」
そう言ってメルバードが俺に渡してきたのは何の変哲もない指輪。
シルバーで無骨な感じ。宝石とか飾りっ気は一切ないが、俺の趣味に合っている。だから俺はブレスレットを作ってもらう時も飾りなどは付けないでくれと言っておいたんだ。
しかし、なぜ指輪? お礼というのはまだ分かるけど、何で指輪なんだ?
「えっと、これは?」
「えっとですね、ハルトは魔法の出力調整が苦手だって言っていたので、その補助が出来ればって思いまして、一応魔道具なんです」
「へぇ……」
指輪型であるということの説明には全くなっていないが、これを渡してきた理由はわかった。
魔法の調整補助をしてくれるというんならありがたいことこの上ない。
恐らく寝ている間に俺の指の太さを調べたのだろう。試しに指に付けてみたらぴったりフィット。
指を曲げ伸ばししても全く違和感がない。これなら魔物を殴っても邪魔になるということはないだろう。
「『ファイアボール』」
手のひらから火球を射出、それは地面に着弾して小爆発を起こす――絶対に今までの俺だったら大爆発を起こすか、威力が小さすぎて何も起こらないかだったのだが、今はある程度狙った威力に抑えることができた。
本当は地面がちょっと焦げるくらいに抑えたかったんだが、爆発してしまったというのは俺の魔法の調整技術の問題だ。
それでもこれほど俺が調整できるようになったというのは歴史的偉業と言ってもいいだろう。
「ありがとう、大事にするよ」
これなら『破壊の一撃』を使った時の反動も少なく出来そうだ。
「それは、だめッ」
「は?」
慌てた様子でメルバードは駆け寄ってくると、俺の左手の薬指から指輪を取ると、中指にはめなおした。
なんなんだ、一体。
「うん、これで良し。存分に使ってください」
「お、おう……」
まぁ、なんでもいいか。
これを貰えるっていうんならありがたく使わせてもらおう。
やっぱりメルバードは変な魔道具を作る時もあるが、こうして役に立つ魔道具を作ってくれることもある。
絶対に魔道具技師としての才能はフーズを超えている。
フーズを超えたいっていうメルバードの願い、叶うといいな。
「ハルトの魔力量、確かめるとなんかそこの無し沼にも思えたって言うか、なんか凄かったからハルトに合うように作るの大変だったんですよ」
「ん? あ、それで寝ている俺の様子を見ていたのか?」
「え、あ、はい、そうですそうなんです!」
「――あ、でも、お前、俺の顔を覗き込んでいる時はすでに指輪を作り終えてなかったか?」
「すぅ……――それじゃあ、朝食にしましょうか。昨日は作ってもらったので、ボクが作ってみました。さすがに昨日食べたキルクラブと比べられると厳しいんですが、ボクだって食べられなくはないほどの物は作れるんですよ」
「そうか、じゃあ、ご相伴にあずかろうかな」
どうしても話を逸らしたいらしい。
別に俺は寝相を見られたところで何とも思わないんだが、気になるものは気になる。
だが、話したくないというのなら仕方がない。メルバードもナイーブになってるみたいだしな、色々想う所があるんだろう。
いつもの調子に戻るまで、すこし優しくしてやろうと思う。
ちなみにメルバードの料理は――うん、どれもこれも何かが足りないっていう感じだった。
俺やルリハが料理するよりかは全然美味しいと思えました。




