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5-20『夜の一幕』

 ――今は何時だろうか。


 キルクラブを食い終わった俺たちは少し早いが休むことにした。

 ここはセーフティーエリアで魔物が現れるということはない。だが、このセーフティーエリアで冒険者が冒険者に殺されるという犯罪も横行しているという。

 流石に無防備にというわけにはいかないため、俺たちは交代で寝る。


 まずはメルバードに寝てもらって俺は見張り。

 正直、俺は寝ていても敵意のあるやつが近づいてきたら気がつくから寝ても問題ないんだが、なんだか状況が状況なだけに神経が昂ぶっていて眠れそうにもなかったから、ただただぼーっと天井を眺めていた。


 ユイとルリハからは問題なくセーフティーエリアに入れたと報告は来たが、心配なものは心配なんだ。


 まさかこのダンジョンにカリュブディスが居るとは思わなかった。

 カリュブディスという魔物は必ずそのダンジョンに居るわけではなく、神出鬼没の冒険者殺しと呼ばれる厄災だ。

 あいつが現れるのは運が悪いと言わざるを得ない。


 そしてあいつはダンジョン内の水を自由に移動し、階層までも移動してしまう。

 故にボス部屋に水がある場合、その部屋をカリュブディスが乗っ取っている可能性もある。――となるとだ、このダンジョンのダンジョンガーディアンがカリュブディスになっている可能性も……。


 うわぁ、だっる。

 え? 俺、本気を出さずにアレとやり合わなきゃいけないのか?

 正直、あいつに狙われた時点で戻ったとしてもカリュブディスの脅威は変わらない。カリュブディスというやつは一度狙いを定めた奴はセンサーのようなもので決して逃さない。

 だとしたらもうボス部屋でカリュブディスと対峙したほうがまだやりやすいか。


 さっきは不意に接敵したから防戦一方になっただけで、ちゃんと戦ったら今の勇者パーティーならばカリュブディス位討伐出来るとは思うが、非情に面倒。


 本当はメルバードがちゃんと本気を出してくれればもっと倒しやすいんだけどなぁ。

 でも、さっきの話を聞いた後では無理に魔法を使えとも言えないんだよな。

 魔法の実力は本物だ。確かにフーズには劣らないだろうが、メルバード程の魔法の才能を持っている冒険者もそうは居ない。


「お前の周りに居た奴らはどうだったか知らねぇけど、俺たちはちゃんとお前のことを評価してるからな」


「う……ん」


「あ、起こしたか?」


「あぁふ…………おはよ……ございます」


 起き上がったものの、メルバードはまだ眠たそうで目をこすりながらこくりこくりと頭を揺らしている。

 というか半分寝ているようだ。

 そう言えば、こうして野宿をするというのは初めてだからメルバードの寝起きを見るのは初めてだな。

 朝弱かったのか。


「眠いんならもう少し寝てて良いんだぞ」


「ううん。ハルトもそろそろ寝なきゃですし、ボク代わりますよ」


「そうか……じゃあ、暫く俺の話し相手になってくれ。ちょっと今日の事件が大きすぎてまだ眠れそうにないんだ」


「あ、ははは、なんだかその気持ち分かります」


「お前はぐっすりだったみたいだけどな」


「いや、疲れてたので、そんなの関係ないくらいに一瞬で落ちました」


「そうか……休めたならそれがいい」


 きっと俺たちはこのあと、カリュブディスと戦うことになるんだから、万全の状態になっていてくれないと困ってしまう。

 勇者パーティーで戦う以上、俺はあくまでもサポーターに徹するつもりだからな。


「なぁ、メルバード。恐らく明日、カリュブディスと戦うことになるだろうが、ちゃんと戦えるか?」


「それはなんの確認ですか?」


「いや、それは」


 今日あれだけのことがあったのだ。

 ワンチャン死んでいた。そのことがトラウマになっていたらもしかしたらメルバードはカリュブディスと戦うことができなくなってしまっているかもしれないと考えた。

 誰だってそうだ、怖いものは怖い。だから俺は責めるつもりはない。

 だから、俺が頑張らないとと思っていたわけなんだが――


「ハルトはボクをナメすぎです。確かにさっきのあれは本当に怖かったですし、あれは二度と経験したくないと言う気持ちでいっぱいですけど、ボクだって冒険者なんですよ。冒険者になったときから、あれくらいの事は覚悟しています。もうちょっとボクを信用してください」


「いや、信用していないとかじゃ……いや、すまん。そうだな、どこかで俺はお前の事を子どもとして見ていたのかもしれない」


「ハルトだってボクとそこまで変わらないじゃないですか。なので、ボクが子どもだったらハルトも子どもだって言うことです。隣にボクという超絶美少女が寝ているというのに手を出さないというところもまさに子どもです」


 ニヤニヤとからかうようにして言ってくるメルバード。

 こちとらメルバードを心配して声かけているのに、こんな状況でもからかってくるかよ、普通。

 まぁ、でも、これがメルバードらしいっちゃメルバードらしいか。


「じゃあ、なんだ? 手ぇ出せばよかったのか?」


「手を出したらボクからの信用が地に落ち、ボクからの大量の『エクスプロージョン』を受け取るハメになります」


 急に表情が真顔になって言ってきた。

 からかったり、真顔になったり忙しいやつだな。


「じゃあ、何して欲しいんだよ……」


「なので、ハルトの対応にボクから満点をあげましょう。どうです? 嬉しいですか?」


「はぁ……もう寝る」


「え、急ですね。分かりました。絶対にハルトの事は守りますからね」


 メルバードを背にし、地面に寝転がりながらひらひらと手を振ってメルバードに応える。


 ちょっとメルバードの事をわかろうとしてみたが、やっぱりメルバードのやつの事は俺にはちっともよくわからない。

 シリアスになったと思ったら急にからかってきたり。


 あいつは一体どこを目指しているんだ? 何をしたいんだ? 俺にどうしてほしいんだ?

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