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5-13『エレメンタル』

「それにしてもこれって本当にダンジョン内なんですかね」


「そうね。海が無限に続いているように見えるわ」


 俺たちの目からは広大な海が広がっているように見える。だが、ここは所詮、ダンジョン内なのだ。

 空間が歪んでしまい、見えないだけで壁はそこにある。無限ではない。

 まぁ、これだけ見えていても海の中に飛び込むなんて命知らずだから、わざわざ壁に向かっていこうなんて思わないな。


 視界は開けている。

 洞窟形式のダンジョンの様に入り組んでいるというわけじゃないから、この場所から下への階段が見えている状態だ。

 だが、真っ直ぐ階段に行くというわけにはいかない。俺たちの行く先は海によって阻まれている。


 海を突っ切れない以上、こうして海が割れて出来上がった砂の道を通っていくしか無い。


 不安だ……。

 いや、別にメルバードがやらかしてしまうとか、そんな心配をしているわけじゃない。

 それならそれでまた助ければ良いというだけの話なんだが、そんなレベルの心配をしているというわけじゃない。


 ここは海の空間。海のダンジョンだ。

 俺はCランクの中でも特に強いと言われている初心者殺しの魔物を知っている。そいつは海に存在していて、他の魔物すらも恐れを為し、そいつが居る周辺には魔物が出てこないとすら言われているほどだ。

 それほどまでに凶悪。正直、Cランクというのはランク詐欺だと思っている。


 一応、このエリアではグレイフィッシュなどの魔物が多数水の中を泳いでいるのが見えるが、そいつが出てきたら体力の温存とか言っている場合じゃない。

 気を引き締めていかなければいつ殺されてもおかしくないというものだ。


 俺も一度だけ戦ったことはあるが、正直あれをCランクに上がりたての冒険者が対処できるとは思えない。

 アイアンホークと似た扱いを受けているが、アイアンホークよりも厄介度合いは上だと俺は考えている。


 そうだ、Cランクを超えてくるとランク詐欺だと言われてもおかしくないような魔物が多く出現するようになる。


 例えばあんな風に――


「はい!?」


「えぇぇぇぇぇっ!?」


 突然目の前の水が盛り上がり、巨大な波が襲いかかってきたため、ユイとメルバードの二人が驚愕の声を上げた。

 海は危険がいっぱいだ。

 海は簡単に人の命を奪うことが出来る。海の中では人間は自由に動けないせいで、魔物の餌食となりやすい。


 あの波に飲み込まれたら俺たちはあっという間に海の中に引きずり込まれてしまうことだろう。


「なんでこうも俺たちは厄介な相手にばかり遭遇するんだろうな」


 これを引き起こした魔物は俺が危惧している”それ”ではないが、この津波を引き起こすことが出来ることから分かる通り、非情に厄介な魔物。

 でも、こいつは普通の魔物とはちょっと違う。それ故にこいつはランクという括りには縛られていない。


「メルバード、爆発であの波を吹きとばせ」


「は、はい、分かりました!」


 だが、魔石に封じた『エクスプロード』の威力ではあれを吹き飛ばすのには足りないし、そもそも火属性である『エクスプロージョン』系統の魔法では水とは相性が悪い。

 それはメルバードも分かっていたのだろう。

 メルバードの手のひらが光り輝き、光球が出現した。


 そう言えばメルバードがちゃんと魔法を使うところはあんまり見たことがないかもしれない。

 メルバードはいつも後方で魔石を投げて戦っているものだから、自分から積極的に攻撃しに行くということがそんなに無い。


「良いですかぁ〜? ボクの爆発は世界一です! 『シャインバースト』」


 それは見事なものだった。

 メルバードが投げ飛ばした光球は波へ直撃し、直後まばゆいほどの光を周囲へ放ちながら大爆発を巻き起こした。

 爆風が俺たちの頬を撫で、眼の前にそびえ立っていた波を一撃で吹き飛ばしてしまった。


 ――100点だ。


 これがメルバードの魔法……。

 メルバードのやつ、ちゃんと『エクスプロージョン』以外も使えたんだな。ま、同じ様な爆発系魔法であることは間違いないが、メルバードが使う『エクスプロージョン』よりもずっと威力が高いように思える。

 こいつ、光属性が得意なのか?


「凄いなお前」


「そ、そうですか〜? そんなこと、ありますけど? もっともっと言ってください!」


 この魔法を見て思ったのは、姉のフーズほどではないにしろ、こいつもこいつで天才であるということ。

 そう言えば、こいつ冒険者学園を飛び級で卒業したんだったな。そりゃそうだ、これだけの魔法をこの年齢で扱えるなら飛び級くらい出来るに決まっている。


 でも、メルバードは基本、自分の魔法を使いたがらないんだよな。

 いつも大体魔石で戦っている。爆発系魔法も自分で使ったほうがもっと強い技も使えるだろうに。

 やっぱり、メルバードは魔道具の世界で一番を取りたいのかもしれない。だからこそ魔石を多く使っている。


「魔物はどこですか!?」


「いや、もう倒した」


「え、そうなんですか?」


 あぁ、もう倒した。メルバードが。

 こういう水辺には水のエレメンタル系の魔物という思念のようなやつが居て、水に憑依することによって俺たちを襲ってくるわけだが、あの波自体に憑依してるんだよな。

 だから、あの波を破壊したら魔物を倒したと言っても過言ではない。一撃対処することが出来ればそいつは興味をなくしてまたどっかへ行く。


 物理的に撃破が不可能な分、興味をなくすのも一瞬だ。


 だから、巷ではあいつのようなエレメンタル系の魔物はびっくり箱と呼ばれていて、始めはびっくりするけど一撃耐えればいいだけだから簡単だという共通認識だ。

 ただ、あれによって水の中に引きずり込まれ、他の魔物に襲われるという二次災害が引き起こされる可能性があるから要注意と言ったところではあるけどな。


「ふっふっふ、汚名返上です! さぁ、早く先へ行きましょう!」


 ただ、あんまりにも褒めすぎたせいで調子に乗ってしまったか……?

 あまり調子に乗ると周りが見えなくなることもあるから非情に心配だ……。注意深く見ておくことにしよう。

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