5-10『意味を証明するための旅路』
Cランクダンジョンと言えども、流石に魔人に勝るような事は決してない。正直、魔人との戦いから比べたら落ち着けるものだった。
なんだったら、この短期間で何回も魔人との戦いを経験してしまったユイたちはCランクダンジョンすらピクニック気分で突破していく。
本来であれば初心者キラーが多く生息する森エリアである二層、そして同じく三層を難なく突破。罠にかかったとしても後出しで対処できるほどのみんな落ち着いていた。
そしてついにセーフティーエリアに到着。もともとはセーフティーエリアに到着したらお昼にしようと話していたところだったんだが、お昼時よりも一時間も早くセーフティーエリアに到着してしまった。
どうやら魔人との戦いは想像よりもみんなを強くしてくれていたらしい。
「それじゃあ、少し早いですが、お昼を作りますね。ハルト君、さっき倒したグレートボアをいただいてもいいですか?」
「あぁ、自由に使ってくれ」
『ストレージ』の中に手を突っ込むと、さっき撃破したグレートボアを取り出し、ユイに手渡す。
爆発で倒したため、肉の表面には荒い傷が着いてしまっているが、肉の層は厚い。表面をこそぎ落とすことが出来れば問題なく食える。
後はレッドボアと同様、心臓と肝臓に魔素が含まれているため、それを摘出することが出来れば大丈夫だ。
魔物の中では調理が簡単な方。魔物料理にはあまり慣れていないユイでも任せても大丈夫だろう。単純な調理技術で言ったらこの中では圧倒的だしな。
それに、グレートボアの魔素ならば多少は摂取してもちょっと気持ち悪くなるくらいで命に関わることはない。
「ルリハちゃん、火をお願いします」
「分かったわ。ちょっと離れてて」
かき集めた薪に『ファイアボール』を落とし、着火するルリハ。相変わらず見事な魔力制御だ。
まさに完全復活と言った感じだな。
「大きいですね。調理のしごたえがありそうです」
目をキラリと輝かせ、グレートボアに包丁を振るうユイ。
その刃渡りじゃ絶対に足りないだろと素人ながらに思ってしまうが、なんと綺麗にグレートボアを解体し始めたではありませんか。
足を取り、腹を開き、内蔵を摘出する。見事な手際だ、魔物の解体初心者だとは思えないほどの手さばき。
まるで熟練の魔物調理師の様な手つきで毒である心臓と肝臓を取り出した。
後はもう可食部位。表面を少し削れば中身は美味い肉がミッチミチに詰まっている。
「やっぱり温かい食べ物も欲しいですよね」
グレートボア肉をステーキ状に切り落としていくと、それと同時進行で鍋の中に水を張り、火にかける。どうやら今日の昼食はグレートボアのステーキとスープらしい。
鉄板を熱々に加熱すると、そこにステーキをオン。じゅわわわわわぁ〜と言う肉が焼け、油が弾ける音が聞こえてきた。
ある人はこれを幸せの音と表現したとか。
「レッドボアよりも脂乗りが良いですね。でも、肉質がしっかりしています」
「基本的に高ランクの魔物ほど美味いぞ。運動量や筋肉量、普段から浴びている魔素の量が関係していると見ている」
「ハルト君、よくそんなこと知ってますね?」
「まぁ、一人旅の時に散々食い比べたからな」
AランクやSランクの魔物はめちゃくちゃ美味いぞ。その代わり、調理が大変だし、調理をミスって魔素を摂取してしまうと一撃でコロッと行く可能性があるから要注意だ。
基本、魔素は人間にとって猛毒だからな。
「ハルトって、勇者パーティーに入る前は何をしていたんですか?」
「何って……何してんたんだろうな」
「なんですか、それ?」
「いや……」
宛てもなくただただ世界を彷徨い、旅をしていた。見る人によってはこれを自分探しの旅と表現するかもしれない。
でも、そういうわけでもない。
ただただ、何の目的もなく各地を巡っていた。その旅先で色んな魔物を食してきた、ただそれだけの空っぽの人生だった。
「とても空虚な人生だったと言えるかも知れない。あの頃の俺は特に何をするでもなく、適当に冒険者をやって放浪していただけだった。勇者パーティーに入ってようやく人生に意味を見つけたような気がするよ」
「……ハルトって時々バカですよね」
「お前、言ってくれるじゃないか」
「人生の意味は見つけるものじゃなくて作り上げるものなんです。それを証明するための旅路が人生というやつなんですよ。なので、勇者パーティーに入って意味を見つけ出しているようじゃまだまだ三流っていうやつなんですよ」
「お前って、そんな深いことも言えたんだな」
「僕を何だと思ってるんですか!?」
でもそうか。見つけるものじゃなくて作り出す、それを証明するための旅路か……。
面白い考え方だな。技術者らしい良い考え方だと思う。
そう考えると、今のこの状態でも俺の人生は空虚なのかもしれないな。
「なので、ハルトも人生の意味を作り、証明しましょう! ここに自分が必要なんだって言うことを歴史に刻むんです」
「……それがお前の夢だったりするのか?」
「まぁ、そうですね。一応、このパーティーに入った目的は魔王に僕の魔道具がどれだけ通用するかを検証したいっていうものでしたが、それは通過点に過ぎません」
「ほう……? その心は」
「僕が本当にやりたいことは――古代魔道具を作り上げることなんです!」
こいつ、とんでもねぇな。




