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5-9『メルちゃん、大活躍』

 森……森と言えば、オルターン周辺の森を思い出す。

 行きではあそこでデスモンキーによる妨害を受けたんだったよな。


 あの時は俺たちの体調は万全じゃなかったし、なるべく労せずに追い返すことばかりを考えていたが、あの時とは状況がまるっきり違う。

 今、俺とルリハは体調が万全だし、一層では体力を温存することが出来た。


 それに加え、ユイとメルバードという仲間も居る。

 正直、今だったらデスモンキーだろうが何だろうが来ても怖くない。そんな気さえしてくるほどだ。


「それにしてもやけに静かですね。風の音しか聞こえないです」


「こういう森に巣くう魔物は待ち伏せタイプが多いわ。待ち伏せするというのに、気配を消さなかったら意味がないじゃない」


「あ、なるほどぉ」


 あまりにも静かで敵の気配が無いせいでダンジョン内だというのにメルバードの危機感というものが欠如してきているような気がする。


「ふんふふんふふ~ん♪」


 なんなら鼻歌まで歌い始めている始末だ。

 メルバードに擬態的の索敵をお願いしているわけだが、非常に心配になってきた。やはり俺の方でも索敵を――


「うわわっ」


 そんなことを言っていたら、突然真横から木の枝が伸びてきてメルバードの胴に巻き付き、引っ張っていってしまった。


 トレントだ。

 草原エリアであった一層なら分かりやすいものの、この森林エリアである二層ではトレントの存在に気が付きにくい。


 メルバードを自身の口へと持っていくトレント。その前に俺の魔法で消し炭に――


 ドガアアアアアアアアアアアーン。

 轟音が鳴り響き、メルバードの事を連れ去ろうとしたトレントが木っ端みじんに消し飛ばされてしまった。

 直前に見えたのはトレントのすぐ下に転がる魔石――


「メルバード、まさかお前っ」


「ふっふっふ、敵を欺くならまずは味方から――味方を欺くことが出来なければ敵を欺くことは出来ないんですよっ」


 ドヤァと自慢げな顔を見せつけてくるメルバード。

 まさかメルバードからこんなことを言われる日が来るとは思っても居なかった。


 じゃあ、さっきの油断しているような態度は演技だったということか……どうやら俺はメルバードの事を侮りすぎていたようだ。


「私はずっと索敵してるんですよ。トレント位、見つけるのはわけありません。ですが、あのままだったら誰が狙われるかわかったものじゃなかったので、油断している演技をして私に攻撃を向けさせていただきました。その隙を狙ってドガーン。ね、完璧な作戦でしょう? ハルト、僕を褒めてもいいんですよ」


「お前、相変わらず俺にはタメ口だよな。俺よりも年下だろ?」


「僕の方が上位ランクですから」


「あれ、何だろう。早くランクを上げなければいけないという使命感が……」


 そうだ、こいつよりもランクが低かったらいつまでも侮り続けられるのか。それは死んでも嫌だな。

 是が非でもメルバードよりも上のランクに行かなければ……。

 俺本来のランクは圧倒的にメルバードよりも上なんだけどな。


「メルちゃんも強くなっているということです」


「へぇ……メルやるじゃない」


 ユイとメルバードの二人も強くなった。

 初めての四人でのダンジョン探索ではあれほどグダグダだったというのに、やっと勇者パーティーらしくなってきたな。

 今だったら前よりももっとマシに魔人と戦える気がする。ま、あんなやつ出会わないに越したことは無いんだけどな。


「敵です!」


 そこでメルバードが叫んだ。

 俺も気が付いている。何かがすごい勢いで突っ込んできている。

 木にぶつかりつつも真っすぐと俺たちを目掛けて走ってきているのが分かる。どうやら向こうは完全に俺たちのことを把握して突っ込んできているようだ。


 ズダンズダンと木々を薙ぎ倒す音がどんどん近づいてきている。


「ユイ、構えて」


 だが、正直こいつ相手ではルリハやユイは分が悪いと思う。とんでもなくパワーが強いし、迎え撃つというのはあまりしない方がいい。

 むしろ力負けしてぶっ飛ばされる。

 それならば、これもまたメルバードの出番だ。


「メルバード、そこら辺に三個位魔石を投げてくれないか?」


「え、わかりました」


 近づけさせたらおしまいだ。だが、あいつがどうしてあんなにも木を薙ぎ倒しながら一直線に走ってきているのか――答えは一つだろ?


「ぐおおおおおおおおおん」


 俺たちの目の前に飛び出してきたのはグレートボア。

 レッドボアと比べて力も強く、索敵範囲も桁違い。

 勢いが凄まじいため迎え撃とうとしたらぶっ飛ばされるのがオチだ。賢者のみんなだったらそんなことはないだろうが、ユイだったらまずぶっ飛ばされる。

 だが、あいつは所詮猪だ。


 一直線にしか進むことが出来ない――だからこいつにはこんな作戦も通用する。


 ドガガガガガガーン。

 本日二度目の大爆発。猪系統の魔物は足元が弱点だ。

 しかも、まっすぐ走ることしかできず、勢いのあまり急に止まることが出来ない。つまり、罠があると気が付いても止まることは出来ないということだ。


 爆発により舞い上がった砂塵の中から出てきたのは倒れたグレートボア。今の爆発で討伐することが出来たらしい。


「おぉぉぉ。ボク、役に立ちました!?」


「あぁ、メルバードが居てよかったよ」


「へ、へへ、今日はやけに素直ですね! ボクの事をもっと褒めてくれてもいいんですよふへへ」


 メルバードの事をおだてているとルリハの視線が痛いのだが、メルバードには気分良くしてもらっていた方が都合がいいから、これからも定期的によいしょすることにしよう。

 それに、メルバードが居れば意外とかゆいところに手が届くしな。

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