5-7『勇者パーティー/レベルアップ』
――という事で、翌日、俺たちがやってきたのは以前にも一度来たことのあるCランクダンジョン。
以前は撤退を余儀なくされてしまったから、今度はちゃんと探索をしたいところだ。
勇者パーティーが再会して一番最初のダンジョン探索だからか、それともダンジョン踏破が目標だからか、みんないつもより気合充分と言った雰囲気。
俺たちにとってはこのダンジョン踏破するということは前回のリベンジマッチでもあるというわけだ。
Cランクダンジョンからは罠や擬態している魔物も多くいるから気をつけなければな……。
「メルバード、前回みたいに変な装置は使うんじゃないぞ」
「失礼ですね! 流石にそんな変なことはしませんよ。ボクを何だと思ってるんですか!」
「魔道具ジャンキー」
「言いましたね!? こともあろうにボクの事をただの魔道具ジャンキーと称しましたね! 良いでしょう、ボクがどれほど魔道具ジャンキーなのか見せてあげましょうか!?」
「見せんでいい!」
メルバードに釘を差しつつ、俺とメルバードは後方で前を歩くユイとルリハの後ろをついていく。
俺はガッツリ戦闘ができるタイプだと知られてしまっているものの、あくまでもサポーターだ。俺が前に立って戦うのは本当にどうしようもないときだけとなっている。
まぁ、俺が戦っていたら誰がサポーターをやるんだっていう話だしな。
俺と似たようなポジションであるこのメルバードにはサポートを任せていられないし。
「さて、早速お出ましの様よ。構えて」
分かってる。
周囲の茂みに意識をやると、複数の魔物の気配を感じる。この気配は草ウルフのようだ。
前回のようにのんびりお昼寝をしてくれていたのなら楽だったものの、草ウルフは一体に見つかれば周囲の草ウルフ全員が集まってくるから厄介なんだよな。
どうしても見つかったら多勢に無勢となる。
でも、うちには魔人戦で大きく力をつけた火属性魔法アタッカー様が居る!
「ちょっと伏せてて……『フレイムバースト』」
ルリハの手のひらから火球が放たれる。そして、その火球は一体の草ウルフに向かって一直線だ。
草ウルフは回避した。流石にCランクともなると、動きが早くて飛び道具なんかは回避されやすくなってくる。
だが、地面へ直撃した火球は周囲の草ウルフもろとも焼き尽くすほどの爆発を巻き起こした。
「すっげ」
思わずそんな言葉が口から漏れ出てしまうほどだ。
以前よりも格段に魔力出力が強くなっている。魔法の威力が段違いだ。
それもひとえに魔人戦で多くの魔力を消費し、さらに切り札までも使えるようになったことで魔力回路が鍛えられたことによるものだろう。
そうだ、これだけでも凄まじい威力なんだが、ルリハの場合、切り札を使ってしまえば、これを何発だって連射できるというとんでもムーブをすることだって出来る。
本当にルリハが仲間で良かったとつくづく思うよ。
「ルリハちゃん、また一段と凄い威力ですね。オルターンでも特訓をしていたんですか?」
「うん。これでまた一歩、カルマ様に近づけた……」
嬉しそうにはにかむルリハだが、俺を目指すのは本当に止めてほしい。
俺は目指してもらうような器じゃないんだよ。目指すならエル爺とか、サック、フーズらへんにしておけ。
あ? ゼルドガルとネムナ? あ〜…………とりあえず言えることは止めておけ。あの二人とはよくつるんでいたけど、そんな俺でもよくわからん。
ケルドは別の意味で止めたほうが良い。あいつをトレースしたら死ぬぞ。あれはあいつだから出来る生き方だ。
「ユイさん、ルリハさん! 奥からロックゴーレムが来てますよ!」
どうやら今の爆発音に導かれてきたらしい。
その巨体で地面を踏みしめる音が地響きのように鳴り響き、まるで地震でも起こっているのかと思ってしまうほどに揺れている。
あいつは魔法に対する高い耐性を持っているから、ルリハの魔法をもってしても撃破は用意じゃないだろう。
例え出来たとしても魔力を大幅に消費してしまってとてもじゃないが、現実的じゃない。
ユイに関しても斬撃が通るようには思えない。
ここは俺がやるしか――
「ユイさん!」
「はい、お願いします!」
メルバードがユイに呼びかけると、ユイは『リリウム』の刃をメルバードへ差し出す。
それに手のひらをかざし、メルバードは魔法を付与した。
「『エクスプロージョン』『付与』」
こともあろうにこいつ、神剣に爆破魔法を付与しやがった!
「強くなっているのはルリハちゃんだけじゃありません。私もどうやったら強くなれるか考えてみました。そこで、メルちゃんの力を借りることにしたんです」
「ユイさんの持つ神剣『リリウム』は特殊な魔道具です! 不破の魔法が込められている絶対に壊れたり刃毀れはしない、究極の魔道具。今はもう誰も作れない、いわば古代魔道具のようなものです。前回、ボクがルリハさんの杖に『エクスプロージョン』を付与した時は杖が壊れちゃいましたけど、ユイさんの剣なら壊れず、ちゃんと使えるんじゃないかと考えました。名付けて、爆破剣『エクスカリバー』です!」
それ、物語にでてくる剣の名前だよな。あれ、聖剣の名前だったはずなんだけど、こんな物にそんな大層な名前をつけても良いのか!?
メルバード自身はその名付けに相当自信があるようで、俺にドヤ顔を向けてくる。
俺にはそのセンスは分からん……。
でも、メルバードが言う『エクスカリバー』というものがユイの手の中に完成したのだとしたら、ロックゴーレム相手でも勝ち目はある。
なにせ、相手は岩。
魔法の中でも唯一、爆発系魔法は通用する!
「行きます『追い風』」
自分に追い風を付与し、移動速度を上げるユイ。
そこからの展開は刹那の一瞬だった。
俺が瞬きをしたその一瞬でロックゴーレムとの間合いを詰め、そして――
「『迅』」
『リリウム』に風属性を付与し、ロックゴーレムを斬りつける。
本来だったらダメージが入りにくいはずの攻撃だが、メルバードが『リリウム』に『エクスプロージョン』を『付与』したことによってロックゴーレムにも通用する技となった。
爆発の威力はユイの風属性によって底上げされている。だが、そこまで行くと、まず間違いなくユイ自身にも爆発のしっぺ返しが来るはずなのだが――
爆発によって舞い上がった砂塵が消え、晴れた視界には木っ端みじんに吹き飛んだロックゴーレムの残骸と涼しい顔をして立っているユイの姿があった。
まさしくその姿は勇者の風格。
「ロックゴーレム、撃破です」
どうやら強くなっていたのは俺とルリハだけじゃない。俺たちが離れている間にユイとメルバードも随分と強くなっていたらしい。




