5-6『これから』
ギルド長室を後にした俺たちはこの後のことについて話し合っていた。
そこで、ルリハが提案したのはリハビリがてらCランクダンジョンを踏破するというもの。
実は俺たち勇者パーティーを組んでからというもの、一度もダンジョンを踏破していない。
魔物を狩るというのが目的で、ダンジョン踏破が目的ではないからだ。
それに、俺たちの最終目標は他の勇者パーティーとは違ってダンジョン踏破ではなく、魔王マナ・デストラーラの討伐。
実力をつけるために潜っているに過ぎない。
だが――
「ここら辺でちゃんとダンジョン踏破という実績を私たちに付けておいたほうが良いと思う。この間の魔人討伐でかなり私たちに箔がついたとは思うけども、冒険者としての腕を疑問視される可能性は否めない。特に、賢者たちからは早く魔王を討伐しろと言われ、目をつけられている状態。ここら辺でちゃんとした冒険者としての実力を示しておくべき」
「確かにルリハちゃんの言うことも一理ありますね」
「でも、ダンジョン踏破をするだけで実力を示せるものなんですかぁ?」
「ダンジョン踏破というのは思っている以上に大変なことなのよ。一度、学園に居た時にダンジョンガーディアンと対峙したことがあるけど、死ぬかと思ったわ」
ルリハの瞳からハイライトが消失した。
「えぇ!? ルリハさん、学園時代にガーディアンと戦っていたんですか? 確か授業カリキュラムにはガーディアンとの戦闘は含まれていないはずなんですが」
「油断だったのよ。ちょっとの油断で最奥に落ちてしまったというだけよ。別に私の意思じゃなかった」
「それはそうですよね! いくら天才だからといって、授業カリキュラムを無視してガーディアンに挑むなんて無謀にも程がありますし、そこまで驕っているわけじゃありませんよね!」
ほっと一安心と言った感じで一息つくと、にっこにこの笑顔をルリハへ向けるメルバード。だが、ルリハはそんなメルバードに対して目をそらし、バツが悪そうに苦笑した。
にしても、その頃にガーディアンと戦ってよく生きて帰ってこられたな。
「確か、賢者さんに助けてもらってなんとか切り抜けたんでしたよね?」
へぇ……多分、授業中のことだと思うから、冒険者が同行していたんだと思うんだが、きっとそれが賢者だったんだろうな。
それにしても、俺以外に賢者が実習に同行するなんてことあるんだな。
俺もギルドマスターに命じられて仕方がなくやっていただけだし、あのメンツでちゃんと同行者をやる賢者が居るとは思えないんだが、意外とそういう仕事も俺以外の賢者もやっていたりするのか?
「そうそう! 賢者カルマ様! まるで正義のヒーローみたいに颯爽と現れ、私を死の淵から救ってくれたの! あの時の事は一生忘れないわ!」
――俺でした!
え、全然記憶にないんだが。
俺、学生時代にルリハとユイに会っていたのか? 全く思い出せない……。
あの時のことはギルドマスターに頼まれた面倒な仕事の一つくらいにしか思ってなかったし、冒険者希望の学生とかって結構いっぱいいるから、全員が全員を覚えていられるわけじゃないんだ。と、言い訳をしておく。
面倒で嫌な記憶だから消し去ろうとしていたわけなんだが……ちょっと頭の中で検索をかけてみる。
…………確かに、なんか女の子を助けたりしたような気がするが、あの仕事を受けたら割とあることだったしな。
どの回だったか全然わからない……。
「カルマ様のことだったら一日中語り明かすことが出来るわよ!」
「はいはい、ルリハちゃん。その話はまた今度にしましょう。それよりも、これからの話を」
さすが親友、ルリハの扱いはよく分かっているようだ。
話を止められてちょっと不服そうなルリハだったが、軽く咳払いをすると、話を戻した。
「――というわけで、とりあえずダンジョンを攻略するのが良いんじゃないかと思うわ。闇雲に魔王を探していたところでどうせ見つかるわけがないのだもの、まずは私たちの出来ることから始めていくべきだと思うわ」
「そうですね。そうしましょう。メルちゃんとハルト君もそれで大丈夫ですか?」
「ボクは問題ないです!」
「俺も大丈夫」
実は俺だけはマナの場所を知っているんだよな。そう考えると、黙っているのもちょっと罪悪感が……。
出来ればもっとユイたちには強くなってもらいたい。そしてマナと同じ領域に立ち、同じ景色を見てもらいたい。そうすれば二人の仲は更に深まるだろうから。
マナの方は日に日に力を取り戻していっているらしい。ただ、全盛期の力を取り戻すのがいつになるのかは全くわからないのだとか。
「それじゃあ、勇者パーティー初のダンジョン攻略! 行ってみましょう」
「待って。私とハルト、まだ今日は帰ってきたばかりで何の準備も整ってないから明日からでお願い」
「え、あ、そ、そうだよね。ごめんね、久しぶりにみんなでダンジョンに行けると思ったらテンション上がっちゃってつい……」
てへへと頭をかくユイ。
さて、ダンジョンガーディアンの討伐を目指すというのなら、普段の探索とは比べ物にならないほどの危険が伴う。
誰も死なないよう、俺も気合を入れて臨むとするか。




