第35話「拒む」
2人の私をなだめる声が聞こえる。
けど、私はそれを聞くことは出来ない。
それはあの子を裏切ることになるから…
「どいて」真姫は肩をつかみ抑え込む江崎の手をどかし立ち上がろうとする。震えながら、生まれたての子鹿のように。
ぶちぶちという音を立てながらベッドを降りる。
痛みなんて感じなかった。
ただ、皆を救いに行きたい、それだけなんだ。
豚崎さんが助けに行ったからってそれでは意味がない。
私が助けに行くことに意味がある。
罪滅ぼしなのかもしれない
けど、豚さん達や漆原くんを助けたいというのは本当だ。
こんな私を見捨てなかった人達だから…。
絶対に死なせない。
「あなたが言ってどうなるの!?そんな身体で何が出来るの?」
そんな真姫に江崎はそう言い放った。
確かにそうだ。そうかもしれない。けど…
だからなんだ。
「…そんなの関係ない」
「はあ?」
江崎は困惑する。
「私の身体がどうなろうと関係ない。死んでも皆を助けたいの!何か間違ってる?」
耐えず「何もかも間違ってるだろ!!何が自分の身体はどうでもいいだ、僕は真姫ちゃんの身になにか起きたら…おかしくなるよ…大切な人なんだから!」
豚崎は真姫に向かいそう言うと真姫の前に立ち
「こう言っても伝わらないなら、僕は君の脚をへし折る」そうすれば、無茶も出来ないだろ?
その目には嘘偽りは全くなく本当にやる。と言う顔だった。
それだけの意思があった。
でも、真姫にもそれと同等の意思がある。
「大切な人?私はあなたをそう思ってなんかいない!」
思ってもないことを言った。
けど、そうするしか無かった。
そうせざるを得なかった。
豚崎は固まった。
何も言い返すことが出来なかった。
言いたいのに、君がそう思ってなくても僕はそう思ってる。と言いたかったのに。
ショックのあまり言えなかった。
真姫は机に置いてあったステッキを持ち出し、治りたての身体で部屋から駆け出した。
「ち、ちょっと!真姫ちゃん!?」
追おうとも追いつけない、既に真姫はその身体で変身してとてつもないスピードでどこにいるかも分からない皆、を探しに行った。




