第33話「雄々しき姿」
「真姫ちゃん!無事か!!」
どこかで聞き覚えのある声がした。
いつもの聞きなれた声、汗の匂い。
そう、彼は…「豚崎さん!?」
真姫は驚く。
だが、豚崎はなにかおかしかった。
いつもとは雰囲気が違った。
どこかたくましく見えた。雄々しくて彼なら霧ヶ峰を倒せるかもしれない…そう思った。
けど、豚崎にそれをする気はない。
ただ真姫を助けに来た、それだけだ。
「…いい、2人とも僕に捕まるんだ、そして目を瞑るんだ」 いいね?
江崎はそれに従い豚崎の両腕に捕まり目を瞑った。真姫は両腕が使えないので豚崎が真姫を片腕で抱く。
「…いくよ…」
豚崎はオーク化し脚部に最大限の力を降り注ぐ、その後勢いよく飛ぶ。
天井を突き抜け2階、3階と突き抜ける。それもものの数秒で突き抜けた。
屋上に飛び上がり、一旦そこに脚をつける。
「豚田さん達は? それに漆原くんは?どこ」
真姫は後の四人の安否を気にかける。
いつもなら豚崎四人は一緒にいる。なのに、いない。
最近では漆原もその中にいる。
なぜ?
そんな疑問が真姫の脳裏を駆け巡っていた。
「……分からない…僕にも…」
豚崎は目を逸らし、真姫の心配を他所にそう答えた。
分からない?どういう事?
「め、珍しいですね…ひとりでいる…なんて」
豚崎は目を右に逸らしてぼそっと「あの時も1人だったろ…」そう真姫に聴こえないように言った。
「…そうでしたね、そう言えば」
だが、真姫には聞こえていた。
あの時…つまり、魔法少女になった日。
部活の四人、豚崎達は漆原に人質に捕えられていた。あの時。
豚崎だけは何とかそこから逃げ出したあの日。
あの時も豚崎は真姫を助けに来た。
「でも、今回は違う…から、皆を見捨てない…まだ場所はわからない…けど、必ず助ける」
真姫の手をそっと握る。
豚崎は「同士だからね」真姫を安心させる為、震える自分を抑えるために豚崎は真姫に笑って見せた。
「…ありがとう」
真姫も笑って見せた。
「2人とも、水を刺して悪いんだけど、豚崎さん?だっけ?他の人…あと漆原くんの居場所が分からないって言ってたけど、どうやって探すつもりなの?あと、どうやって私たちの居場所が分かったの?」
江崎はそう言った。
「皆、僕も含めてあの黒髪ロングの…背の高い方の人に黒い霧を浴びせられた。その後はみんな、バラバラになった。僕と同じだったなら皆黒い霧の中をさ迷っている」
そして、2人の居場所がわかった理由。
「あと2人の居場所は真姫ちゃんのステッキによるものだ…」
真姫は今ステッキを持てる状況ではないので江崎が持っている。
ステッキの中の大柄の4人の1人の像が光る。
恐らく豚崎だろう。
「なんだろう…」江崎はそれを見て不思議に思った。
それと連動するように、豚崎が光り出す。
かん、かん、かん
階段を駆け上がってくる音がする。
「おい、いるのはわかってるからな!」
花織が、追ってきた。
「まずい、この状況でも多分まずい、豚崎さんの魔力量は人より少したいくらい…それでは
アイツにも勝てない」
「そう…だね、彼女のスピードはかなりのものだった…あの一瞬でわかった、結構ぎりぎりだったしね、僕の種族、オーク族は見た目通りのパワー型だ、スピードなんてほぼ皆無だ…」
江崎と豚崎は話し合う。
そして、すぐに豚崎は真姫を抱え江崎を腕に掴ませ早急にその場を去った。
バンっ!
ドアを勢いよくあける。
「くそっ…逃げられたか」
花織は3人を見失った。
そこへ霧ヶ峰もそこへやって来た。
「今日はもういいの、泳がせとけばいい」
「でも、今やっとかなきゃあとあとまずいんでしょ?」
花織の心配を他所に霧ヶ峰は余裕の笑を浮かべた。
「残りの者を探しに行ったみたいだけど、無駄よ?だって彼らは私の中にいるんだもの…今日はあとで用事があるからあなた達を撤退させてあげるために1人だけ逃がして挙げただけ…」
霧ヶ峰は黒い九尾のような尻尾を出し、全身から黒い霧を発生させこう言った。
「次あった時が、あなた達の死ぬ時……ふふふ 」
黒く艶やかなその尻尾は確かに黒狐の尻尾だった。




