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ケツァルコアトル〜太陽になる男〜  作者: AU
第一章 北方攻略編

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第四十三話 優勢と劣勢

 





 ワイルドハント。北方最優の狙撃手と呼ばれた男。




 北方帝国建国を掲げたイヴァン大帝に対抗した北方神格者連合。そこに与した凄腕の狙撃手は今、大帝の娘であるマリアによって甦させられ、自我を封じられた挙句、ただ凶弾を放つだけの道具として扱われている。




 元来気高き性格を持つ彼の心中は穏やかでは無いだろう。

 かつての仇敵に心を封じられ戦わせられる屈辱とは如何なるものか。それは誰にも想像出来ない。




 シャーロックもワイルドハントを解放しようと画策したが、彼よりも先に屍人化していたワイルドハントの自我を取り戻す手段は限られており、万が一にも自身の離反を知られぬためにも、彼を解放することは後回しにしていた。




 しかし今や、そんなシャーロックも、ワトスンも、ワイルドハントも。かつて大帝と相対した人物たちは軒並みマリアの操り人形だ。

 帝国側を援助する人物は最早おらず、ワイルドハントは苦渋を胸に歯を噛み締めながらライフルを握った。





(こ…ろせ…。早く…俺を…ころ、せ……!)





 階下にて凶弾に倒れる帝国軍の兵士たち。




 眉間を射抜かれ、脳髄を噴き出す頭部。胸部を射抜かれ、滂沱と噴出する血液。炸裂する四肢。追尾弾からどうにか逃れようとする兵士の苦悶の表情。




 当然、皆覚悟の上でこの戦地に赴いている以上、その死は避け難い必然のことなのかもしれない。




 だが、ワイルドハントはそう思わない。

 自分は本来、そちら側にいる人間であると。自身の銃口は大帝の娘に対して向けられて然るべきなのだと。そう考えているからこそ、心中に残された僅かな自我で己の無力さを嘆いた。





「まずいなぁ〜。ひじょーにまずいよー。コネクトも切れちゃったし、連絡も取れないじゃーん…。ポチー、早く狙撃手狩ってくれないと、私も満足に動けないんだぜ〜?」





 マヤウェルはネズミ、サックス、ワイルドハントの狙撃。その三者を相手取りながらそうぼやく。




 歴戦のマヤウェルであっても、流石に三者を足止めすることは厳しく、三者を同時に相手取っている現状、いずれかを撃破することも難儀なことだ。

 ベンケイはどうにかネズミの黄金龍に喰らい付いているものの、有効打は与えられていない。城内の面々が紙一重の状態でどうにか耐え忍べている理由の殆どは、マヤウェルの爆撃によるものであった。




 とは言え、このままではジリ貧。いずれは帝国軍の兵士たちの体力も尽き、体力や欠損の心配がない屍人側に軍配が上がることは自明の理だ。




 そうならないためにも、帝国側は一刻も早くワイルドハントを狩る必要があった。

 姿が見えず、位置を定めず、遠距離攻撃を得意とするワイルドハント。彼さえ仕留めることが出来れば、ある程度の余裕が戦場にもたらされると言うもの。マヤウェルに余裕が生まれればネズミとサックス二人を打破できる手段も用意できるだろう。





 そんなワイルドハントを狩るべく先を急ぐのはポチである。

 機転を効かせたシペトテックのおかげで岩の拘束を振り切り、時越えを繰り返して駆けること数刻。ハルトが捉えたワイルドハントの位置まで辿り着いていた。しかし、





(いない…。マヤウェルさんの言う通り、動き回りながら狙撃をしているんだ。位置が特定されないように)





 辿り着いた場所には狙撃手の姿は無く、あるのは空の弾倉と、ほんの少しの弾丸の予備だけ。




 位置を度々変更しているワイルドハント。ハルトは常に光の索敵を行い皆に情報共有をしていたが、それもコネクトが切れた今では意味を成さない。ここからワイルドハントを探し出すのは至難の業である。




 とは言え、ポチが止まる理由にはならない。自分がワイルドハント討伐の任を受けた以上、それを遂行しない理由は無いのだ。

 ポチは改めて、ライフルの発砲音を頼りに再び城内を駆け始める。




 当然発砲音はサプレッサーにより大幅に減衰しているものの、完全な無音にはならない。ガスが膨張し破裂する際の微かな音を、ポチの、もといクアウトリ家の恵まれた五感は聞き逃さなかった。





(ここから…南東の方向に、十数メートル上…ですね)





 位置を把握したポチはすぐさま扉を切断して押し通り、音の方向へとひた走る。

 生き物の気配のない不気味で薄暗い城内の廊下にはポチが駆ける音のみがカツカツと響いた。一寸先すらも見えづらいこの空間にて、ポチが頼りにするものはやはり音だけだ。




 十数メートル上から聞こえた音はワイルドハントの居場所が二つフロアが上の場所であることを意味していよう。大階段へと辿り着いたポチは猛スピードで階段を駆け上がった。




 外の戦闘音が発砲音を阻害しポチに正確な位置を把握させんと響くが、焦燥に駆られているポチの心持ちは逆に冷静である。

 研ぎ澄まされた聴覚で的確にワイルドハントの座標を割り出していく。




 そのセンスはクアウトリ家の血筋の中でも有数。天帝の従兄弟にあたるポチは、間違いなく他の兵士と一線を画した戦闘技術と身体能力を持ち合わせている。

 あと数年もすればその実力は世界でも指折りのものへと昇華されるだろう。




 されど、それ故にポチは焦っていた。それは強く生まれたがための苦悩。強く生まれた以上、強くあらねばならない。そこに責任感が生じ、まだ未熟で若輩であるポチを苦しめる。





(次逃したら、また被害が増える…。みんな必死で戦ってるんだ、私が絶対、次で殺さないと。この戦況を優勢に出来るかどうかは私にかかってる…!)





 懊悩を振り払い、ポチは幾つもの部屋を素通りして動くものの気配がする方向へと急ぐ。

 時越えを繰り返したポチのスピードは、百メートルの距離を瞬く間に駆け抜ける程に加速していた。




 そして辿り着く。廊下に横一列に、無数に並んだ部屋の一つ。微かにではあるが発砲音が聞こえているとある部屋に。





(ここだっ。ここに、いる…!確実に!)





 城のちょうど中部。長く続く廊下の奥から三つ目の部屋の前でポチは足を止める。

 ワイルドハントの気配はこの部屋からだ。間違いない。そうポチは判断する。





 すぐにでも飛び掛かりたい気持ちを抑え、スゥと息を吸う。

 心音を落ち着かせ、額から垂れる汗すらも制御して、ポチは時越え発動の準備を整えた。





 部屋の中の形状を推測する。外を眺める窓の位置。ライフル弾の発射される微かな音。そこから算出されるワイルドハントの定位置。

 そして、ポチ自身がそこに到達するまでの秒数をコンマ数秒単位で測定する。






 ーーーそれからポチは、時を越えた。






 僅かコンマ三秒の時越え。ポチが算出したワイルドハントの座標へと到達するまでの時間。

 ポチはその時間で扉をすり抜け、窓際にて階下へと凶弾を放つワイルドハントの首を狩る……




 はずだった。





(っ!?いない!…いや違う!さっきまでの音は間違いなくホンモノだ。私を欺くほどの理性が残されているとも思えない。つまりこれは、擬態!)





 ワイルドハントを一撃で狩ることは叶わず、ポチは弾倉に手を触れるに留まる。彼女の奇襲は出鼻を挫かれてしまったのだ。





 ワイルドハントが司る『狩猟の神』の能力は大きく四つ。

 スコープ無しでも千里先を見通す超高度の視力。弾丸の軌道を変える技術。急造の弾丸でも威力を高める増幅効果。加えて、背景へと溶け込む輪郭の破壊。この四つである。




 ワイルドハントは有事に備え、常に輪郭を破壊し背景と同化。まるで常に高精度のギリースーツを纏っているかの様な状態をどの環境でも成し得ていた。




 しかしながら、輪郭の破壊は完璧な背景との同化を意味しない。シルエットを()()()()()だけに留まるため、動いてしまえばその効果は無為になる。加えて超至近距離であればその効果を発揮できないだろう。




 ポチはそれをわかっていた。故に、初撃は空振りに終わってしまったものの、すぐさま体勢を立て直し二撃目を放とうとする。





「ーーーっ!!」





 それでも、そう簡単にワイルドハントを狩ることは出来ない。

 彼はポチが二撃目に入るまでの刹那に数発の弾丸を放ち、ホーミング機能のある弾丸はポチの周囲を蜂の如く飛び回っていたのだ。




 ポチが二撃目の軌跡を寸前で変え、三発の弾丸を斬り落とす。続けて放たれた四発の弾丸から避ける様に後方へ飛び時を越える。弾丸と距離を取ったポチは、ワイルドハントを翻弄する様に壁を走り、敢えて弾丸を落とさずに逃げ回った。





「…………」





 ワイルドハントは追撃の手を緩めない。何発も何発も、ポチに向かって弾丸を放つ。




 無限に追跡する凶弾の数は十を越えた。あまりにも執拗なその攻撃に対しポチは適宜その弾丸を落としつつ、ワイルドハントへと近付いては離れ、壁を、床を、天井を駆け回った。




 ワイルドハントはポチが近付いてくると身を翻して仰け反り、部屋の中で位置を変える。

 ワイルドハントは当然ながら神格者としての身体能力を有している。遠距離攻撃を得意とする能力ではあれど、近接戦闘でもポチの剣を避けることは何とか可能であった。




 動きながらもライフル銃を巧みに操りポチの攻撃を躱す彼の技量は驚嘆そのものだが、輪郭の破壊もここまで近づかれては意味を成さない。

 つまりは今、ポチの剣がワイルドハントに届くのが先か、ワイルドハントの弾丸がポチを射抜くのが先か。その勝負となっている。





 ーーーそうして、戦況は動く。

 それは、予期していなかった形で。





「……?」





 ワイルドハントは困惑する。彼が手を伸ばした弾倉。そこにはもう、弾が一つも残されていなかったから。





「ーーーようやく、ですね」





 ワイルドハント程の狙撃手が残弾を見誤る。それはあり得ないことである。放った弾の数も、残りの弾数も全て把握し、その上で追尾弾を無駄にしない様に操作していたのだ。




 が、ポチは初撃の際、()()()()()()()()

 そして万が一の事前の策として、弾倉の時を飛ばしていたのだ。すぐさま弾倉を回収したワイルドハントであったが、そのポチの策により残弾数を見誤ってしまったのである。




 一つ前の部屋。そこには弾が残された弾倉が置いておかれていた。つまりはワイルドハントは弾を持ち歩いているわけでは無く、各部屋に事前に配置していた弾以外のものは用意が無いとポチは推測したのだ。




 そしてそれは正解であった。故にこそ、ポチは、ワイルドハントが弾を完全消費するまで逃げ回っていたのである。

 ワイルドハントの隙が生まれる瞬間。それを生み出すために。





「…………さす、がだ…」





 ワイルドハントはごく僅かに残された自我でポチへ賞賛の一言を告げる。




 ポチはハナから侮っていなかったのだ。近接戦闘であってもワイルドハントを狩れないかもしれない。下手をすれば遅れを取るかもしれないと考えていた。

 これは自身を過小評価している訳でも、自信を失っている訳でも無い。二度とあの時のような、ハルトをダッキに連れ去られた時の様な失態は起こさないと言う決意の表れだ。





 油断は無い。過信も無い。あるのはただ、帝国に、もといハルトに立ちはだかる障壁を、徹底的に排除すると言う不退転の決意のみ。





「すみません。では、」





 ポチはワイルドハントの言葉に少しだけの反応をすると、加減なくその刀を振るう。




 その切先はワイルドハントの首に触れ、一息にその首を斬り飛ばした。




 また、返す刀を振り下ろし、胴体をも袈裟斬りに斬り落とす。

 元の人格がこちら側であるからと言って慈悲も与えない。万が一にも復活が無いよう、徹底的にワイルドハントの肉体を消滅させた。





「……ん。これで、流石に大丈夫ですよね」





 息を整え、ワイルドハントの消滅を確認するポチ。




 銃声の聞こえぬその部屋、ひいては戦場は、確かに一つの脅威が去ったことを示していた。







 ===========







「銃声が…止んだみたいだね〜。これはこれはー…」





 城外にて神格者たちの相手をしていたマヤウェルは、先ほどまで降り注いでいた銃声の雨が止んだことを確認する。




 彼女はすぐに理解した。ポチがワイルドハントを討伐したのだと。

 そしてそれは、マヤウェルの行動にある程度の余裕が生まれたことを意味する。





「さてさて〜思ったよりも遅かったけどーまぁ及第点ってところかな〜。じゃ、負けじとお姉さんも頑張っていこーかー」





 階下にてその巨躯で暴れ回るネズミ。そして宝石の固有能力を駆使して妨害して回るトム。

 ネズミは確かに攻撃性、破壊性ともに厄介ではあるが、何とかベンケイと第二部隊の精鋭たちで足止めを出来ているのが現状。




 となればまず先に狩るべきはトムの方である。

 宝石の能力は火炎を発生させ兵士を蹂躙するだけで無く、風を引き起こしその火災を拡大化。それを防ごうと爆弾を放つマヤウェルの攻撃を、宝石を巨大化させて相殺。とにかく多岐にわたるその性能からも、放っておけば危険であろう。




 今はまだ、城外の戦闘が始まってから十分経つか経たぬかと言うところであるため、まだそこまで甚大な被害は出ていないが、これ以降はジリ貧になること間違いなし。そう判断する。





「だからやっぱり〜、先に殺すべきなのは君なのかな〜」





 マヤウェルは、すぐさま大量の小型爆弾を生成しトムに向かって放つ。




 マヤウェルの司る『爆発の神』の能力は物を爆弾に変え爆発させるものでは無く、()()()()()()()能力。

 その形状、機能性、爆発の規模。あらゆる部分でカスタマイズが可能な能力だ。




 無論、そのカスタム性や威力が高まるほどに生成に要する時間は長くなるものの、裏を返せば小型の爆弾であれば無数に、そして瞬時に生み出すことが可能であった。




 空中にで破裂する無数の小型爆弾。難なくそれを防ぐトムは、煩わしさを表情に出してマヤウェルを睨め付けた。





「何だ?急に投げやりになりやがって。なんかあったのかアイツ」





「知りませんよ!!先ほどからワイルドハントの援護射撃が止んでます!まさかとは思いますが、戦況を急ぐべきかもしれません!とっととあの女を殺りなさいトム!」





「うるせぇなぁ!わかってるよデカブツ!」





 ネズミに煽られたトムは、先ほどまで拮抗していた勝負を一気に覆すため、宝石の空気噴射を利用してマヤウェルへと突進する。




 宙を駆けるトムの速度はそこまでではあるが、帝国の兵士に空を飛べる人間はいない。必然、数秒先にマヤウェルとトムは一騎打ちの形に持ち込まれるだろう。




 マヤウェルの眼前まで迫るトム。彼は懐を弄るといくつかの宝石を取り出し、その特性を発揮させるべく宝石の名を呼んだ。





固定瑪瑙(ピクチャーメロウ)





 トムが取り出した琥珀色と黒色で層を成した宝石。その能力はその宝石を見た者を数秒間その場に固定し硬直させると言うもの。




 マヤウェルはその攻撃を食らい、あっという間に瞬きも、喋ることも、呼吸すらも封じられてしまう。




 とは言え、数秒の麻痺は実力者にとってそこまで問題は無いこと。反撃の用意も、攻撃への対策も済ませていることは明白だ。

 故にトムは、少なくともその隙を生まさぬよう重ねて宝石を放った。





炸裂柘榴(ガーネットグレネード)





 次に放たれた赤い宝石はガーネット。その固有能力は炸裂だ。

 それもただの炸裂では無い。炸裂と同時に鋭利にして無数の礫を周囲へと高速で放つ、正にグレネード弾のような炸裂宝石。




 それにより停止しているマヤウェルに風穴を開け、致命傷を与えようとした。





「お前の得意で殺してやるからな!女!」




 麻痺した顔で、やや驚愕の表情を浮かべるマヤウェル。

 それを上から眺めるトムは、目論見通りと口端を歪ませた。




 爆発の神であるマヤウェルを同じような能力で倒すことに快感を覚えているようで、文字通り高みの見物を決め込んでいる。




 そして宝石が炸裂した。炸裂によって弾けた宝石はほんのりと煙を放ち、トムの視界を遮る。風の吹かない冥界領域に静かに白い煙が充満していく。

 トムはそれを見て、煙が晴れた時にマヤウェルの死体を確認してやろうとほくそ笑んだ。




 厄介ではあったが、結局自分の敵では無かったと。屍人として甦った自分には無限の可能性があると。トムは自身の実力に陶酔した。





 ーーーだが、そこで一つの違和感を覚える。





 炸裂柘榴は、煙を放つものではない。確かに周囲の地面が砂地であったり、粉砕されやすい建造物が近くにあればそれは硝煙が発生しよう。

 しかし今回それは無い。その場にいたのはマヤウェルだけで、もっと言えば立っていた場所も硬い岩の丘の上。ここまで煙が立つことは少し考えればわかる、おかしな話であった。




 ともすればマヤウェルが事前に設置していた爆弾が宝石を相殺したのかとも考える。さすればマヤウェルはまだ生きているかもしれないと。





「…おいおい。なんだってんだよ。じゃあ直接燃やすなり溺死させるなりしてやらぁ……あ?」





 そう考え、霧払いのように煙を切り裂いたトム。




 間接的な攻撃が防がれてしまうのであれば、防ぎ用の無い手段で殺せばいいだけ。

 トムに残された宝石はまだ十数個以上ある。直接息の根を止める手段も無数にあると言うもの。




 まず火炎を放つ。そして空間を固定する。その上で水責めを行えばまず生きてはいられないだろう。少なくとも爆発でどうにか対抗出来る話では無い。




 と、画策していたのだが。煙が晴れた末、トムの視界に入ってきたものは想定していなかった物であった。





「あ…こりゃ…すげぇ…。見たことねぇ宝石だっ!」





 先ほどまでマヤウェルが立っていた場所に鎮座するは、無数の煌びやかな宝石の数々。




 半透明の赤、青、緑、橙色の宝石たちが、光のない空間でテラテラと輝きを見せる。




 見せる、では無い。最早それはトムを()()()

 魅了して、目を離させず、その手に触れさせた。




 その場にトム以外がいたならば明らかな罠であると彼を止めたであろう。

 しかし、どうあれ結果は同じだ。トム程の宝石狂い。見たことの無い煌びやかな宝石を前にして正気を保っていられる訳も無い。




 ーーー手に取った宝石は、トムの掌に乗っかった瞬間、その内部から強烈なエネルギーを放ち、そして





「はい。どーん」





 猛烈な勢いを持って周囲を吹き飛ばす、大規模な爆発を引き起こした。





「ぐぁっ、っー!!!!!」





 そう、これらは宝石に模した爆弾。ワイルドハントが消滅したその隙を利用し、僅かな時間で生成した宝石爆弾だ。




 マヤウェルは最初の硬直の寸前に爆弾を既に放っており、炸裂柘榴を相殺。

 そのまま硬直から抜け出すと宝石爆弾を周囲にばら撒き、トムを魅了、撹乱させた。




 トムはマヤウェルのことを単なる砲手としか認識しておらず、マヤウェルも敵側に自信が爆弾を生み出せる存在であると看破されぬよう動いた。

 よってトムは、宝石が罠であるとは考えなかったのだ。





「まっ、待て!おい!まだ手に入れて無い宝石がっーーー」





 案の定それを手に取り、まんまと爆発に巻き込まれたトム。爆発し頭部だけの状態になった彼は、唯一残された口で命乞いをする。




 が、当然の如くその言葉を聞き入れるようなマヤウェルでは無い。

 彼女の予定通り作戦は達せられ、手に持った蓄光型照射器にてトムは消滅させられた。





「あのねー、爆弾で君たちを殺すことは出来ないけどさ〜、でも弱らせることは確実に出来るんだぜ〜?さ、次は君だよー金ピカで可愛い蛇くん?」





「貴様〜〜!私は蛇では無い!!竜だ!!金の竜なんだよ!!!」





 そうして次の標的をネズミへと定めたマヤウェル。




 城外の戦闘は一気に加速し、彼女中心に優勢へと舵を切ったのであった。







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