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ドーン・イン・フォールン 16 地下探検

 会議を終えたあと、さっそく行動を開始する。

 ギルドメンバーたちには古街の守備と並行して、饗団の動きに注意してもらう。

 そして俺とカサンドラ、ラナ、ダイアナで街の地下へとやってきた。


「古街にもこんな入り口があったなんてねえ」


 カサンドラの髪飾りは魔導具だ。特注で作ってもらったもので、光魔法≪ライトシールド≫を発生させることができる。

 彼女に来てもらった理由は光源とラナやダイアナの護衛だ。


「前にウチの子ども組が誘拐されかけた件で見つけたんだよ」

「たしか、人に乗り移る化け物だったって聞いたさ」


 ストンロウルという離島の町にいた、おぞましい怪物だ。ヤツはより良い【才能】と若さを持つ肉体を求め、ミコちゃんに執着していた。フォールンまで追ってきて、子ども組を誘導し、ことを為そうとしたのだった。


「はっ!」


 おっと、思わず笑いが出た。


「シント? 急に、どうした、の?」


 ダイアナが心配そうに声をかけてくる。

 込み上げてもくるさ。おびき出したはずのミコちゃん、ミリアちゃんは【神格】に選ばれし者で、ディジアさんとイリアさんなんて元女神だ。相手が悪いなんてもんじゃない。あの怪物と化した男――ウェイトンは愚かすぎる。


「ごめんごめん、ちょっと愉快な気分になって」

「シントってば、びっくりさせないでよ」


 ラナも心配の視線を送ってくる。


「この先の壁が崩れていて、遺跡を繋がっていたんだ。いちおう壁はふさいでおいたけど、小突けば通れるようになるはず」

「その先はわたしとダイアナの出番だね」

「見つかると、いいね」


 難を逃れた憲兵隊勢力は、地下遺跡へ潜伏中だという。

 どこにいるか、正確な場所はわからない。だからこそのラナ、ダイアナだ。


「聞いた話だと、憲兵たちは商業区と中央区の境あたりで戦闘を行ったそうだ。そこから地下へ潜伏するとなると、場所を絞れるかもしれない」


 フォールンには大きく三つの地下出入口があり、その全ては封鎖されていた。彼らがすぐに逃げ込めただろう場所は、中央区のもっとも有名な入り口だと思う。

 ただ、届け出が提出されていない入り口も存在しているはずで、俺たちが入ったのもその一つだ。

 まさか今日に活用できるとは、思いもしなかった。


 件の箇所に到着し、壁を崩す。少しばかり大きな音がしてしまったが、大目に見てほしい。

 ここからは注意が必要。不死者が出る。


「カサンドラ、頼む」

「ああ、あたしの後ろに来な」


 槍を片手に、≪ライトシールド≫で前方を照らす。

 これのおかげで俺は探知に集中できるのだった。


 ぽつぽつと会話しつつ、進む。

 かなり広くて、道もかなり分かれているのだが、歩くうちに変化が訪れた。


「足跡、見えるね。ダイアナ、どう?」


 ラナが発見し、ダイアナがうなずく。

 彼女は『細の眼』という希少な【才能】を持つ。以前は力が強すぎることで思い悩み、家出までした。

 だがいまは鼻から上を覆う美しい仮面型魔導具『マジックゴーグル』により力を制御し、使いこなしていた。


「そんなに、前じゃない、です。たぶん、大人数」

「うん、足の大きさからいって、大人……だね」

「何人くらいか、わかる?」

「十人以上。でも、憲兵さんたちじゃないんじゃない?」


 潜伏中の憲兵は数百人単位と聞いた。

 集結していればもっと多くなる。するとこれは、小隊から中隊。それか、敵。


「ラナ、ダイアナ、なにか見つけたら教えて。俺が探知をやる」

「魔法?」

「うん、新しい魔法があるんだ」


 ジャングルで習得した≪心意ノ波形(シンイノハケイ)≫は、自分を中心とした範囲内のものを浮き彫りにする。

 魔力による立体映像、とでも言えばいいか。波として放出した魔力が触れたものの形を作り、その情報が俺に帰ってくる仕組みだ。


「試してみようか。≪心意ノ波形(シンイノハケイ)≫」


 目をつむり、詠唱。まぶたの裏に浮かび上がる像。壁やオブジェばかりで人間に姿はない。

 いまのところ、効果範囲は三十メートル強といったところ。いずれはもっと範囲を広げたいところだ。


「範囲内に人間はいない。進もう」


 カサンドラを先頭にして、慎重に行く。

 足跡は奥へと続いていて、それを辿っていった。


「誰かいるな」


 何度目かの探知で、先を行く人間を発見する。

 範囲に入ったのは、四人。なにかを探している風にも思える。


「ラナ」

「うん、ちょっと待ってて」


 彼女は身を低くしながら、物陰を利用し、移動。

 数分後、戻ってくる。


「装備は冒険者風。武装してて、明らかになにかを探してる。数は最低六人」


 知りたいこと全部わかってしまった。さすがすぎる。


「カサンドラ、明かりを消してくれ」

「やっちまうかい?」

「いや、俺たちの存在を教えたくない。ダイアナ、頼めるかな?」

「うん」


 ラナの先導のもと、忍び足で謎の人物たちを追いかける。

 発見したところで、ダイアナへアイコンタクトを送った。


「サナトゥス……おねがい」


 【神格】疑剣サナトゥスは恐ろしい力を持つ。

 その一つが、ゴーストを呼び出すことだ。


「は……?」


 誰かの声。それと床に倒れる音。


「おい、どうした?」

「……攻撃か?」

「いや……なにかされたような感じは……はっ!?」

「これは! やはり攻撃!」

「待て、慌てるな。集まっ――!」


 どさどさどさと連続で倒れる。

 しばらくすると、音がしなくなった。

 ダイアナが大きくうなずく。念のため、もう一度探知をかける。動いているものはなにもない。


「よし、調べよう」

「ていうかダイアナ、いまなにしたのー?」

「あ、うん、ぎゅっ、とした」


 ぎゅ?


「どういうことさ」

「例えるなら、心臓、鷲掴み、みたいな」


 なんだそれ。聞いてるだけで寒くなってきた。サナトゥスにそんな力あったっけ。


「えと、心を凍てつかせる、みたいな」


 おそらく、標的に恐怖を呼び起こし気絶させる、という感じか。

 なんてやばい能力なんだ。


「あ、でも、こういう時しか使えない、です。不意打ち、だから」

「な、なるほどねえ。あたしには使わないでおくれよ?」


 カサンドラの声は上ずっていた。彼女はゴーストが苦手だから、無理もない。 

 会話を止め、倒れている男たちのもとへと行く。

 饗団に兵士には見えないが、憲兵とも思えない。


 懐をまさぐってみた。なんとなく後頭部に非難の目がある気もするが、非常時だからか、反対はされない。


「うん? 冒険者ライセンスか」


 饗団についた冒険者、と考えていい。


「たぶん、『ワーカーズ』の人たちだと思う。こっちの人、見覚えあるし」


 『ワーカーズ』だったのか。

 フォールンでもっとも所属冒険者数の多い、超大手ギルドだ。ランクはA。

 昨季における依頼達成数ナンバーワン。ギルドマスターのランクはオリハル級だったはず。

 『ワーカーズ』はなんでもやることで有名だ。所属冒険者の等級はピンキリで、なんでも引き受ける代わり、達成率はあまり高くないと聞く。


「『ワーカーズ』なら探索が得意な冒険者も多いはずさ。何人かは凄腕がいるし、気をつけたほうがいいねえ」


 自然と緊張が高まる。

 冒険者同士の戦いは不本意だが、いざという時はやるしかない。


 男たちがなにを探しているのかは、考えるまでもないだろう。

 憲兵をはじめとした地下に潜む反乱分子を探していたはずだ。

 

 しかし、裏を返せば謎に満ちた地下遺跡はさしもの饗団でも把握できていないということになる。

 俺たちが有利をとれる余地もあるってことだ。


「先へ進もうか。昼飯もあるから、気長に行くしかない」

「それはありがたいさ」

「前に気をつけるね」

「わたしは、うしろ、見てます」


 陣形を組み、探索を再開する。

 しかしまた、この遺跡はどこまで広がっているのか。

 途中、昼食休憩をとり、作戦について話した。


 それからまた一時間ほど歩いたところで、かなりの人数からなる集団を見つけた。

 松明を設置し、テントもある。

 何者かの拠点であることは明白だ。


「あれ、『ワーカーズ』じゃないと思う」

「……静かで、強い魔力。シント、魔法士、かも」


 ラナとダイアナの判断を信じる。

 魔法士だとすると、おそらくは『エターナルズ』だろうか。


 さらに緊張が高まっていく。

 さっきとは違い、人数も多い。使う魔法も未知数だ。

 やるか、避けるか。突破する方法を考えよう。

 

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