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希望と絶望と、絶望と希望 22 仲間を求めて『アマゾネス』『バーバリアンズ』

 どよめきが続いている。

 それはいいのだが、天至を倒したのはほんとうだ。


 たしかにアレは【神格】の所有者と同等か、それ以上の力を持つと思う。

 だからって必ずしも勝てないわけじゃない。


「まあ、その話はあとだ。今から俺はメンバーを集めに行く。食糧の問題もなんとかなると思う。ギルドの庭にはなにも置かず、誰もとどまらないようにおねがい」

「んん?」

「なるべく早くみんなを連れて来るよ」


 まずは近場から行く。


「ちょっとちょっと、いきなりなんなの」

「行ってきます」

「はあ? 待ってって!」


 だいじょうぶ。問題はない。


「だから、一人はだめだってば!」

「もう、いなくなるのは、だめ、です」

「すぐに戻るよ。≪空間ノ移動(ジャンプ)≫」


 【神格】魔空ウラヌスの力を借りる。

 ちょっと不服そうだけど、瞬時に説得。

 よし、いいぞ。

 まったく安定しなかった空間の移動は、いまはちゃんと使えている。


 ますます確信が高まっていく。

 『眷属』という言葉も、俺が見た過去の映像も、頭の中にある情報がまるでパズルのように、欠片が合わさっていくのだった。



 ★★★★★★



 光景が変わり、懐かしい街並みが目に入る。

 周囲を見回すと、あまり変化がないことに安心できた。


 ここはフォールンの繁華街。世界で一番妖しい場所と言っていいだろう。

 いつの夜だって明かりの絶えない危険で魅力的な場所だ。


「アマゾネスは無事か」


 ウチとギルド連合を組んでいた女傑集団『アマゾネス』。マスターであるグイネヴィアさんはその苛烈な戦いぶりから『狂乱の戦女』という異名を持っている。

 みんな無事でいればいいが。


「すみませーん」


 と、扉を開ける。

 とたん、めっちゃにらまれた。


「誰?」

「悪いけど、わたしら――」


 時間が止まったみたいに、動かなくなる。


「ゆう……れい?」

「待って、うそよ」

「幻覚? 錯覚? わたしら実は死亡?」

「カーリーさん、ヴァティさん、ラミアさん、無事でしたか」


 わっと集まってぺたぺた触られた。

 

「マジでハイマスじゃない!」

「生きてた! 生きてたー!」

「ほんともう、心配させて、ひどいわよ」

「心配かけてすみませんでした」


 頭を下げる。

 で、もう一人のことを聞いた。


「ええと、グイネヴィアさんは?」


 ぴた、と止まる。

 え、まさか。


「姐さんは、うん、まあ、暴れてる」


 なに?


「わたしら、休憩。姐さん、ブチギレ」

「ブチギレって、なんです? いまはどこに?」

「たぶん、ミュラーさんといっしょだと思うけど」


 ミュラーさんが? 

 彼は凄腕魔導具技師で、戦闘においても卓絶している。

 無事なのは嬉しいが、どういうことだかわからない。


「繁華街は被害を?」


 三人の話を聞く。

 繁華街は決して無視されたわけではない。

 饗団に狙われたのは、繁華街に拠点を置く裏の組織だ。

 従う組織からは金と人を吸い上げ、逆らう組織は容赦なく叩く。


「そのあとは饗団の連中が悪党の代わりにみかじめを要求するようになって」


 みかじめ、とは裏社会の者たちが用心棒代とかいうでたらめな要求をするヤツだ。冒険者になってから知ったことだった。


「で、繁華街のみんなで団結しようって話に」

「饗団の反応は?」

「みかじめを取ろうとしたのは下っ端だし、本気で鎮圧しようとはしないっぽい」

「何度か攻めてきたけどね。追い払った」


 古街でも思ったが、攻勢が強かったり弱かったりと、妙にちぐはぐだな。


「繁華街は安全だと?」

「なんとも言えない。でも、やられることはないんじゃないかって、ミュラーさんが」

「猶予はありそうですね。実は今、全員招集をかけてます」

「えっ!?」

「それってつまり」

「ええ、反撃を」


 三人の目が吊り上がって、体から魔力が噴き出る。


「グイネヴィアさんとミュラーさんには俺から。みなさんは先に古街へ移動をおねがいします」

「それはいいけど、どうやって行くわけ?」

「さすがに簡単にはいかないし」

「いえ、問題ありません」


 三人を≪空間ノ移動(ジャンプ)≫にて移送。ギルドはちゃんと施錠して、教えてもらった場所へと向かう。



 ★★★★★★



 教えられた場所は、酒場兼食堂だった。

 割と大きなお店だが、様子がおかしい。ずいぶんと静かだ。

 夜のお店ではないから、少なくとも従業員はいるはず。


 中に入ってみる。

 ちょっとびびった。

 戦士風の男たちが、一、二、三……とにかくいっぱい倒れている。


 店内の中央で男たちを何人も重ねた特大の椅子に座っている人物が見えた。

 そう、『狂乱の戦女』グイネヴィアさんだ。

 迫力ありすぎだろ。ごふー、とか煙みたいな空気吐いてるし。


「グイネヴィアさん?」

「ああん? 誰じゃん」


 眼光が鋭い。


「……って、シント?」

「はい、そうです」

「……」


 いきなり飛びかかってくる。

 くらったら首を持っていかれかねないハイキック。

 全力で受け止める。

 体が浮きかけた。マジかよ。


「は! マジでシントじゃん!」

「テストしたので――うぶっ」


 豊満すぎる胸に顔がうずまった。抱きしめられ背中がきしむ。

 これ、死ぬんじゃ。


「ははは! やーっぱ生きてたじゃんよ!」


 窒息寸前で解放された。


「はあー……まったくさ」


 彼女は指で涙をぬぐった。ほんと、すみません。


「ミュラーの旦那!」


 奥の方に声がかかり、ミュラーさんが出て来た。

 すごく久しぶりな気がする。

 あいかわらずのむっつり顔で、表情の動きはない。


「アーナズか。久しいな」

「ええ、よくぞご無事で」

「特に問題はない」


 もう一度言おう。あいかわらずすぎる。


「君が来た、ということは動く時が来た、と考えていいか?」

「はい、それと注文を」

「ふむ。それは魔導具の注文だな」

「そうです」

「おーい、あたしを置いてけぼりにしないでほしいじゃん」


 横から肩を組まれる。


「どうしてお二人が?」


 気になるところだ。


「あー、なんとなく?」

「端折りすぎだ。俺たちは繁華街に入ってきた饗団を狩っていた」

「そん時たまたまかち合ってさ。それ以来、連携してんのよ」

「そうだったのですね」


 おかげで繁華街は守られた、ということらしい。

 しかしまあ、相手が悪いとしか言えない。この二人に組まれたら、倒すには大部隊を出すしかないだろう。


「自分のテリトリーを犯されるのは、好きではないのでな」

「あたしはもうあんたがいなくなって、むしゃくしゃしてたのさ。憂さ晴らしみたいなもんじゃん」


 さいですか。


「とりあえず古街がピンチなので、来てもらっても?」

「カサンドラたちがかい?」

「そうなんです」

「俺も行ったほうがいいか?」

「できれば」


 グイネヴィアさんに加え、ミュラーさんまで来たら最高だ。


「それでは空間移動を」

「待て」


 ミュラーさんが手を掲げた。


「俺はいい。準備してから赴く」

「わかりました」

「だからあんたたちさ、話進めんの早すぎじゃんよ」

「アマゾネスのみんなはもう移動させていますので」

「うん?」


 ≪空間ノ移動(ジャンプ)≫を発動し、グイネヴィアさんを古街のギルドへと移動させた。


「ではあとでな」


 ミュラーさんはまったく事情を聞くこともなく、さっさと出て行った。

 さすがにどうかと思うが、話が早いのは助かる。


「……」


 ぽつりと店内に残される。

 順調なのに、なんか寂しいと思ってしまった。

 

 

 ★★★★★★



 次に移動したのは、第五地区だ。

 ほとんどが住宅街で占められる地区ではあるが、商店街もある。

 いつもは往来を多くの人が歩いているはずが、いまは少ない。


 少ない、というか、みんな走っている。

 なにかが起きていると考えていい。

 

 ちょうどこちらへ走ってきた若者を捕まえる。

 怒っているんだか、急いでいるんだか、よくわからない顔だ。


「あんた、聞いてないのかよ。処刑だ処刑!」

「処刑?」

「ああ、鋼拳士こうけんしジョルジオの公開処刑だよ」


 なんとまあ、すごいタイミングで来てしまった。

 まさかの処刑とは思いもしない。


 どうやら抜き差しならない状態なのはたしかだ。

 状況を確認している暇はないな。


 流れに乗って、第五地区のベリビエント広場へ進む。

 広場はこの地区の中心部であり、様々な彫像が設置された場所だ。


「盛り上がっては……いないみたいだ」


 ものすごい数の街人がいるけど、野次が飛んだりはしない。

 むしろ固唾を呑んで見守るって感じ。

 

「ジョルジオはどこだ?」


 居場所がわかればすぐなんだけど。

 タッくんたちはどうなった?


 答えは十分後にわかる。

 重武装の兵士たちに引き立てられ、ジョルジオを先頭にタッくんやルーリナさん、ユーリエさんとエランさんが続く。

 全員が縄で手首を縛られた状態だ。


「ん? あれは、まさか」


 なんとなく見覚えのある男がいる。

 羽根のついた派手な鎧にやたらとテカった肌。


「我は神軍が要の一つ! ゲース将軍である!」


 ゲース卿か。懐かしい顔だ。

 逮捕されたはずなんだけど、饗団と取引でもしたのか。

 しかも将軍とは。滑稽なものだな。


「これより大罪人に裁きを与える! 神軍に逆らった愚者には死を!」


 歓声を上げる者はいない。

 伝わるのは恐怖。


 ジョルジオたちはボロボロだ。きっと戦い続けてたんだろう。

 再開を祝いたいところではあるけど、そんな余裕はない。


「いけるか?」


 距離は……問題ない。魔力も充分だ。

 空気を介して体に触れていると解釈を広げた。

 もちろん対象はバーバリアンズのメンバーである。


「さて、≪空間ノ移動(ジャンプ)≫」


 ふっ、とジョルジオたちが消えた。

 魔法は問題なく発動。

 【神格】魔空ウラヌスは俺に力を与えてくれる。

 これはかつてディジアさんの一部だったもの。

 それを使うのなら、俺にとっては……


「な、なぜだ! なぜ消えた! どうなっているんだ!」


 ゲース男爵、もとい将軍、がものの見事に慌てている。


「探せ! 反乱者どもを探すんだ! くそ! どこに行った!」


 兵士たちが散っていく。

 集まった人々もばらけだした。


「なんの【才能】だ!? やっと捕らえたというのに!」


 悪いがおまえに付き合っている暇はない。

 俺もさっさと退散だ。

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