二千六百四夜、じいじの高校生生活 1231 三年生 186 三学期から 5
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
「──……ハハハ……それはありがたい話なんだけれど……。
でも僕は、何もする気はないよ……。
僕のめざすのは、さっさと学校を卒業をして、近所の会社で地味に働いて、ゆっくりと歩いていきたいと思っているだけだからね……。
僕の一生には、変わったことなど何にも起こらない……ということが、僕の人生での一番の目標だからね……。」
いまじいじがH君と話していることは、たぶん、この教室にいるクラスの仲間たちには、すべて聞かれてしまっているのではないだろうかと思う……。
べつにおかしなことを話しているわけではないし、聞かれては困るようなことを話しているわけでもない……。
じいじにとっては心からそう思っていることを、H君に対して話しているだけなのだ……。だから、これをもって他の皆にあれこれと言われてしまったとしても、じいじにとってみればそれはどうでもいいことなのだ。
じいじは、どこかの誰かさんのように素早い変わり身が利くような、器用な生き方ができるような人間ではないと思っている……。
だからじいじは……放牧地でのんびりと草を食んでいる牛や、田畑でゆっくりと働く農耕牛のように、一見のろのろとしているようでも一歩一歩を着実に歩んでいくことができるようにしたいと望んでいた。
だから、間違っても競走馬のような華々しい生き方がしたいと望んでいるわけではないのだ……。
ごくごく普通の人生を過ごして、静かに去っていくことができればそれが一番よくもあり、気楽な人生なのではないのだろうかと考えている……。
……だから……。
……他人と比べて、少しでも良い生活ができて、少しでも重要な地位を得ることができる……。
……そして、余裕がたっぷりとある人生を過ごしていきたい……。
……できれば、世の中のことをたくさん知って、それを生かして誰よりも自由に暮らしていきたい……。
……日本だけではなくて、世界に出て自分の力を試してみたい……。
……たまには、日本では見ることができないだろう、異文化や異なる生活習慣が存在することを自分の目で見たり確かめることもしてみたい……。
などなど……そういうことについての一切には、じいじにとって今は……あまり興味がないのだと思っている……。
だから、今の時点でじいじにとっての必要で不可欠なものは、普通自動車免許だということになるのだろうか……。
その理由は、大きくて豪華な装備の車を乗り回したい……ということではなくて、当面の仕事において車の運転が必要になった時には、運転免許証が無いと困ってしまうだろうから……ということだった……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




