二千六百二夜、じいじの高校生生活 1230 三年生 185 三学期から 4
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──もともと学校の敷地自体が丘の上なのに加えて、三階建ての新校舎の三階がじいじたち三年生の教室なのだ……。
それに、いくら周囲に小高い丘があったとしても、この地はさらに小さな峠のような場所にある学校なのだ……。
周囲のほとんどの眺めがさえぎられていたとしても、南西の方向だけは見通せる部分が残されていた……。
「……なに黄昏てるんだよ、怠け者クラス委員長……。」
H君が寄ってきた……。
「……僕的には、怠けているわけではないんだけれどね……。
……それに……もともと僕がやりたくてクラス委員長なんかを始めたわけではないからね……。」
「……だったら、名前が出てきた最初の時に断ったらよかったのになあ……。」
「……いや……僕的には、なんで僕なんかの名前が出てきたのかよくわからなかったから……。
そのショックで固まっていたのと、なんでなのかを考えているうちに議事を進められてしまったんだよ……。
それに……まさか卒業式で、卒業生代表で答辞まで読ませられるとは思ってもいなかったからねえ……。
そんなこと僕にさせたら、この前の立会演説会の二の舞になってしまうだろうしね……。
高校生生活三年間の最後の最後でふざけられてしまっては、みんなが困るだろう……。
まじめな人たちにとってみればそんな奴は、厳かであるべき卒業式をぶち壊した、とんでもないバカ者だということになるのだろうしなあ……。
そんなバカ者をクラス委員長として選んだというこのクラスのみんなにも、拭い去れないシミが付いてしまうと思うんだよ……。
きっとクラスのみんなにとっても……僕という存在自体が、一生の中でも一番の黒歴史として記憶されることになってしまうだろうからねえ……。
二度と繰り返すことができない貴重な青春の光輝く歴史の一頁に、消すことができないような汚点を刻み込むことになるだろうからねえ……。
でもまあ……心配なんかをすることはないさ……。きっと、優秀な副委員長がうまくやってくれるだろうと思うよ……。
学校の生活指導の教諭や、クラス担任の教諭にしても、もうすでに対処方法への考え方は決まっているだろうからね……。
……後は、僕自身が卒業式でおとなしくして居さえしていれば、すべてを彼らの計画通りに運ばせることができるだろうと考えているだろうからね……。
何も心配などする必要などないよ……。」
「……いや……俺が言っているのは、お前自身がそれでいいのかっていう話なんだがなあ……。
……なんなら、天井から垂れ幕でも落としてやることもできると思うんだけれど……。」
「……ハハハ……それはありがたい話なんだけれど……。
でも僕は、何もする気はないよ……。
僕のめざすのは、さっさと学校を卒業をして、近所の会社で地味に働いて、ゆっくりと歩いていきたいと思っているだけだからね……。
僕の一生には、変わったことなど何にも起こらない……ということが、僕の人生での一番の目標だからね……。」
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




