二千五百三十七夜、ばあばの社会人生活 128 ばあば就職する 128 印刷会社 101
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
「──……今は、焦らなくてもいいわよ……。
あなたが写植の仕事に慣れてきた頃には、山盛りのお仕事が押し付けられるようになるかもしれないのだから……。
だからね……今はまだのんびりと、言われたとおりの勉強をしておきなさいな……。」
なんだかIさんに、ばあばの心の中を覗かれてしまったようだった……。
ばあばはきっと、盛大に苦笑いを浮かべていたのかもしれない……。
……ばあばは、メインプレートの文字盤の配列表のコピーを、昨日からKさんとの勉強に使っていた机の上に置いた。
そして、ばあばは、Kさんが座っていた場所は空けておいた……。
ばあばは、昨日ついていた、教えてもらう立場の位置に椅子を持ってきて、そこへと座った……。
そして、配列表のコピーを広げたものに指を指しながら、──イッスンノハバナベブタシンニュウワハコガマエ……ユミトカタホコヨツメイトクサ……イヌノアシウマノホネゲツカスイモクキンド……。
「 一寸の巾、鍋蓋 進入は匣 がまえ、刀抜く人、雁は山里、大小の女子、口言い心に手、弓と片戈、四つ目糸草、虫の羽 竹の里、辛車臼門、犬の足 馬の骨、日月火水木金土……。」
と、見出しの文字を押さえていく……。
そして、次には……ひらがなとカタカナの、あいうえお順の配列を……いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす…ん……と、いろは歌順で指先で選択していく……。
「色は匂へど 散りぬるを わが世たれぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず」
……ばあばが、後で聞いたところによると、メーカー直営の写植機械操作等の講習会では、毎日、講習が始まる前に、これらのタイムトライアルの結果を罫紙に表にして記録をするということだった……。
もちろん、その結果や経過については、本人が所属している会社への報告付きで……ということになっていたということのようだ……。
会社への報告云々はともかくとしても、表にして自分の状態を把握できるのはいいことなのではないだろうか……と、ばあばは思うのだ……。
ばあばも、これを早く教えてくれていさえすれば、自分で表を作って、日々の成果を確かめることくらいはやりたかったかもしれないなあ……と思う……。
ただ、ただ、だらだらと繰り返しているよりも、目標や成果が目に見えるようにしておいた方が、やる気には良い影響があることだろうし……。それに、満足感にも後押しができるような気がするんだ……。
それに、大きな街で行われるメーカー直営の写植機械操作等の講習会での、自分で満足ができるような成果が出るということは、ばあばの帰り道での ” ご褒美寄り道 ” への理由づくりにも貢献してくれていたかもしれないしねえ……。
そんなことを考えてしまうと、ばあばは、講習会へと行かれなかったということが、ちょっとだけ残念だったような気がするのだけれどなあ……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




