二千五百二十四夜、じいじの高校生生活 1191 三年生 146 二学期から 128
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──じいじは、最近ではこんなにゆっくりとできたことがなかったような気がする……。
なんだか……べったりと張り付いていたような心の疲れが、少しづつ薄紙が剝がされていくように軽くなっていくような気がする……。
コーヒーカップから立ち上る湯気の様子を眺めていると、今日はこの辺で作業を止めておこうかなあ……という気持ちになってくる……。
こうしたゆったりとした気持ちになれるのならば、版木に彫刻刀で手入れをしていくような作業も、悪くないかもしれないなあ……って感じるのだ……。
一時の間であっても、日頃の忙しない気持ちを落ち着けられるのであれば、今が何物にも代えがたい時間なのだろうと感じてしまうのだ……。
……その後、もう一度作業に取り掛かってから、また一休みをしたくなり始めたころには、おばあちゃんから夕飯の声が掛かった……。
今日も伯父さんの姿が見えない食卓になった。
この頃の伯父さんは、一度家を出てしまうと一か月ほどは家へと帰ってこられないような仕事の内容になっているらしいのだ……。
けれど、別に今までの仕事先が変わったというわけではないようだ……。
……トラック運送の会社の中だとはいっても、そこにはいろんな職場があるらしいのだろうとは思う……。
けれど、伯父さんが就いている職場というのは、長距離を走り回るような運送業務をしているところだということらしいのだ。
その職場それぞれには特徴があるようなのだ。
伯父さんは、道路事情に明るくて、それに、荷物や車などの事故やトラブルが少ないということがあるらしい……。
それに、伯父さん自身も、そこでの勤務を望んでいるということもあって、長距離トラックの運転手をしているということらしい……。
もちろん、長距離トラックの運転手が、厳しい仕事の内容にふさわしいように、それなりに収入が良い……ということもあるのだろうとは思う……。
……伯父さんがたまに帰宅をしたときには、家の中の雰囲気がいつもとは違っている……。
なので……伯父さんと顔を合わせることができなくても、伯父さんの在宅を知ることはできる……。
ただ、伯父さんの休みが日曜日のような休日に重なるということが稀なので、長い時間顔を合わせることがほとんどできないということのほうが多かった……。
……この頃のトラックの運転手は、若いころはまだ無理がきくようだった。けれど、厳しい業務についているうちに腰などを痛めてしまって、長い間続けることができなくなる……ということが多かったようだ……。
その主な原因は、まだフォークリフトなどの荷物を積み下ろしをする機械が普及していなかったということがあげられるだろう……。荷物の積み下ろしがすべて手作業……ということが常識だったのだ。
大型トラックの運転手は、この頃、ほとんどの積み下ろしを、運転手本人の手作業で行っていたということらしかった。
当然、トラック運転手という職種は、体を痛めてしまうことが多い……ということが常識であったようだ……。
そのために給料が比較的高額でないと、大型トラックの運転手のなり手が来ないという、就職事情があったようだ。
伯父さんの洗濯物が干してあるところをたまに見かけると、腰の周りに付けるコルセットのような補助具が干してあるのが目立つのだ……。
なので、それで伯父さんの在宅を知ることができる……ということもある……。
しかし、たいていの場合には、じいじは学校へ行くので、ほとんど顔を合わせることがないうちに、伯父さんのお休みが終わってしまう……ということが多かった……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




