二千五百二十一夜、ばあばの社会人生活 120 ばあば就職する 120 印刷会社 93
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
──ばあばにとっては初めての、今までの学校などの経験からは完全に離れてしまっている、新しい職場のことを聞きたそうにしているようだった……。
ばあばもお父さんに対して、今度の会社でのことを特に隠したいような気持もなかった……。
なので、おとうさんにとって面白かったかどうかはわからなかったけれど、ばあばは今日一日に会社で起こったことを話して聞かせた……。
お父さんは、その内容などのことについては、口を挿むようなことがなかった。
ただにこにこしながら、黙ってばあばの話を聞いてくれていた……。
「……いろいろと親身になって教えてくれたり、相談に乗ってくれそうな、お姉さんのような人が身近にいて安心そうじゃないか……。
仕事などのことでわからないことがあったら、遠慮なく彼女に相談するのは、お互いに信頼ができるようになる近道かもしれないねえ……。
……頑張りなさい……。」
お父さんからは、そんなことを言われた……。
そんな食事の後は、食事前までの作業の続き……今日会社で習ったことについてのまとめなど……をしていく……。
一通りその作業が済んだばあばは、今度は、これから使っていくことになる機械の文字版の配列を憶える作業をすることにする。
具体的には、例の呪文みたいな不思議な文章を暗唱しながら、今日支給されたメインプレートの文字の配列表の中から、見出し文字を拾い出す作業を始めた……。
──イッスンノハバナベブタシンニュウワハコガマエ……ユミトカタホコヨツメイトクサ……イヌノアシウマノホネゲツカスイモクキンド……。
そんな呪文を呟きながら、メインプレートの文字配列表から、一、寸、乃、巾……大、小、女、子……虫、羽、竹、里……犬、足、馬、骨、月、火、水、木、金、土……と、指先で指していく……。
そして、次には……ひらがなとカタカナの、あいうえお順の配列を……いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす……と、いろは歌順で指先で選択していく……。
日本語の文字の構成は、漢字よりもカナ文字のほうが圧倒的に数が多いということらしい……。
なので、少しでも早く文字を拾うということを考えると、いちいちその文字がある場所を考えることなく、カナ文字を自動的に拾えるようにならないと、文字の選択速度を上げることができない……ということらしい……。
だから、この作業は……何よりも先にカナ文字の配列に慣れる……ということの練習になる、ということらしい……。
……こうして、ばあばのお仕事に対する自主的な練習は、この作業に飽きてしまって、眠くなるまで続いた……のかな……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




