二千五百二十夜、じいじの高校生生活 1189 三年生 144 二学期から 126
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──ごく普通の線にしても、一定の太さや幅を彫り出すことが難しい……。
だったら……じいじは、彫り上がった後の彫り跡の勢いなどの、他の要素を面白がっていたほうが楽しいと感じている。
あまり切れない彫刻刀を使っていると、彫り残してしまったり、線や面の輪郭を切り飛ばしたり、彫り過ぎてしまったりもするのだから……。
そんなことをいちいち気にしていたら、版画など創ろうとしないほうが、よほど心の平安にはいいような気がする……。
……じいじは、机に向かう……。
じいじが持っている彫刻刀は、刃の種類が五種類ある、ごく普通の五本セットのものだ……。
じいじは、その中でも、一番鋭い形をしている、切り出し刀という彫刻刀を最初に握った……。
この形の彫刻刀は、刃先が鋭い三角形をしている。その三角形の長辺部分に刃が付けられている。
これとよく似ている形のものは、デザインカッターが似ているだろうか……。
このデザインカッターは、切り絵だとかの様々な細かい部分への手入れに使われることが多い。
……じいじは、この鋭い彫刻刀を使って、版画の原版で彫り残す部分……色として残される部分……の鋭さを確保するために、すべての線や面に対して周囲へ切り込みを入れるために使っている……。
版木に彫り残される線や面の部分の断面が台形になるように、彫刻刀での切れ目を入れる角度を間違えないように切り込みを入れていく……。
例えば、一本の線の両側に、斜めに切り込みを入れて、しっかりとさせるとともに、線の輪郭をくっきりと際立たせることができるだろうと思うのだ……。
この作業によって、色と空白の部分の境目がくっきりとして、かつ鋭く表現できるとじいじは信じているからだ……。
じいじが版画を作成する際に、一番手間がかかるのがこの作業ではないのかなあと、じいじは考えている……。加えて、一切手を抜くことができないから、余計に大変だということもある……。
でも、この作業ができてしまえば、後の作業は、ひたすら空白になる部分をさっさと彫り進めて、除けていくだけの単純作業となる……。
じいじは、十ワットの細い蛍光管が付いている卓上スタンドの明かりを頼りに、何も考えずに作業を進めていく……。
でも、さすがに連続で作業を続けていると目が疲れてくる……。
じいじは、部屋の空気の乾燥防止のために、ストーブの上に平底のやかんを置いていた……。
それをそのままの状態で見もしないで放っておくわけにもいかないだろうし……。
だから、やかんの様子を確かめるとともに、ストーブの火加減を見ておく……。
やかんのお湯は、シャンシャンとは沸いてはいなかった……。けれど、触れないくらいにはお湯になっている様子だった……。
まだ夕ご飯前だったのでどうかなとは思ったのだけれど……。でも、一息入れるためにも薄いコーヒーを作って、じいじは飲むことにした……。
じいじの椅子の後ろにあたる場所に置いてある本棚には、お茶用のセットが置いてある。
なので、コーヒーカップにインスタントコーヒーを茶さじ半分くらい入れて、それでじいじは我慢をすることにした……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




