二千五百十五夜、ばあばの社会人生活 117 ばあば就職する 117 印刷会社 90
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
──そんなことをあわせて考えてみると、月の資源が云々などということは、当分先の話になりそうだなあ……と、そういう判断になりそうだった……。
……いやいや……これはばあばが考えたことではなかった……。
ばあばが前の座席で外を眺めているときに、高校生の男子のグループが、バスの一番後ろの席の辺りで盛んに討論をしていた……という、そういう話だった……。
それをばあばが、さも自分で考えたように話をしてみた……。
……と、そういう……話題の横取りをしてみただけ……という、ずるいことをしてみた……と、そういうことなのだ……。
「……おかえりなさい……どうだった……。
今日は、新しい会社での最初の日だったのだし……。いろいろと気を遣うこともあったんでしょう……。
お風呂を沸かしてあるから、先に入っちゃいなさいよ……。」
ばあばが家へと帰ってくると、最初に声が掛けられたのはそんな言葉だった……。
「……うん……仕事の内容のことで少しまとめておかなくてはいけないこともあるので、お風呂は後でいいよ……。」
まだお父さんが帰ってきてはいないようなので、先にお風呂を使ってしまうということがなんとなくだけれど、気が引けていた……。
それに、ばあばは、本当に今日の仕事のことで忘れないようにまとめておきたいことがあった。
確かに、お風呂でゆっくりとしてからでも悪いことではないとは思った。
けれど、お父さんより先にお風呂を使うということに対する抵抗感とともに、今日一日で憶えたことについて、今のうちにさっさとまとめてしまっておきたかったということも確かなことだった。
同じ職場で働くことになったIさんからは、今日一日で教えてもらったことについては、これから毎日の仕事の中で、ゆっくりと憶えていけばよいことなのだ……とは言われている。
でも、ばあばは、とてもそんなのんびりとはしてはいられないような気持ちだった……。
あとから教えてもらうことになったこの職場の責任者のKさんは、そんな雰囲気ではなかったように、ばあばには感じられたからだ。
もちろん、立場上のこともあるのだろうとは思うのだけれど……。
しかし、ばあばには、Kさんがばあばのことを見る目の中には、ばあばに対する無関心さと、なにか冷たい感情が垣間見えるような気がしていた……。
それがKさんの抱いているどんな感情からくるものなのかについては、ばあばにははっきりとわからなかった。
でも、ばあばについて仕事上では大きな期待がされていない……ということについてはいいとしても……。でも、これから先も、ずっと同じような考えをKさんから持たれ続けるのは、ばあばは嫌だったのだ……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




