二千五百十四夜、じいじの高校生生活 1186 三年生 141 二学期から 123
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──じいじが外に出て、倉庫の扉を開けてみる……。
扉を開けて、出入り口を入ったすぐのところには、夏の間にはその姿がなかったドラム缶が、いつの間にか鎮座していた……。
これはたぶん伯父さんが、冬の間灯油を入れておいて、それを小分けにしてストーブなどの暖房用に使うために、ここへと置いたのだろうと思う……。
日頃は存在感が薄い伯父さんなのだけれど、こんな時にはその存在がありがたく感じてしまう……。
じいじは、そのドラム缶の奥に積み上げられてある、薪の束を二つ持ち上げて、薪入れの木箱の中へと入れておいた……。
「……おばあちゃん……もう少しでお風呂が沸くと思うので、後は任せてしまっていいかなあ……。」
……ゆっくりと、薪を燃やして、その炎の揺らめきを眺めていたいのはやまやまだった。
けれどじいじは、急ぎはしないものの、版画の原版を仕上げてしまいたかった……。
それに、さっきからカレーライスのいい匂いにお腹がグウグウと鳴って、じいじはここに居るのが耐えられそうもなかった。
「……ああ……今日も助かったよ……。
……天気予報では、これから冷えてきて、雪がちらつくかも知れないって言っていたからね……。
ストーブを点けて、部屋をあっためておいて、体を冷やさないようにしていなさいねえ……。」
……じいじは、生返事をおばあちゃんに返しながら自分たちの部屋に歩いて行った……。
……お風呂が据え付けてあるところは、本来であれば家の外にあたる場所だった。
そこには屋外水栓と簡単な洗い場があるだけだったところへ、お風呂場の設備を据え付けて、周りをしっかりと囲った形になっている。
もともとは台所と屋外との直接つながっている裏口だったところが、台所とお風呂場の仕切りの出入り口になっているわけだ……。
そこに、もともと設けられていた引き戸が、お風呂場と台所を仕切るガラス戸になっているということになる……。
じいじは、そこのガラス戸をくぐって、台所にいるおばあちゃんの後ろを通り過ぎる……。
そこには、玄関と台所を行き来できるくぐり戸があった……。
そのくぐり戸には、扉も引き戸も付けられてはいないので、この家では、長い玉暖簾を下げて、目隠しの代わりにしていた……。
でも、玉暖簾は日常使いには邪魔になる……。なので、片側にひとまとめにしておいて、カーテンの結束ベルトのようなもので、まとめられていた……。
……じいじは、伯父さんたちの家族が使っている居間を避けるようにして、玄関から奥の四畳半を抜けていく……。
そして本来は北側の窓を、そのまま使っているくぐり戸を乗り越えて、自分たちの部屋に入っていく……。
……現在、おばあちゃんが台所仕事をしている母屋とは違って、そこは外と同じような寒気が淀んでいた……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




