二千五百六夜、じいじの高校生生活 1182 三年生 137 二学期から 119
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──今の時期、お正月の年賀状作成用に版木が仕入れられている頃だろうとは思うのだ。
けれど、それも確実だとは言えない……。
だから、多少色が変わってしまっていたとしても、確実に版木が手に入ったのは幸運だったのかもしれない……。
アルバイトが始まってしまう前には、これで確実に版画を仕上げてしまえる見通しが立ったので、良かったかな……。
……今日は、このままさっさと家へ帰って、用事を(お風呂焚き)済ませた後に、下絵を薄紙に映して版木に張り付けるところまですませておければ都合がいいよね……。
そうすれば、明日から彫り始めることができるようになるだろうしね……。
……帰宅したじいじは、さっさと着替えた後に風呂桶をサア~~~と洗ったあとで、水を溜め始めた。
「……ああ……ケーちゃん、悪いんだけれど……今からすぐにいつものカレールウを買ってきてくれないかねえ……。まだ残っていたつもりなんだけれど、どうも足りなさそうだからねえ……。
いつもの八百屋さんに預けてある掛通帳で買ってきてくれればいいからねえ……。
今からすぐに行ってきてくれないかねえ……。」
「……うん……わかったよ……。
いま、お風呂に水を溜めているから……忘れないように水を止めておいてね……。」
じいじは、すぐに部屋に戻って、ジャンバーを上着の上からひっかけて、自転車で走り始めた……。
掛通帳というのは、表紙に ” 通帳 ” と大きく印刷がされている、B6版くらいの大きさの白い表紙の、大判の手帳のような帳面だった。
その使い道は、特定のお店……主に日常使いの肉や野菜、魚や雑貨などをまとめて買うことができるような、近所のお店で使う、月末支払いの掛け売りの記録帳だった。
クレジットカードなどなかった時代に、月末にまとめて清算をするための、買い物記録帳というようなものだ。
通常は、お店と利用者がお互いに一冊づつもっているのが理想なのだろうとは思う……。
しかし、じいじたちが利用をしている八百屋さんでは、一冊の帳面を交互に預かって、それをお互いに共用で利用をしていく……という形をとっていた……。
もちろん、余計な書き込みや消去がされないように、お店と利用者がお互いに確認ができるように交互に預かるということがされていたのだけれどねえ……。
もちろん、その帳面をもとにして、お互いに他のノートに控えをしておくこともできるのだろうからねえ……。
当然のことながら、ご近所やお得意様としての信用に基づいていなければ成立しない方法ではあるのだろうけれど……。
「……こんばんわ……。」
「……おや、どうした……。今日は珍しい人が来たもんだねえ……。
今日もおばあちゃんが、お昼過ぎに買い物に来てくれていたんだが……。
何か足らなかったのかい……。」
「……なんだか、あるつもりだったカレールウが足らなかったみたいだよ……。」
「……ああ……こんばんはカレーライスかな……。いいねえ……。
……うちもこんばんはカレーにすっかなあ……。
じゃあ……いつもの、バーモ○トカレーの甘くちでいいのかい……。」
「……それでいいよ……。特にこれにしろっていうことは言われてないからね……。」
「……じゃあ、通帳に付けとくからな……まいどあり~~~~。」
……面倒くさいお金でのやり取り……小銭のやり取りだとか、お釣りの計算などや、小銭の準備などを省くことができて、便利だったのだけれどなあ……。
これも、のんびりとした日常の風景の一つだったのだろうと思う……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




