二千五百三夜、ばあばの社会人生活 111 ばあば就職する 111 印刷会社 84
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
──写植のお仕事の中でも一番文字数が多いのは、新聞や広報関係のお仕事ということになるのだろうと思う……。
そうなると一般的に言って、文字の大きさは三ミリ角から三 . 二五ミリ角ということになるのだろうと思う……。写植でいうと、十二級とか十三級の大きさ……ということになります……。
印画紙の修正は ” 膜面はがし ” と言って、印画紙の表面をカッターナイフで四角く、浅く(……切り落とさなくて、はがせる程度に……)切り傷を入れる……。そのあとで、その部分をピンセットなどで印画紙の表面とベースになる紙の間ではがして、取り除くことから始まるのです……。
そして、同じ手順ではがした修正する文字を、その部分へと正確に貼り込む……という手順になるわけなのです……。
なぜそんな手間をかけるのかというと、版下をフィルムにするときに貼り込む印画紙の厚みによって切断面の影……が出てしまうからなのだそうだ……。
そうなってしまうと、印刷用の刷版を作るときに、そのまま切断面の線が印刷されてしまうという結果になる……というわけなのだそうな……。
それを防ぐためには、製版部門の修正係の人が、オペーク液(……フィルムに出てきたピンホールを塗りつぶして、修正するための赤茶色の液のこと……。乾くと光を通さなくなるらしい……。)で、一つ一つ塗りつぶしていかなくてはならなくなるらしい……。
そうすれば、確かに修正はできるということなのだけれど……。
しかし、考えてほしい……。
オペーク液でピンホールを塗りつぶすためには、ライトテーブルの上で、下から光を当てた状態で、フィルム上の光っている余計な光点を一つ一つ塗りつぶしていかなくてはならない……という、神経を使う大変な作業が必要になるのだという……。
その作業は、小筆の中でも一番細い面相筆を使って作業をするらしい……。
だから大丈夫かな?……といっても、三ミリ角の文字の間や周囲に光っている線を塗りつぶすのは、かなり神経を使うだろうし、目にもよくないような気がするのだけれど……。
その負担を彼らに押し付けたり、手間を掛けさせ続けるということは、製版部門の修正係の人に、ばあばは恨まれてしまう……という結果を招いてしまうような気がするのだけれど……。
それに第一、仕事の効率が大きく落ちてしまいそうな気がするのだけれどなあ……。
そうなれば、会社の上層部からも注意をされるだろうし……。その後の状態によっては、反省も努力もないあなたは、明日から来なくてもいいですよ……って、解雇になってしまうかもしれないと思う……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




