二千四百九十六夜、じいじの高校生生活 1177 三年生 132 二学期から 114
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
「──……お邪魔をします……。
美術科の展示の見学に来ました……。
……しばらくの間、デッサンをしているところを見せていただいてもいいですか……。」
さっき扉の外から声を掛けた時にも大きな反応はなかった。
なんだかじいじには、無視されているようにも感じたのだけれど……。
今回も、デッサンをしている彼が反応をしたようには、じいじには思えなかった……。
……でもまあ……ダメだと言われているわけではないのでね……。
じいじは、ゆっくりと彼の後ろへと回り込んで、イーゼルに掛かっている、彼の石膏像のデッサンを覗き込んだ……。
イーゼルに掛かっている画板に張り付けられてあった木炭紙は、B2版というのだろうか……よく使われる紙の大きさの四面分の大きな紙が張り付けられてあった。……たぶん、木炭紙 大 650×500 ミリメートルの紙の大きさなのだと思うのだけれどなあ……。かなり粗目の表面の感じがした……。
デッサンの対象として目の前に置かれてあった胸像は、じいじには縁がなさそうな大きなもので、耳の上に小さな羽根が付いている……という特徴的なものだった……。
たぶん、ヘルメス……というような名前の人物の胸像なのではなかったろうかと思う……。(……たぶんそうなのだろうとは思うのだけれど、じいじはあまり詳しくないので間違っているかもしれない……。)
大きな紙に、ほぼ原寸大に描かれているそのデッサンは、まだまだ序盤だったのだろうか……短い直線の集合の粗密で描かれていた……。
もうそれだけでも、じいじにとっての素描画としては、完成しているのではないかと感じさせるような出来上がりに見えた……。
でも……これから、指や手でこすったり、食パンの切れ端でこすったりして仕上げていくのだろうとも思えた……。
ついつい……自覚がないままに、じいじはため息を漏らしてしまっていたのかもしれない……。
その時、黙ってイーゼルに向かっていた彼は、ちらっとじいじの方へ、一瞬だけ視線を向けたかもしれない……。
じいじは、まだまだいつまでもそこに立って、彼のデッサンを見ていたかった……。
でも……じいじが、ただ突っ立ってそこにいるだけで、彼には迷惑になるのだろうかな……ということが、じいじにはわかるような気がした……。
「……ありがとうございました……。
……お邪魔をしてしまいました……。すみませんでした……。」
じいじは、彼がどこの大学で学ぶのだろうかと、気にはなったけれど……。
じいじには、とても聞く勇気がなかった。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




