二千四百九十四夜、じいじの高校生生活 1176 三年生 131 二学期から 113
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──この頃のじいじは、一生を自己表現に費やす気持ちが、急速にしぼんでしまっていたような気がする……。
これは、じいじ自身が、無邪気な子供のような考え方から、自分が置かれている現実や状況が少しは理解ができるようになってきたからなのだ……ということなのかもしれない……。
「……こんにちは~~~。
……失礼します……。」
なんだか……人気がないように見える美術科教室へと、じいじは足を進めることにした……。
下足箱が置いてある玄関の奥にはもう一つの、両開きで大きな荷物の出し入れに配慮がされている、ガラス張りの扉が設けられてある……。
じいじは、まだその扉を開ける前に、中の様子を眺めてみた……。
その先には、授業用に使う大きな机がいくつも据え付けてあって、正面の壁には黒板が取り付けられてある……。
ここまでは、じいじが毎週通っていた美術科教室だった。
黒板と机の間、美術科教諭が行き来して、様々な解説や指導をするためのスペースがあるところに、誰かがいた。
彼は、イーゼルに画板を載せて、そこには特大の画用紙が拡げられているようだった。
彼の前には、胸像の石膏像が置かれてあって、今盛んにスケッチをしているようにも見えた……。
じいじは、そういえば……と気が付いた。
じいじが美術科を選択教科として取った時には使ったことがなかったのだけれど、確か木炭紙というものがあったと聞いたことがあった。
その木炭紙は、木炭でデッサンするために作られている特別な紙で、そのためのいろんな特徴があるのだということらしかった……。
──うわ~~~本格的な用具を使っているから、きっと美術関係学校への進学組なんだろうなあ……。
いったいどれほどの腕前なのか見てみたいなあ……。
じいじは、できるだけ彼を驚かせないように、大きな音を立てないように気をつけながら、扉をくぐって教室の中へと入っていった……。
「……お邪魔をします……。
美術科の展示の見学に来ました……。
……しばらくの間、デッサンをしているところを見せていただいてもいいですか……。」
さっき扉の外から声を掛けた時にも大きな反応はなかった。
なんだかじいじには、無視されているようにも感じたのだけれど……。
今回も、デッサンをしている彼が反応をしたようには、じいじには思えなかった……。
……でもまあ……ダメだと言われているわけではないのでね……。
じいじは、ゆっくりと彼の後ろへと回り込んで、イーゼルに掛かっている、彼の石膏像のデッサンを覗き込んだ……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




