二千四百九十三夜、ばあばの社会人生活 106 ばあば就職する 106 印刷会社 79
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
「──……先月の中旬だったかしら……私の家がある町に入ってきた新聞折込の募集チラシを見て応募したんですよ……。
これまで私は、この町に来たことが一度もなかったので、右も左も何んにもわからなくて……。
今でも、商店街や食事ができるところがどこにあるのかも、まったくわからないんです……。
これから先もしばらくは、家と会社を往復するばかりで、この町のことを何も知らないままになってしまいそうですよねえ……。
この町には、お友達が一人もいないんです……。ですから、用事もないことだし……何もわからないのは仕方がないことなのかもしれないのですけれど……。」
休憩室にいた人たちは、うんうんと同意をするように頭を振っている……。
つい今しがたまで、個人情報に興味津々だった人も、ばあばがこれ以上話す気がないのに気が付いたのか、おとなしくなった……。
「……まだまだ私がお役に立てるようになるまでには、相当に時間が掛かりそうです……。
でも、このお仕事を始めたかぎりは、できるだけ早くお役に立てるように頑張ります……。」
ばあばは、ここまで話しておいて、後は、他の皆さんの話を聞くことに専念することにした……。
ばあばは、休憩室でご飯を食べていながら周囲の話などを聞いていて、気が付いたことがあった。
この会社の中では、Iさんの立ち位置が、それほど重視されてはいないようなところにいるのかな……という感じがしていた。
いや……重視というよりも……親しく話をする相手が意外と少ないのかもしれないのかな……という気がした……ということなのだけれど……。
もちろん、一般の従業員の間での話と、会社での立場が上の人たちとの間での評価には、大きな違いがあるのだろうということは知っている……。
でも、何となくだけれど、Iさんが親しく話している人が、今のこの場にはいないような気がしたからだ……。
Iさんは、会社の中の人間関係をあまり重要視しなくてもいいのだ……。
どうも……そういう考え方に、Iさんは立っているのかもしれない……そう、ばあばには感じられたということなのだ……。
でも、すべてのお付き合いを拒否している……というわけでもないみたいだった。
なんだか……だれとでも普通に話などはするのだけれど……でも、それ以上のお付き合いには興味がない……という感じなのだろうかな……。
ばあばも、それに似たような感じ方をしていたので、ばあばとIさんの間では、お互いに過干渉にならなくてちょうど良いのかもしれないなあ……と、ばあばは考えた……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




