二千四百八十一夜、ばあばの社会人生活 100 ばあば就職する 100 印刷会社 73
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
「──……これはね、これから寒くなってきて、現像液の液温が上がらなくなってきたときに、現像管理がより正確にできるように、現像液の液温を一定に保つためのものなのよ……。
そうしないと、うまく現像濃度を上げることができなくなってきてしまうからね……。
これからまだまだ寒くなってきて、現像に普段よりも時間が掛かってしまうようなことになる前に、準備をしておかなくてはいけないからね……。」
Iさんは、そう言いながら、固く絞った雑巾で、きれいに拭ったそれを、現像液のステンレスバットの下に敷き込んだ。
「……今はまだ、現像にそれほど時間が掛かってはいないので、電源は入れなくてもいいかもしれないわねえ……。
でも急にこれ以上寒くなってしまうと慌てることになるかもしれないからねえ……。
準備だけは早いほうがいいだろうからね……。」
こうしてばあばは、Iさんの動きを見つめながら、これからの冬の支度を整えていくのを、縁で眺めさせてもらった。
そろそろ、ばあばが人生初めての写植機で採字をしたその成果を、定着液から水洗いに移すことができるようになったらしい……。
ばあばは、Iさんの指示があったので、主に定着液用に使っている竹ピンセットを使って、定着液の中に浸け込んであったこざこざを、まとめて水洗いの方に移動させた……。
もちろん、明るくなっているところで、ばあばの初めての成果を、よく確かめることも忘れない……。
──わたしは、ああです。よろしくおねがいします。
……わあ~~~……ちゃんとできてる……。
……ちょっとだけだけれど、嬉しい……。……うん……かなり……かなあ……。
……ばあばは、心の中で……ムフフフ……と笑んでいた……。
ばあばの一生の間、この印画紙を記念として残しておこうかな……とは思わない……。けれど、当面のあいだは残しておきたいかなあ……とは思う……。
そして、ばあばとIさんは、暗室を出てそれぞれの機械のところへと向かっていく。
今日のところは、たまたま写植のお仕事が一区切りついていたらしい……。
そのせいもあって、Iさんがばあばに付きっ切りで教えてくれることができているらしい。
この写植の責任者のKさんがここに居ないということもあって、割とのんびりとできているということもあるようだ。
Kさんは、急ぎのお仕事のお手伝いとして、二階の版下部門へ行って、貼り込みの仕事をしているらしい……。
そうでなければ、割とうるさく口出しをしてきて、ゆっくりとはできていないかもしれないということだった。
まあ、ばあばとしては、多少年齢が離れていたとしても、同性の人から丁寧に教えてもらえた方が身につくと思うのだけれどなあ……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




