二千四百七十五夜、ばあばの社会人生活 97 ばあば就職する 97 印刷会社 70
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
──私は詳しくは知らないのだけれど、なんだか使用済みの定着液の中からは、銀が取れるということらしいのよね……。
だから、再生業者だか何だかの人が、大きなタンクを積んだトラックで来て、それらを引き取っていくということらしいのよ……。
だから、そのためにも、疲労して限界が来ているような定着液を、見分けなくてはいけないということらしいのよ……。
その際の、ポリタンクに移しておくための目安を測るためとして、流しの下に比重計と大きな計量カップが置いてあるから……。それを憶えておいてほしいかな……。
今回、Bさんがたくさん定着液を使ったようなので……。この際、定着液の疲労度を測っておいたほうがいいのかもしれないわねえ……。
あーさんの印画紙を定着し終わった後にでも、二人で調べてみましょうか……。」
ばあばは、印画紙を定着液の中に浸けこんだ後、手持ち無沙汰になってしまっていた。
Iさんは、この後、定着液の疲労度を測るといっているので、当面はすることがないのだ……。
ばあばは、定着液の中に浸かっている印画紙を表に向けてみた。
もちろん、暗室用の赤色灯では何の変化も見ることなどできない。なので、印画紙の箱の始末をつけてしまってから暗室の中は、蛍光灯が点けられていた。
写真の焼き付け加工がされた印画紙でも、写植で印字済みの印画紙でも、定着液の中にいったん入れてしまえば、明るい灯のもとでも見ることができるということだった。
ばあばは、なんとなく心配な気持ちがあったのだけれど……。
でも、Iさんが言っていることなのでそうなのだろうと、得心した。
明るい灯のもとでの印画紙は、表面はわずかに緑がかった黄色い色をしているように見えた……。
印画紙の裏側は、普通の紙のように見えた……。
しかし、後になってから分かったことだけれど、写植用に使っている印画紙は、この頃、バライタ紙という特に白さが強くなるような加工がされている紙が使われているということだった。
ただ、紙には違いがないので、乾かすのには時間が掛かるということ……。
そして、乾燥の際に取り扱いが悪いと、変なふうに紙自体が変形してしまう……ということがあるというのは仕方がないのだろう……。
その辺のところの問題を解決するために、後になってから、いろいろと工夫や改良がされたのだろうとは思う……。
例えば……現在主流となっているのだろうと思われる、RCペーパー【Resin Coated Paper】『バライタ紙の弱点(薬品の吸収、乾燥時間)を改良したもので、ベースとなる紙の両面をポリエチレン等の樹脂で挟み込んだもの。』に、切り替わっている……というようなことだ……。
……ばあばが、定着液の中に沈んでいる端切れの印画紙に、顔を近づけたりして眺めていると、Iさんから声が掛かった……。
「……定着は、時間があまり掛からないようなものを使っているのだけれど……。それでも、割と時間が掛かってしまうからね……。
それに、定着の時間が足りないことよりも、少しばかり多すぎるかな……くらいのほうが失敗が少ないと思うから……。
印画紙はこのままにしておいて、もう一度、小さな印画紙で試し打ちをしましょうか……。』
そういうことで、印画紙を定着液の中に浸けておいて、次の練習作業に取り掛かることになった……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




