二千四百六十七夜、ばあばの社会人生活 93 ばあば就職する 93 印刷会社 66
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
「──……ああ……。やっぱり……。」
暗室の棚の上に置いてあった、端切れの印画紙が入れたあった箱は、棚の上で半分だけ開けっぱなしの状態で放り出されてあった。
箱の中の遮光ビニール袋は、ちゃんと口が閉じてあったので、よほどのことがなければ、袋の中にまでは光が入ってしまうようなことはないだろうということなのだけれど……。
それよりも、ばあばは驚いたことがあった。
あれだけたくさんあった印画紙の端切れがほとんどなくなってしまっていたのだ……。
それに加えて、作業台の上には、棚の下に置いてあったのだろう写真の引き伸ばし機が、デデン……と据わり込んでいた……。
「……ああ……まったく……使ったら使いっぱなし……。
口では殊勝なことを言うのだけれど、いつもこんなふうに抜けているというのか、忘れてしまっているというのか……。
彼は家でも同じようなことを繰り返しているのかしらねえ……。まったく迷惑な……。
これでは、Bさんの奥さんは、毎日、毎日、旦那様のしりぬぐいで忙しいでしょうねえ……。
Bさんの奥さんは、会社で知り合ったんだって……。社内結婚っていうわけよねえ……。
だから、Bさんの行動が、ちゃらんぽらんだっていうことはわかっているはずなのよね……。
……有能な奥さんで本当によかったんだか……悪かったんだか……。
でもこれが、わざとやってるのだとしたら、罪が深いわよねえ……。」
Iさんの独り言めいた呟きが止まらない……。
……しかし、押し切り式の紙の裁断機も、刃が上げたままになっているし……。これは、見ただけでもわかるのだけれど、危険極まりないだろう……。
何かの拍子に、指を切断……というところまではいかなくても、大きなけがに結びつかなければいいのだけれど……。
だいたいこの器具は、使い終わったら、ちゃんと手動刃を閉じた状態にしたうえで、刃が勝手に開かないように、止め金具で止めておかなくては危険だろうと思うのだけれど……。
暗室の中の整理整頓が済んだので、ばあばは、ドアをきちんと閉めて、暗幕を閉じていく……。
そして、ドラムケースのロックを外して……ばあばは、ドラムケースの蓋を開けて、印画紙の抑え板バネを外していく……。ここまでの手順は、Iさんに教えてもらった通りにしてきたはずなのだ……。
最後にばあばは、ドラムについている印画紙の止め金具を外して、印画紙を取り外した。
そして、小さな印画紙をつまみ持ったままで、Iさんに声を掛ける……。
「……現像をする準備ができましたが、印画紙を現像液に浸けてもいいですか……。」
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




