二千四百六十五夜、ばあばの社会人生活 92 ばあば就職する 92 印刷会社 65 未
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
「──……わかったわよ……。
でもねえ……暗室を使うってことをちゃんと私たちに伝えておいてくれないと、困ったことになりかねないから、それだけは気を付けておいてくださいねえ……。
今回も、けっこう危なかったのよ……。
私だったら、ノックして返事がなかったら、それ以上の考えなしにドアを開けてしまうと思うから……。
今回は、あーさんだったから声まで掛けてくれたんだからね……。
今までにも何回も同じことを注意をしていると思うんだけれど……。
それでもBさんは、これから暗室を使うってことを私たちへと言ってくれているほうが少ないんじゃないの……。」
Iさんは、真剣な表情で言葉にしていた。
「……ああ……。この部屋の皆が真剣な顔付きで機械に向かって仕事をしているのを見ると、邪魔をしてはいけないように感じるんだよな……。
そうなると、気後れがして、つい言い出したり、声を掛け難くなってしまうんだよなあ……。
……うん、でもまあ……これからは、Kさんか、あんたにちゃんと伝えるようにするからな……。
……じゃあな……そういうことで、悪いけれど頼むわ……。
……ああ……それから、水の中に浸かっている印画紙は、水洗いが済んだ頃に取りに来るから、そのままにしておいてくれればいいからな……。」
それまで黙って二人の話し合いを聞いていたばあばは、チラッとIさんの顔色を見てから話しかけた。
「……暗室はもう使ってもいいんですよねえ……。」
Iさんは、まだ何かを考えていたようだった。
それでも、フッと笑って、
「……こんどこそ大丈夫だとは思うのだけれど……。
でもねえ……なんだか嫌な予感がするから……。
……しょうがないから、二人で一緒に、暗室の中を点検しておきましょうか……。
では、行きましょう……。」
ばあばは、机の上に置きっぱなしになっていたドラムケースを、再度胸に抱かえこんだ。
そして、今度はIさんの後ろについて暗室へと向かった。
「……ああ……。やっぱり……。」
暗室の棚の上に置いてあった。端切れの印画紙が入れたあった箱は、棚の上で半分開けっぱなしの状態で放り出してあった。
箱の中の遮光ビニール袋はちゃんと口が閉じてあったので、よほどのことがなければ、袋の中までは光が入ってしまうようなことはないだろうということだったが……。
それよりも、あれだけたくさんあった印画紙の端切れがほとんどなくなってしまっていた……。
加えて、作業台の上には、棚の下に置いてあったのだろう引き伸ばし機が、デデン……と据わり込んでいた……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




