第三十一話:人の良さそうなおじいさん
俺達は武器屋に来ていた。この武器屋は剣、防具、杖、魔道具、回復薬といろいろなものが揃っている。それぞれ専門の人が作っているらしい。しかしなぜ武器屋に来なければならないのか。今すぐ必要ないだろうし、部屋で寝たかった。
「なぁなんで武器屋なんだ?他のところでもいいだろ?今はこの魔道具で十分だし」
そう言いながら俺は頭の近くを飛んでいる少しヒビの入った魔道具を指差した。
「ヴェルは人の話をきちんと聞くべき。それにそれだとあと一回上級魔法使ったら壊れる」
戦略型特級魔法と特級魔法に耐えれたんだから仕方ないとは思うけど。
「エルビス先生が言っていたじゃないですか。来月ダンジョンに行くので準備していてくださいと」
「そういやそんなこと言ってたな。始まりの楽園だっけ?」
「そう、初心者向けのダンジョン」
始まりの楽園はイースの言った通り初心者向けであり、俺が龍使いに目覚め、アスルドと出会ったダンジョンだ。
名前の由来はこの王国で最初に見つかったダンジョンで、あとに見つかった他のやつよりも簡単に攻略出来たからだ。もう一つボス部屋があってそれを攻略しただけだが。
「それで新しい武器を買いに来たってわけか」
「そうですよ。殆どの人が早めに武器を買って自分に馴染ませておくんです」
「でもなぁ俺ははっきり言って何もなくても発現できるしなぁ」
そう今まで学院から支給された魔道具を使っていたのはこの世界で魔法と言うのは何かしらを媒介にして発現するのが当たり前だからだ。何も使わなければ威力が著しく下がってしまう。しかし俺の場合はそんなのは関係ない。必要になる魔力、MPが少し多くなるだけだ。因みに魔法学院対抗戦で貰った物は大事にとってある。ローブは着ているが。
「でも格好というのは重要ですよ。それになにか特別な効果が有るかもしれませんし」
「防具ぐらいは買っておくべき」
「防具かぁでもこのローブで十分じゃないか?」
「もっと良いのがある」
一応これ賞品なんですけどね。
「でも金はどうするんだ?」
「忘れたのですか?学院から階級色によって異なる金額のお小遣いがもらえるのですよ?」
そうだった。学生証は前に世界で言うところのクレジットカードの機能も付いている。それに毎月お小遣いのようなものが振り込まれることになっている。俺に振り込まれる金額は金貨1枚分つまり平民の平均月収の10倍だ。・・・どんだけ学院は金持ちなんだよ。
「じゃあとりあえず見て回るか」
「では防具のところから見てみましょう」
防具売り場に行くと鎧や兜、ローブなどがたくさんおいてあった。しかもローブだけでかなりの種類がある。色も沢山ある派手なのから地味なのまで。
「たくさんあって困るなぁ。どんな効果がついたのが良いんだろう?」
「魔法防御や物理防御とかじゃないですか?」
「うーんそれはこのローブで十分だから・・・」
「なにかお困りのことでもありましたか?」
店員か。こういう話しかけてくるのはちょい苦手なんだよなぁ。
「魔法防御でも物理防御でもない特別な効果のあるローブを探してるんですけど・・・」
「それなら一応ありますよ。こちらについてきてください」
そう言われ連れて行かれたのは店の倉庫。しかしそこには二体の大きな斧を持った人造巨人がいた。
「はい、着きました。そのローブが欲しかったら戦ってもらいます」
いや俺としてはどうでもいいんだけど。
「なぁイースやっぱ「戦って」・・・エル「戦うの」・・・はい」
「では起動します。一人でほんとうに良いんですか?3人でもいいですよ」
「一人で十分です」
その返事を聞くと離れたところにある魔法陣に触れ、魔力を流した。すると人造巨人の目が光り、動き始めた。そして二体同時にこちらに向けて斧を振り下ろしてきたので反射で跳ね返し火球を一発打ち込んだ。
「もう・・・ですか・・・。って人造巨人が!」
二体の人造巨人は腹のところに穴を開けて倒れていた。
「なんじゃ?お、これは・・・儂の造った人造巨人が・・・これをやってのは誰じゃ!?」
倉庫から出てきた白髪のおじいさんは周りを睨むように見て、俺でその視線は止まった。まぁ当たり前だよな。位置からして。
「お主か!これをやったのは!一体何をしたんじゃ!」
おじさんがこちらまでやってきて凄い顔で聞いてきた。
「い、いやただ火球を打ち込んだだけですよ?」
「なに?ではなん発だ?」
「一発ずつですけど」
「・・・では魔力をどんだけ込めた?」
「上限の1%位ですかね」
「うむ。分かった。お主の凄さがな。それでなんでここに来たんじゃ?」
ふーなんとか落ち着いてくれてよかった。
「特殊なローブありますかってそこに人に聞いたらここに連れてこられました」
「そうかそれならこっちにあるぞ」
そう言って倉庫の中に入っていたのでそれに付いて行く。
倉庫の中は意外と明るかった。しかも結構広い。俺達はその広い倉庫の奥まで付いて行った。
「これじゃ」
おじいさんが指差した先には一見すると普通の黒いローブが5着ほど掛けてあった。しかしどれも少量ながら魔力を纏っていた。
「これはの、人工魔獣を埋め込んだローブなのじゃ」
人工魔獣とはその名の通り人工的に造った魔獣だ。さっきの人造巨人もこれに分類される。その種類は様々であり、いろいろな魔物を真似したものや更にその魔物に何種類かの魔物を混ぜたものなどがある。人工魔獣を造るには特殊な魔法想像生成が必要になる。この魔法は固有魔法の中でも比較的使える人が多いがそれでもなかなかいない。しかし人工魔獣を服に埋め込むなんて聞いたことない
「人工魔獣を服に埋め込めるんですか?」
「それは想像生成と錬金魔法の複合魔法でするんじゃ」
「それで人工魔獣を埋め込めると?」
「そうじゃ。儂が造り出せる人工魔獣は通常の魔物で言うとSランクまでじゃ」
え、Sランク!?マジかSランクの人工魔獣を造り出せるのは想像生成を使える人でも1000人中の1一人くらいしかいないはずなのに。
「そして、この5着ともSランクの人工魔獣が埋め込んであるんじゃ」
「それ凄い。とてもほしい」
「そうですね。でも高そうですね」
いままで黙っていたイースとエルシィがようやく口を開いた。さっきまでは驚きで固まっていたのだ。
「まぁまず中に入ってる人工魔獣の紹介でもさせてくれ。まず最初に左上に入ってるのがドラゴンじゃ。大体帝竜くらいの強さじゃの。次に右上はケロベロスじゃ。左右の肩と背中に頭があるんじゃ。左下はフェニックスじゃ。右下はフェンリル。そしてその四匹の特徴を全て混ぜたのが真ん中のやつじゃ」
やばそうなのばっかりなんですけど。まぁ強そうだけど。
「それでいくらするんですか?」
「本当は真ん中のが金貨1枚でその他のが銀貨50枚じゃ。しかしの、これは本当に強い奴にやりたかったんじゃ。そして今日来たお主はこれに相応しいと思った。じゃから半額でいいぞ。あと後ろの二人のお嬢さんもじゃ」
「私達も良いんですか?」
「もちろんじゃ。この小僧が強いのにお嬢さんがただ弱いというのはちとありえんからな」
まぁ実際そうなんだけどね。イースは血界術を使うし、エルシィは勇者のんかでも上位の魔法師だったからな。
「じゃあイート、エルシィはどれが良い?」
「そうですね。私はフェンリルのが良いです」
「私はドラゴンが良い」
「そうか、なら俺は真ん中のだな」
「フォフォフォ。お主ならそれ選ぶと思っておったわい。なら全部で金貨1枚じゃな」
「ほんとうに良いんですか?おじいさん」
「さっきも言ったじゃろ。こいつらも新しい主が見つかって嬉しいはずじゃ。それと儂はオーグじゃ」
最初あった時はびっくりしたけど人の良さそうなおじいさんだな。
「それじゃあお言葉に甘えて」
俺達はおじいさんと一緒に店の購入場まで行って会計をした。
「ありがとうございました」
「頑張るんじゃぞ。それを有効に使ってくれることを期待しておるぞ」
「では機会があったらまた来ます」
「その時にはもっと凄いの作って待っているからな」
俺はこれから武器を買うときはこの店に来ると決めた。




