第二十九話:誰でしょう
ゲルト私立魔法学院5年生ベクト・ゼノ・フォン・フィールド。これが決勝戦の相手である。
フィールド侯爵家、学院長の実家である。時空間魔法に優れている人物を多く輩出しており、このベクトも一つだけ特級と上級までの時空間魔法を使うことができる。使う武器は魔剣。しかもこの王国に10本しか存在しないと言われるSランク、魔剣ベルティス。それは適合試験を受けた人の中で適合者はただ一人ベクトのみでありほぼ彼専用の剣だ。しかしこの大会では一度もそれを使っていなかった。すべて一撃で終わらせていたのだ。彼が使っていた魔法はただ一つ。特級時空間近代魔法、特定座標管理。これは俺が使う魔法と同じ名前だが少しだけ効果が違う。俺のは生物・非生物を問わないのに対しこれは非生物のみ。武器さえ取られなければ勝てるバズだ。
『いよいよ決勝戦がやって来ました。今回は長く続いて欲しいと思います。ではベクト選手とヴェルス選手の登場です』
俺だってそうなるとは思わなかったんだよ。もうちょっと楽しみ・・・ダメだダメだ考え方がイースになってきている。
『それでは最初にベクト選手に話を伺いたいと思います。この試合では魔剣ベルティスを使いますか?』
『ああ使う。使っても勝てるか分からんがな。できる限りのことはするさ』
剣を腰にかけた白髮の目付きの鋭い男ベクト。あの剣が魔剣ベルティス。
『では次にもう何でもありのヴェルス選手に伺ってみましょう。次は何秒続けますか?』
聞くのを面倒くさそうにしないでください!
『さ、さぁ?な、長いと思いますよ』
『ヴェルス選手にとって長いとは何秒なのかはわかりませんが一瞬ではないそうです』
いやイースと戦った時は結構かかったからね!?
『まぁ始めましょう。魔法学院対抗戦個人の部決勝戦!スターートですッ』
じゃあいつも先制を取られているから今回は俺からいくか。
「火球」
「吸い尽くせ魔力吸収」
・・・は?そんなのありかよ。俺が放った火球は全てあの魔剣の前で落ちてしまった。
「マジかよそんなのありかよ」
「これはこの魔剣の効果の一つ。魔力を吸う効果。火球が動いていられるのは魔力で操作しているからだ。それがなくなればただの火になるということだ。では特定座標管理」
しまった。まだ刀は出していないがこれで出せなくなった。
「突風、火球」
俺の周りに風が吹きそこに火の玉が現れた。魔力が使えないなら風で飛ばせばいい。しかしそれを簡単に避けたベクトは
「もうそろそろだろ」
「なにを・・いっているんだ・・・」
おかしい全然動いていないの息が上がっている。何かの魔法を使ったのか?もしかして疲れやすくなるやつとか。
「う~む、しぶといな。大体の人間ならここでもう倒れているはずなのに」
「なに・・・した」
「そんなの簡単なことだ。お前の周りの酸素を少なくしたのだ」
そうか!酸素も非生物だった。この世界にも酸素という気体があることだけは知られている。その他の気体は全く知られていない。エルビル先生に自重しろって言われてかから使いたくなかたけど使うしかないか。
「特定座標管理」
「ほう、お前もか。しかし俺の操作に勝てるか?」
いやー余裕で勝てると思いますけど?はっきり言ってこのくらいの大きさなら無意識的に操作できるし。そういえばこの前新しい魔法を考えたんだった。ここで実験してみよ。
ベクトから離れた俺の目の前に5m位ある黒い棒が二つ現れた。それを絶対零度近くまで冷やし、同じく冷やした黒い玉をその二つの棒の間に入れ棒に超高電流の電気を流した。すると黒い玉は一瞬で橙色の光を残してベクトの方へ飛んでいった。そうこれは電磁加速砲。現在利用されているプラズマの膨張圧を使ったサーマルガンのようなものではなく正真正銘
の電磁誘導を使ったレールガンだ。しかも絶対零度近くまで冷やしたため電気抵抗は一切なく、ロスとしてはレールとの摩擦力と空気抵抗のみ。速度は秒速7km。音速の約20倍の速さだ。
その速度の弾丸を受けたベクトは地面に突っ伏していた。しかし一つ問題がある。ベクトは掠っただけなのか吹き飛ばされてはいなかったが、後ろの壁がかなり抉れていた。壁が厚く、強化魔法がかけられ、通路が間になかったのでよかった。それでなければおそらくこの街に一本の線が通っていただろう。けど結界まで壊すとは思わなかった。一部ポッカリと穴が開いている。
『・・・結界を?壁も?・・・あ、えーと勝者ヴェルス選手。よって優勝者はヴェルス選手に決まりました』
シルビアさんが口を開けたまま優勝の宣言をした。
表彰式は国王が直々にした。
「ではヴェルス選手前へ」
「はい!」
「ヴェルス・アグニ・フォン・フォルクス。そなたはこの魔法学院対抗戦にて優勝という大変優秀な成績を納めた。それを讃えこの賞状と賞金、賞品、そして漆黒の龍使いの二つ名を贈呈する」
賞金は金貨100枚、賞品は最高の魔法処理がされたローブ、全属性に対応した最高品質の杖である。しっかし、なんか痛いな~漆黒の龍使いって。
「してヴェルス殿、リョーマ・ヒジミヤという人物を知らんか?」
そうだった。目の偽装を消しているんだった。
「イイエ。シリマセン」
「そうか、ならいい」
びっくりして片言になってしまったがなんとか騙せた。と思っていたが騙せていなかった。その後国王は隠密行動に優れた人物をヴェルスの監視につけた。そのことを本人は知るはずもなかった。
迷わないようにみんな一緒に帰ったあと俺はすぐに寝た。そしてそれから一ヶ月は特に何もなく普通に学院生活を送っていた。そして今日10月21日転入生がやって来た。青髪で緑色の瞳をしていて身長は俺より少し小さいくらい。大体イースくらいだ。
「エルシェルト・ルミナス・フォン・トーセルです。よろしくお願いします。属性は水と光と無属性の治癒魔法です」
あれ?もしかしてこの人がアレスルングの言っていた。俺の友人かな?属性で言ったら立花さんか。
「彼女の階級色は茶です。今年の茶がまた一人増えました。ではエルシェルトさん、そのヴェルス君の隣が空いているのでそこにヴェルス君に机を作ってもらってそこに座ってください」
俺は土魔法を使って窓から木を増殖させ、それを切断して机と椅子の形に整え、それを隣に置いた。
「ありがとう」
「いえいえ」
どうしよう聞くべきなのかな。この時期だし立花さんの可能性が高いんだよなぁ。でも違ったらなぁ。
「ヴェル、どうしたの?あのエルシェルトって人が気になる?」
「いや別に」
「ヴェルス君」
「は、はい!」
いきなり声をかけられたので驚いてしまった。
「後で話しがあるので校舎裏に来てください」
お、もしかして本当に立花さんかな。ここでは言えないだろうし。
学校が終わり校舎裏に行こうとしたら
「ヴェル、私も連れて行って」
「いやーでも・・・「いいから!」えー」
「なんで行きたいんだ?」
「なんとなく面白そうだから」
「じゃあ一回行って、エルシェルトさんに一緒にいていいか聞いてダメって言ったら帰るんだよ」
「うん分かった」
そして俺達は校舎裏へ向かった。




