王宮溺愛編
レオンの手によってレオンの自宅へと連れ帰られた俺は、彼が私的に所有する最高級の私邸、その最奥にある寝室へと文字通り「拉致」される形で運び込まれた。
「レオン、あの……もう傷はほとんど塞がったし、歩けるんだけど」
「駄目だ。大人しく寝ていてくれ」
ベッドから起き上がろうとしただけで、レオンは恐ろしいほどの素早さで俺を極上のシルクの毛布ごと包み込み、優しく、けれど絶対に逃がさない強さで組み伏せてきた。
15年前の、どこか遠慮がちだった新人騎士の面影はどこにもない。今の彼は、大陸最強と謳われる聖騎士団隊長だ。その体躯は一回りも二回りも逞しくなり、放たれる圧倒的な覇気と男の色気に、俺の心臓はさっきからうるさいほど高鳴っている。
「本当に、死ぬかと思ったんだ……。お前が目の前で落ちていくのを見た瞬間、俺の心臓も止まった」
レオンは俺の額に、愛おしそうに何度も何度も唇を落とす。その琥珀色の瞳は、かつての冷徹さが嘘のように、甘やかな熱と、偏執的なまでの独占欲でドロドロに濁っていた。
「優斗殿を現代へ送り返した今、お前を縛るものはこの世界に何もない。だから……俺がこうして繋ぎ止めておかなければ、またどこかへ消えてしまう気がするんだ」
「消えないよ。俺だって、お前と一緒にいたくて戻ってきたんだから」
そう言って微笑むと、レオンの呼吸が不意に荒くなった。
彼は俺の手首を掴んでベッドに縫い付け、今度は耳元や首筋、鎖骨へと、容赦なく深い熱を刻み込んでいく。大きな手のひらが服の隙間から滑り込み、熱を帯びた肌を容赦なく愛撫した。
「あっ……ん、レオン……っ、ちょ、ちょっと待って……!」
「待てない。15年だぞ、聖。俺がどれだけお前を想って、渇いていたか……思い知らせてやる」
それは、かつての初々しい恋人同士のそれとは違う、飢えた獣のような執着だった。
王宮の神殿や貴族たちは、魔物を一瞬で殲滅した『真の聖人』の正体を探ろうと血眼になっているらしい。だが、レオンは自身の権力と武力をフルに使い、俺の存在を完全に隠蔽していた。「聖人は結界の反動で消滅した」と偽の報告を上げ、俺をこの部屋に完全に囲い込んでいるのだ。
「誰にもお前を渡さない。国にも、神殿にも。お前は俺だけのものだ、聖……」
優しく、けれどどこか脅迫めいた愛の言葉を囁かれながら、俺はレオンの深い口づけに溺れていく。
冷徹な鉄面皮の裏に隠されていた、あまりにも重すぎる元新人騎士の溺愛。俺は身を縒りながらも、その心地よい束縛に、完全に降伏するしかなかった。




