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悪女の選択――愛される資格などないはずだった  作者: 音香(Otoca )


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薬の力

部屋の中には、重い空気が漂っていた。


甘い匂いは、まだ消えていない。


壁のどこかから流れ込んでいるのだろう。


ゆっくりと、だが確実に濃くなっている。


リリアは壁際に座り込み、

袖で口元を覆ったままオスカーを見ていた。


オスカーは反対側の壁にもたれ、目を閉じている。


肩で呼吸をしていた。


「……副団長」


小さく呼ぶ。


オスカーは目を開けない。


ただ低く言った。


「来るな」


短い声だった。


だがそこには、必死に理性を保とうとする強い意思があった。


リリアはそれ以上近づかなかった。



部屋は静かだった。


聞こえるのは、オスカーの荒い呼吸だけ。


時間がどれほど経ったのか分からない。


リリアは必死に考えていた。


(どうすれば……)



扉は開かない。

窓は厚いガラス。

割ることもできそうにない。

それに―― この匂い。

長く吸えば、二人とも危ない。



オスカーの呼吸がさらに荒くなる。


「……っ」


拳が床を叩いた。


鈍い音が響く。


「副団長!」


思わず声を上げる。


オスカーが顔を上げた。


瞳が赤くなりかけていた。


拳が震えている。


指の関節が白くなるほど力が入っていた。


必死に自分を押さえ込んでいる。


だが、薬は容赦なく体を侵していく。



その時―― 廊下の向こうから悲鳴が聞こえた。


獣人の声だった。


「グァァァッ!!」


リリアが顔を上げる。


「……!」


さらに音が続く。


何かが壊れる音。

鉄の衝突音。

叫び声。

暴れる音。



オスカーも目を開いた。


「始まったか」


「何がですか……?」


オスカーは荒い呼吸のまま答えた。


「実験だろう」


廊下の向こうから、さらに獣のような叫び声が響く。


理性のない咆哮。


壁が震えるほどの音だった。


リリアの胸がざわついた。


(……暴走)


その時だった。


突然、リリアの胸が苦しくなる。


「……っ」



息が詰まる。


身体の奥へ、何かが流れ込んでくる。


獣人達の魔力。


共鳴だった。


ガルムの時とは比べ物にならない量だった。


目がとろんとする。


息が荒くなる。


身体が熱い。


「リリア……」


オスカーは自身と戦いながらも、リリアを気にしていた。


だがリリアはもう、自分を制御できなかった。


その場でゆっくり服を脱ぎ始める。


そして下着姿のまま、ふらりとオスカーの足の上に座った。



「から…だ……あつ……い……」


「おい」


オスカーは必死に歯を食いしばる。


リリアはオスカーの首もとに顔を寄せた。


唇が触れる。


ゆっくりと口づけた。


熱い吐息が肌に落ちる。


オスカーの身体がわずかに震えた。


「……くそ……」


低く吐き捨てる。


だがリリアは気付かない。


理性はもう残っていなかった。


首もとに唇を押し当てたまま、ゆっくりと舌を滑らせる。


オスカーの呼吸が乱れた。


視界が揺れ、頭が焼けそうだった。


リリアの手が、無意識のまま下へと滑っていく。


「……やめろ」


かすれた声だった。


だがリリアは止まらない。


まるで本能だけで動いているようだった。



その時だった。



ドカン!!



凄まじい音と共に、扉が吹き飛んだ。


そこには隊服に身を包んだ獣人達と、ラルフ達が立っていた。


クラウスは咄嗟に手を伸ばし、ガルムの目を覆った。


「見るな」



ラルフは一瞬、固まった。



目の前の光景。


うなだれて座り、手は白くなるほど強く握られている。


唇からは血が垂れていた。


その上に跨がり、本能だけで快感を求めるリリア。


ラルフの瞳が鋭く揺れる。


ラルフはすぐにリリアを引き剥がした。


「大丈夫か」


ラルフはオスカーに問いかけた。



オスカーは力なく笑う。


「団長……」


荒い息の中で言った。


「俺、耐えましたよ。偉いでしょ」


苦しそうに目を細める。


その時、獣騎士が急いでオスカーに薬を飲ませた。


しばらくして、オスカーの体から力が抜ける。


そのまま意識を失った。


リリアはぼんやりとラルフを見つめていた。


「……助けて……」


そう言いながら、ラルフにすり寄る。


ラルフがすぐに身体を離す。


そして急いで薬を飲ませた。



数秒後。


リリアの体から力が抜ける。


そのまま意識を失った。


ラルフは何も言わなかった。


ただ自身の外套でリリアを包む。


そして静かに抱き上げた。


「出るぞ」


低い声だった。



ラルフはそのまま、リリアを連れて部屋を後にした。

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