表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪女の選択――愛される資格などないはずだった  作者: 音香(Otoca )


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/135

新しい仲間

数日後。


騎士団の訓練場には、

朝から剣のぶつかる音が響いていた。



乾いた衝撃音。

踏み込む足音。

荒い呼吸。



今日は騎士団内での勝ち抜き戦が行われていた。


中央の円の中で、二人の騎士が剣を交えている。



そしてその一人は―― リリアだった。



額から汗が流れ落ちる。


呼吸は荒い。


それでも、剣を握る手は迷っていない。


目の前の相手が剣を構え直す。


先輩騎士の一人だった。


少し呆れたように笑う。


「本当にやるのか」


肩で息をしながら言う。


周囲から声が上がる。


「すげぇな……」 「何人目だ?」 「大丈夫か?」


ざわめきが広がる。


ノルが思わず言った。


「すご……」


その隣でジークは腕を組んでいた。


「まだ終わってない」


視線は中央から動かない。



中央では、リリアが剣を握り直していた。


(まだ……)


息を整える。


胸の奥が焦っている。


(もっと強くならないと)


団長の言葉が頭に残っていた。



――守れる騎士になれ。



まだ足りない。


だから止まれない。


リリアは剣を構えた。



「お願いします」


先輩騎士も構える。


「来い」


次の瞬間。



床を蹴る音が響いた。


剣がぶつかる。


ガンッ!!


重い衝撃。



だがリリアは下がらない。


剣を流し、踏み込む。


二度、三度と剣が交差する。


訓練場は静まり返っていた。


全員が見ている。


先輩騎士が踏み込む。


強い一撃。



だが―― リリアはそれを弾いた。


体をひねり、踏み込む。


次の瞬間。



木剣が先輩騎士の胸元に止まった。


沈黙。



そして、先輩騎士が苦笑した。



「……参った」


その瞬間。


訓練場がざわめいた。


「勝った!」 「全部倒したぞ!」 「団長たち以外、全勝だ!」


歓声が上がる。



リリアは肩で息をしていた。


腕が少し震えている。


だが剣は握ったままだった。


視線は落ちる。


(まだだ……)


胸の奥で思う。


(もっと強くならないと)


その時だった。



訓練場の扉が開いた。


空気が変わる。



入ってきたのは―― ラルフだった。


その隣にはオスカー。


団員たちが一斉に姿勢を正す。


ラルフは訓練場を見渡した。


そして言う。


「……騒がしいな」


副官が答える。


「勝ち抜き戦です」


ラルフの視線が動く。


「誰が勝った」



「ローゼン卿です」



ラルフの視線が中央へ向く。


リリアが立っていた。


汗に濡れ、肩で息をしている。


それでも、剣を握っていた。


ラルフは小さく頷いた。



「……そうか」


そして短く言う。


「よくやった」


それだけだった。



だが団員たちはそれで十分だった。


その時。


ドアの後ろから、数人の小さな影が現れた。


団員たちが首を傾げる。



オスカーが前に出た。


「今日から騎士団に新しい仲間が加わります」


ざわめきが広がる。


ラルフが静かに言う。


「今回の功績と、本人たちの申し出により」


団員たちを見渡す。


「騎士団に加わることになった」



ラルフの横まで歩いてきて、子供たちが前に出る。


獣人の子供たちだった。


隊服を着ている。



オスカーが優しく声をかけた。


「一人ずつ名前を言ってくれるか?」


最初に一歩前へ出たのは、狼の少年だった。


背筋が伸びている。


周囲を見渡し、はっきりと言った。


「狼のガルムです。よろしくお願いします」


落ち着いた声だった。


そのあと、一瞬だけ視線が動く。


リリアを見た。


リリアも小さく微笑んだ。



次に小さな少女が前へ出る。


「うさぎのラビィです」


「リスのリッカです!」


「ライオンのラオです」


「猫のネアです」


最後に、竜の少年が静かに言った。


「竜のラドラ」


そして全員で頭を下げた。


「「よろしくお願いします」」



訓練場は静かだった。


そして。


「よろしくな」 「おう、頑張れよ」


団員たちの声が上がる。



誰も拒まなかった。


むしろ優しい目で見ていた。



オスカーが続ける。


「それともう一つ」


視線がリリアへ向く。


「獣騎士隊の統率長を決めました」


ざわめきが広がる。



オスカーは言った。


「ローゼン卿です」


リリアが目を見開く。


「私ですか?」


オスカーは頷いた。


「ガルムの能力を通せるのは、今のところローゼン卿だけだからな」


そして続ける。


「補佐はジークとノル」


二人が同時に声を出す。


「俺」 「僕ですか」



オスカーは笑った。


「適任でしょう」


団員たちも納得している様子だった。



リリアはまだ少し戸惑っていた。


だが前へ出る。


獣人の子供たちの前に立つ。


ガルムが真っ直ぐにリリアを見ていた。


リリアは小さく息を吸う。


そして言った。


「リリア・ローゼンです」


静かに続ける。


「これから、一緒に強くなりましょう」


ガルムが頷いた。



他の子供たちも続く。


訓練場には、今までとは違う空気が流れていた。



ラルフはその様子を静かに見ていた。


そして短く言った。



「始めるぞ」



訓練場の空気が引き締まる。



騎士団に―― 新しい仲間が加わったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ