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悪女の選択――愛される資格などないはずだった  作者: 音香(Otoca )


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罰の意味

扉が閉まる音でリリアの身体がびくりと跳ねた。


戻ってきた。


空気で分かる。


さっきまでとは違う、重い逃げ場のない圧。


わざと聞かせるようにゆっくりと足音が近づくと、ベッドの横で止まった。


「反省したか」


低いく感情を一切含まない声。


「……はい」


リリアの声は小さかった。


その返事を聞いた後 ―― 何も言わない。


それが何より怖かった。



沈黙のまま ―― ラルフの指が触れた。


頬をゆっくりと撫でる。


優しくはない、所有物を確かめるような手つき。


耳の後ろから首筋へ。



ぞくりと背筋が震えた。


「……ん……」


小さな声が漏れる。



その瞬間、縛られた手首が ―― 強く握られた。


「……っ」


逃げられない、逃がさない力。



耳元で低い声が落ちる。


「……これは罰だ」


逆らえない声だった。


威厳。

命令。

絶対の支配。



指が顎を持ち上げる。


「お前がどれだけ危ういことをしたのか、身体で覚えろ」



次の瞬間 ―― 唇が触れた。


息を奪うような口づけだった。


深くはないが、逃げ場を完全に塞ぐ口づけ。


リリアの手が縛られたまま震える。


頭の奥が白くなる。


ほんのわずかに唇が離れる。


吐息が触れ合う距離のまま離れない。


「声を出すな」


低く命じる。


「出したら ―― 壊すからな」


脅しではない。


事実として告げる声。


ただ従うしかない。



ラルフの指が首筋をなぞる。


わざと反応を確かめるように。


リリアの身体が小さく震える。


その反応を見て、ラルフはわずかに目を細めた。


威厳を崩さない、冷酷なままに。


そして何も言わずに ―― 再び口づけた。


今度はさっきより深く息を奪うように。


逃げようとしても逃げられない。


縛られた手首が軋む。


「……っん……」


声が漏れそうになるとラルフの手が喉元を押さえた。


強くはない。


だが支配するには十分だった。


「声を出すな」


命令。


逆らえない。


リリアは必死に息を止める。


唇が離れ、次は首筋から胸元へ。


ゆっくりと触れる。


熱が残り、身体の奥が震える。


そのまま容赦なく引き寄せる。


身体が密着し、逃げ場は完全に消えた。


「……んん……!」


リリアの体が強ばり一気に力が抜けた。


「……はぁ……はぁ……」


ラルフの動きが一瞬だけ止まった。


手首に触れる感触があり、びくりと身体が強張る。


「……っ」


声にならない息が漏れる。


何も言葉はない。


ただラルフの指先が紐に触れていた。


ゆっくりと結び目を探り、迷なく結びが緩む。


それだけで分かった。


ほどいて解放された手が力なくベッドの上へ落ちた。


すぐには動けなかった。


次に、目元へ手が伸びるとゆっくりと解かれた。


視界にうっすら光が戻る。


ぼやけた世界の中でラルフが見えた。


これで終わる ―― そう思っていた。


だが終わりではなかった。


何度も触れ止めなかった。


罰を刻むように。


抵抗を許さないように。


「……だん……ちょぅ……」


リリアは力なくラルフの腕を掴んだ。


呼吸が乱れ、思考が溶ける。


何も考えられなくなっていく。


時間の感覚が消える。


どれくらい経ったのか分からない。


やがて ―― ラルフの動きが止まった。


荒い呼吸。


それを押し殺すように、しばらくそのまま動かない。


その下には目元を涙で濡らし、ぐったりと横たわったリリアがいた。


ラルフはリリアの手首に残った赤い跡を見つめた。


指でなぞる。


確かめるように触れる。


リリアは浅く呼吸をして動かなかった。


ラルフはその顔を見下ろした。


目を閉じ眠っている。


その事実に胸の奥がわずかに緩む。


ラルフは唇をそっと手首に落とした。


「……ごめんな」


それは謝罪ではなく、許しを乞う声だった。


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