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悪女の選択――愛される資格などないはずだった  作者: 音香(Otoca )


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隣にいる理由

少し遅くなって、三人は屋敷へ戻ってきた。


それから皆で夕食を囲み、穏やかな時間を過ごした。



寝支度を済ませた後、ラルフはいつものように酒を飲んでいた。


その時、部屋の扉がノックされる。


入ってきたのはバルトだった。


「やっぱり、また酒飲んでたな」


「酔わないからいいだろ……」


ラルフは小さく返した。


バルトは、ラルフが眠れていないことに気づいていた。


「ちょっとついて来い」


そう言って、バルトは部屋を出る。


ラルフも黙って後ろをついていった。


向かった先は地下室だった。



昼間、オスカーが話していた場所だとすぐに分かった。


バルトはソファーを引っ張った。


すると、簡単にベッドの形へ変わる。


「すごいな……」


「いいだろ」


バルトは少し自慢げに笑った。


壁の収納からシーツを取り出し、手際よく整えていく。


その後、枕と毛布を渡し、魔道具に手をかざした。


ゆっくりと映像と音楽が流れ始める。


「切る時はどうすればいいんだ」


「魔力がなくても、このボタンで切れる」


「眠くなるようなやつにしておく」


そう言いながら、サイドテーブルに水と酒、簡単なつまみまで置いてくれた。


「おやすみ」


「……ありがとう」


ラルフは素直に礼を言った。


一人になると、ソファーベッドに横になる。


腰と頭の下に枕を入れ、少しだけ上半身を起こした状態で身体を預けた。


静かな音楽。


ゆっくり流れる町並みの映像。


ラルフはぼんやりと見つめていた。




突然、ガチャッと扉が開く音がした。


バルトが何か忘れ物でもしたのかと思い視線を向ける。


そこに立っていたのは、リリアだった。



ラルフは一瞬だけ動きを止める。


「団長さん、一人じゃ寂しいでしょ」


そう言って、小さく笑った。


「親父さんに怒られないか」


ラルフは少し気にした。


だが、リリアは気にした様子もなく、当然のようにラルフの隣へ寝転んだ。


「その二匹も持ってきたのか」


「お気に入りなんです」


ラルフが買ってくれた、クマと猫のぬいぐるみ。


二匹は枕元に並んで寝転がっていた。


しばらくすると、リリアは眠そうに何度も目を閉じたり開けたりしていた。


「眠いなら寝ろ」


ラルフはそう言って頭を撫でた。


リリアは安心したようにラルフへ寄り添い、そのまま眠りに落ちた。


静かな寝息が響く。


ラルフはしばらく、その寝顔を愛おしそうに見つめていた。


頭を撫でる手は止まらない。


やがて、ラルフも眠気に引きずられるように目を閉じた。



夜中。


リリアはゆっくり目を開いた。


隣を見ると、ラルフの手が自分の頭の上に力なく置かれていた。


リリアはその腕をそっと引き寄せ、そのまま腕に頭を乗せた。


すると、ラルフが無意識のまま抱き寄せる。


「起きたのか」


掠れた声だった。


「もう一度寝ます」


リリアはそう言って、ラルフの身体に腕を回した。


ラルフはゆっくり目を開けた。


腕の中には、眠そうなリリアがいた。


柔らかな髪が胸元に触れている。


その温もりだけで、胸が苦しくなった。


――離さなければいけない。


そう思っていた。


リリアの幸せを願うなら、自分は手放さなければいけない。


何度もそう言い聞かせてきた。



それなのに。



こうして腕の中にいると、全部が揺らぐ。



ラルフはそっとリリアの額に口づけた。



小さく音が鳴る。


リリアは少しだけ顔を上げた。


眠たそうな瞳で、じっとラルフを見つめた。


その顔が近すぎて、理性が鈍る。


ラルフの指先が、そっとリリアの頬に触れた。


柔らかい。


指先で包むように撫で、唇を重ねた。



最初は、触れるだけの優しい口づけだった。


けれど、離れようとすると、リリアが無意識に追いかけてくる。


その仕草に、ラルフの呼吸が揺れた。


もう一度、唇を重ねる。


今度は少し長く。


ゆっくりと角度を変えながら、何度も触れた。


リリアの肩が小さく震えた。


「……ん……」


甘い声が漏れる。


その反応を、もっと見たくなる。



リリアの身体は、ちゃんと覚えている。



どこに触れられると弱いのか。


どんな風に口づければ、力が抜けるのか。


ラルフはそれを確かめていた。



唇を重ねるたび、リリアの呼吸が少しずつ乱れていく。


頬が熱を帯び、瞳が潤む。


ラルフはその顔を見るたび、止まれなくなりそうだった。


少しだけ深く口づける。


リリアの指先が、無意識にラルフの服を掴んだ。


「……っ……」


小さな吐息。


ラルフの腕に力が入った。


欲しい。


もっと欲しい。


離したくない。


全部、自分のものにしたい。


そんな感情が溢れそうになった瞬間。


「……だめ……です……」


リリアが小さく呟いた。


蕩けたような声だった。



けれど、その一言でラルフは我に返る。


ラルフは苦しそうに目を閉じた。


「悪い……止められなくなるな」


そう言って、ぎゅっとリリアを抱きしめた。


リリアも、ラルフの服を掴んだまま身体を寄せる。


「このまま寝たいです……」


「ああ」


ラルフは優しく髪を撫でた。


腕の中に閉じ込めるように抱きしめながら、静かに目を閉じた。

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