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悪女の選択――愛される資格などないはずだった  作者: 音香(Otoca )


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ピクニック

「行ってきます!」


リリアはバルトたちに向かって明るく声をかけた。


「お待たせしました」


白いワンピース姿のリリアが現れる。


胸元には、金色の星のネックレスが小さく揺れていた。


ラルフはその姿を見て、ふっと目を細める。


「行こう」


そう言って、紳士的に腕を差し出した。


リリアは少し照れながら、その腕に手を絡める。



二人は並んで歩き出した。



茶葉店へ着くと、いくつか香りの良い茶葉を選んで購入した。


その後は、町をゆっくり回る。



「あっ、これ団長さんにそっくりです」


リリアが笑いながら手に取ったのは、黒いクマのぬいぐるみだった。


金色の目に、少し機嫌の悪そうな顔。


「俺はそんなイメージなのか」


「そっくりですよ!。クタッとした触り心地も最高です」


リリアは嬉しそうにぬいぐるみを抱える。


「欲しいのか」


「買ってくれるんですか?」


ぱっと表情を明るくした。


「じゃあ、これも!」


次に手に取ったのは、白銀色の毛並みに緑色の目をした猫のぬいぐるみだった。


「団長さん一人だとかわいそうだから、副団長さんも一緒です」


無意識だった。


リリアは自然と二人を選んでいた。


ラルフは一瞬だけ目を伏せる。


「これをくれ」


そう言って、二つとも買った。


リリアは両手でぬいぐるみを抱え、嬉しそうに笑う。


「ありがとうございます!大事にしますね」


その笑顔を見るだけで、ラルフは十分だった。



ぬいぐるみとしてでも。


こうしてリリアの側に選ばれたことが、嬉しかった。


「飲み物を買って、公園でピクニックしませんか?」


リリアの提案で、珈琲とデザート、それに敷物を買った。


公園の木陰に敷物を広げ、二人で座る。



ラルフにとって、公園でのんびり過ごすなんて子供の頃以来だった。



リリアはチョコレートを一つ手に取った。


「はい」


そう言って、ラルフの口元へ差し出した。


ラルフはそのまま口を開けて食べた。


「ここの美味しいんですよ!」


「甘いな」


「えー、ビター選んだのに……」


リリアは少しだけ不満そうな顔をした。


ラルフは小さく笑い、自分も一つ手に取る。


今度は、リリアの口元へ差し出した。



リリアは一瞬だけ止まったが、素直に食べた。


「……私にはやっぱりちょっと苦いです」


苦そうな顔をする。


ラルフは思わず笑った。


穏やかな時間だった。



ラルフはそのまま敷物の上に寝転ぶ。


「たまには、いいな……」


暖かい日差し。


涼しい風。


心地よさに目を閉じる。


リリアが振り返ると、ラルフは眠っていた。


リリアはくすっと笑う。


そして、その寝顔をじっと見つめた。


なぜか、この顔を見ると安心した。


胸の奥が、少しだけ落ち着く。


リリアもラルフの近くへ寄り、寝転んだままその顔を眺めていた。



しばらくして。


ラルフはゆっくりと目を覚ました。


目の前には、眠っているリリアの顔があった。


ラルフは一瞬だけ目を見開く。


こんな場所で眠ってしまったことにも驚いたが、それ以上に、目を覚ました瞬間にリリアが目の前にいることに胸が詰まった。



ラルフはそっと頭を撫でた。


リリアは無意識のまま、ラルフにすり寄った。


ラルフは思わず、ぎゅっと抱きしめる。


けれど、すぐに身体を離した。



荷物をまとめ、立ち上がる。


「帰るぞ」


リリアを起こした。


リリアは眠そうな顔で起き上がり、敷物を畳んだ。


「おぶってやる。乗れ」


そう言うと、リリアは嬉しそうにラルフの背に乗る。


「重くないですか?」


「このくらい、なんともない」


ラルフは荷物を持ちながら、そのまま歩き出した。


リリアは背中に顔を寄せる。


ふわりと、ラルフの髪の匂いがした。


「団長さんの匂い、落ち着きます」


「こら。匂いを嗅ぐな」


ラルフは軽く注意する。


リリアは小さく笑った。


「団長さん、ずっといてほしいです……」


ぽつりと零れた言葉。


ラルフは少しだけ目を伏せた。


「ありがとな」


お世辞だと思った。


そう思わなければ、苦しかった。




家の前へ着くと、ラルフはリリアを下ろす。


「ありがとうございます」


リリアは優しく微笑んだ。


「ああ」


ラルフはそっと頭を撫でた。



「ただいまー!」


リリアが扉を開けると、リビングではクラウスとオスカーが談笑していた。


リリアは嬉しそうに、ラルフに買ってもらったぬいぐるみを見せる。


「団長さんと副団長さんです!」


「似てるでしょ?」


「よくこんな似てるの見つけましたね」


オスカーが笑う。


「ホントだな」


クラウスも頷いた。


二人は楽しそうに話すリリアを見ていた。



ラルフはその様子を横目で見ながら、静かに部屋へ戻る。



リリアとの別れが、少しずつ近づいていた。

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