守護龍祭 1日目
コロナになったりと散々たる目にあい、かなり遅れましたが、なんとか書けました…。お待たせしました!
遂に来た学園での守護龍祭当日。かなりの短期間かつ、付け焼き刃になってしまったとは言え可能な限りの凡ゆる技術・礼儀作法・作戦を練り上げた我らが男装喫茶エスコートチームは既に開店準備を控えている。ここで今までのことを思い返してみよう。
教室はベーシックでシンプルな貴族の部屋をイメージしたホールへ大改装が施された。だが改装費用はほぼタダに等しい。全てあるもので代用し、時には姫達がいらなくなったインテリアを小道具として転用。そして改装時の人材は全て劇団部から徴用された。なんでもルンレイ曰く取引が成立したとのことで、なんと守護龍祭前日のギリギリまで調整していたらしい。何をしたのかと聞くと、知らない方が幸せだとルンレイに言われた。この時点で詮索は控えた。
姫達が使う執事服は、本物の執事服から多少幻想要素を加味したものが製作された。マリの闇の守護龍としてのキャパシティが幸いしたのか、裁縫魔法なるものでとんでもない速度で製作できたらしい。手芸部の人員の手もあって誤差修正も素晴らしい出来で終わった。
服装や髪は劇団部の手もあったが、カレンがガウディから連れてきたというスタイリストに近い仕事を請け負っている外部委託の獣人に様々なアドバイスを受けた上で姫達はメイクアップしている。髪は簡易的な変装魔法により元に戻すことが容易になっている。だがこれはスタイリストがアドバイスして出た案ではない。俺がとある提案をした結果、メイクアップの簡易化にも繋がるとして採用されたものだ。
ここまで来るのに、俺達は随分と遠回りをしてきた。だが遠回りこそが最短の道という言葉もある。間違いなく、我々はこの時点で最大の準備を重ねた。そしてホールの中心に準備を整えたカレンが姿勢良く立つ。
「皆さん。私達はこの学園祭。2日間の為に我々にできる最大限の準備を整えてきました。いくらか付け焼き刃であることは否めません。しかし…何があっても決して無駄なことなど何一つとしてありません。そして私達はただ走り切るのみ。全力で楽しみ、迎え入れましょう」
「決意表明とかやる?公爵様が言ってた1人あたりの売上ノルマ?とかいうやつ」
「アレはただ士気を下げるだけでしたので却下しました」
「スンマセン」
「皆さん。準備はいいですこと?意外と外に居ますわよ」
「ルーモルト。第一声を」
ドアの向こう側にいるルーモルトに耳打ちしたカレンは素早く迎え入れる体勢に入り、ほかの姫達もそれに続く。俺は隣の教室に入りかつての感覚と共にオーダーを待つ。そして、扉は開かれた。
「開店します!皆様!幸せなひとときをお過ごし下さい!」
「「お帰りなさいませ。お嬢様」」
「「キャアアァァァ‼︎」」
「ルンレイ様ー‼︎」
「どうされましたか?お嬢様」
「はわわ…私がお嬢様なんて…。夢みたい…」
湧き上がる女子生徒達の甲高い声。何せ薄めのメイクとは言えアドバイザーは本職の人物がやっている。格が違うのだ。ただの男装喫茶とも違う。もはやよりどりみどりのホストクラブに等しい。そこに加わるちょっとした軽食。さてこの軽食がいくつ売れるのか。俺には分からない。出ないかもしれない。だがそんな不安をしている時に限って、オーダーは止まらなくなるものだ。
「3番苺のショートケーキ!5番ホットサンドイッチ!2番オレンジジュース2つ!GO GO!」
「ケイ君!忙しくなってきたよぅ!」
「6番追加でりんごのコンポートアイス!8番がフレッシュレモンスカッシュ!1番紅茶!角砂糖付きね!ミルクも!」
「へへへ…思い出すぜバイト時代をよぉ…!」
軽食であるが故の高回転。そして退店時にも忘れない執事としての姿勢。この2つの条件が合わさると、リピーターとして来てくれる可能性を上げられる。大した理論ではないが、飲食店はリピーターが命。いかにしてもう一度来たいと思ってくれるかが次にかかっている。まあバイトだから深読みしたことはないけど。
開店の9時半から1時間経った10時半の時点でもオーダーは止まらず更に客足は伸びている。目立たない教室の配置であるにも関わらず。ルーモルトは列整理に追われて暇など無く、キッチン兼裏口代わりの教室に現在の外の状況を逐一報告する予定なのだが本人はもはや教室に戻れるだけの時間を確保できないという置き手紙だけ残して誘導と客の対応に行ってしまっていた。
「2番上がり!6番と1番も追加!」
「ケイ君!3番も上がるよ!」
「おっけー!」
「本当によく働きますわね」
「公爵だからって何もしてこなかったわけじゃあないのさ」
「まあ…これが案外、正しい形ではあるんですわよね…」
「ん?何か言ったか?」
「何でもありませんわ。2番と6番。いただきますわね」
「頼んだよ」
この後、なんとか12時半までの前半営業は終了。怪我などは無かった。しかしながら食材は底をつき、姫達も疲労困憊。俺も久しぶりということもあって一気に疲れが来ていた。マリに至っては真っ白に燃え尽きている。後半営業は14時半。それまでにカレン達と共に一度中間報告会を行う予定だったのだが…姫達含め、俺にその余力があるか怪しかった。
「…中間、どうするの。これ」
「やらなくていーんじゃないんですかね」
「人の目線が向けられる仕事で慣れているとは言え…あの…あの目は…」
「そうですわねぇ…甘い甘い、チョコレートやココアより、あまぁい目線…」
「私告白された」
「女同士で結婚できるもんですか…」
「そういうのが好みだって聞いた」
「ああ…それは…うん…何も言いませんわよ…」
「あの…外の列地獄だったんですけど。だれか労いの言葉を…」
「よくやりました。以上」
「ひどいや…」
全員、やる気も起きないレベルで憔悴していた。とは言えこれが1回と1日あるのだ。辛さとかはもう考えない方がいい。
俺は軽く疲れが取れたところでふらりとキッチンへと向かった。
「ははは…そういえば私何も食べてないや…」
「ルーモルトに言われて気付いた。私も昼まだだった」
「というか全員何も食べてませんわよ」
「そりゃそうでしょう。食べる暇なんか無いわけでしたし」
「でも今から何とかする気力は…」
「…いいえ。どうやら、私達専属執事がいるらしいです」
30分後、姫達が座って天井を仰いでいる間に俺が準備したのは、底をついてなくなったはずの料理。さりげなく全員分は確保していた。だが何よりリリィが確保してくれた食材にありがたみがあった。彼女が確保してくれたものの中には果実やハムと言ったものが大半だが、中には使わない予定のものが購入先の厚意でタダでもらったものもいくつかあり、様々なメニュー草案を作る中、開発段階で余らせていた材料と一緒に水魔法で凍らせて保冷してもらっていた。
ひとまず作り上げたのは、ハンバーガーとレモンスカッシュ、ポトフ、サラダの3種。バンズはこの世界にもあったので余り。パティはうまくあまりものを使ってこね上げ、ポトフも野菜の余りを煮込むだけ。ブイヨンはこの学校の食堂から頂いたものだったりする。0円食堂やってる気分だな。
「これは…?」
「挽肉をこねて焼き上げたステーキをパンで挟んだ…って言ってもあまり聞かないか?」
「いえ。挽肉自体はよく料理に使われるのを知っているのですが、こねる料理は初めてです」
「それをパンで挟んで…」
「ハンバーガーって言うんだ。手づかみで食べると美味さが倍に膨れる」
「いただきますわ」
何の躊躇無く一気に手づかみでパクリと食べ始めたのは意外にもルンレイだった。食べ始めると何も言わずにただ黙々と食べ続け、何一つとして話すことは無かった。それを見ていた姫達やマリもテーブルに着くと、何も言わずにただひたすらに食べ始めた。言葉は無いが、腹が減るのに人種も階級も関係ない。美味く食べられるのならそれで良し。さりげなくポトフとスカッシュのおかわりを置いておくとどんどん無くなっていく。身体が細く見えても胃だけは凄まじいと思えるレベルだ。ハンバーガーのバンズやパティもまあまあ大きいはずなのだが…。
食事時間は40分ほどだった。俺もそれなりに食べたはずだが、それ以上に彼女達は食べている気がする。最後は大量に用意しておいた紅茶とクッキーをデザートに、ゆっくりしている。
「…美味しかったです。公爵」
「食べっぷりだけで分かるよ」
「やっぱりお腹膨れると落ち着くなぁ…」
「んん…眠くなってきた…」
「後半営業はちょっと考えを変えなきゃダメそうですわね。カレン。何かあります?」
「今の所そう言った案はありませんが…ですが変えなきゃならないのは少し思ってます」
「あの人数をさばくのはちょいと無理がありますからねぇ。商談してる時の方がまだ楽です」
「列整理はもう勘弁願いたいんですが…」
「ルーモルト。前半はありがとうございました。大丈夫です。少し考え直しますよ」
「お姉様。そろそろ…」
「…そうですね。15分きっかりですが、やりましょうか」
姫達が服などを軽く直している間に俺はマリと一緒に机の位置を移動させる。と同時に取り出したのは白い布と椅子。白い布は背景に使い椅子は軽く斜めにして置く。そう。これから行われるのは…『撮影会』なのだ。
これは俺が提案したものだった。撮影会自体は問題ない。この世界には写真技術がある。重要なのはその場で入手できるか否か。一枚いくらで渡すかはエリザやリリィに任せたが、撮影方法と印刷方法は隠した。俺のスキルならカメラなど調達するのは容易い。
問題は印刷用の紙だが…これは現地調達するしか無かった。一から紙を作る機械を開発するとなると普通に面倒だし、機械はともかく紙の素材が入手できるか分からなかった。だがこの世界では驚くべきことに1960年代レベルにまで製紙技術が発展している。魔法なんかも影響してる可能性もあるが、ともあれ良質なものが簡単に手に入るのだ。しかもそれなりに厚い紙も手に入る。あとは印刷用感光剤のみなのだが…これもなんとかなった。この連邦内のみならず、各国の最先端資料が集まっているというこの学園。おまけに魔法を使わない技術を研究すべく感光剤に似たものを開発していた。理由は単なる写真技術の研究らしいが、いきなりフルカラーに対応する薬剤を開発してしまったのだから凄い。代わりにモノクロ用の薬剤開発は難航しているらしい。しかも写真技術がなかなか追いつかないからか、実験も十分にできていない。つまり未知数。使えるかどうかも分からないのだ。
だがこれが当たりだった。多少の荒さはあるが、2010年代のインスタントカメラ用フィルムに匹敵する性能がある。これが使えるということは、こちら側の技術でこのフィルムに対応する装置を作ってやれば良いだけのこと。フィルムに吹き付けた薬品は特定の波長の光を当ててやれば、それだけで発色してくれる。それを新技術で開発した機械で紙に吹き付け、蒸着させる。あとは専用インスタントカメラを開発して終わりだ。あとはどうするかというと…。
「あの…撮影会って…」
「お嬢様。こちらへ。思い出を作って頂けますか?」
「はわわ…」
ルーモルトのさりげない会話とエスコートにより、顔を赤らめながら座ると、俺とマリが色々と簡易的に整えて撮影を始める。何回かシャッターを切り、良さげなものを選んで印刷。とても小さなものだが、写真は写真だ。
最後に写真を客に渡して、一言かけて終わり。なのだが、ルーモルトはリアリティを出すためか最初の客に手の甲にキスまでした。しかも柔らかい、かつ少し悲しみを覚えるような表情で。
「お嬢様。いつでもお待ちしてます。貴女がどこにいても…愛しております」
「はっ…はひっ…!ありっ…ありがとうございましたぁ〜ッ‼︎」
限界になったのか逃げ出すように出て行ってしまった女生徒。写真を無くしてなければ良いんだが。だがそんなことよりも姫達の目はルーモルトへと向かっていた。
「生粋の女たらしですわね」
「理解不能」
「まさかそっちの気があるんじゃ…」
「無い!無いから!なんで⁈売上貢献じゃん‼︎悪いことなにもしてないけど⁈」
「いや、まあ、売上貢献は分かりますよ。でもアレは…」
「その気があると思われてもおかしくありませんね」
「右に同じく」
「そんなぁ〜…」
「ひとまずは本気にならないくらいまでリアリティを出しましょう。公爵様…準備はよろしいですか?」
「ブツの生産は終わった。人気順になるかもしれないが」
「気にしませんよ」
俺が予め生産したのは、姫達の写真。いわゆるブロマイドだ。チェキなんて呼ばれもしてるか。撮影したのは俺だが、撮れ具合は悪くないと自負している。これをある程度大量に印刷しておいた。ただしあまり売れない可能性も考慮して、2日目も含めた分しか印刷はしていない。増産予定はないのだ。専用の機械も分解・封印した。実践データに関しては研究室との約束だったので9割方渡してはいるが。これを窓口のような場所で販売する。
「まあ大して売れはしないだろうし、オマケ程度だから大丈夫だろ」
「…それ本気で言ってます?」
「は?」
「公爵…後悔しますよ…」
「リリィ。考えてもみろ。たかが写真…つっても色付きで多少高いか。これを欲しがる人間がいくらいるんだかって話で」
「あの!一緒に写真撮ってもらえるって本当ですか⁈」
「私も!」
「ちょっ…どいてよ!私が先でしょ⁈」
『通信魔法で失礼します。列整理で急遽出てきたルーモルトです。みなさん。外に行列できてます…』
「…撤回します。絶望しかありません」
「15分で終わるのこれ…」
結果的に行列を消化するのに30分はかかった。ブロマイドも当初の予定どころではなくなってしまい、発売して数分で売り切れてしまった。ルーモルトが友人のツテで聞いた話では、もう既に裏取引が始まっているらしい。こんなことになるなら封印解除するのも冗談では無くなってきたな…。
後半の営業は午後ということもあってか落ち着いたものだった。とは言え忙しないことに変わりはなく、どうもルンレイとアヴァロンが担当していた『取り決め』も関係あると言う話があって営業終了までモヤモヤしてしまった。取り敢えず2人が武力交渉に出なかったことだけが救いと言えるだろう。
こうして後半営業終了後、疲れ切っていた俺達は休憩がてら食堂へと向かい簡易的な精算していた。各自の売上は期待以上であり、リリィによる仕入れもあってか非常にリターンが大きかった。ブロマイドの売上に至っては全体の2割を占める大きなものとなり、無視できない収益源となった。ただし、この売上の反面姫達にもかなりの負担がかかっていた。
「私もう立てません。ここに住む」
「せめてシャワー浴びてから寝なさい」
「同意」
「ここまで疲れると流石に辛いですね…」
「私もここまでとは…」
「私はあまり疲れませんでしたけど…」
「体力ある人は羨ましいですねぇ」
「商人。営業とは歩くものとか言ってなかったか?」
「それはそれ。これはこれです」
シャルロット以外は全員疲れ切り、ルーモルトに至ってはキャンプ地宣言。アヴァロンとルンレイも訳の分からないことを口走り、カレンとエリザもあまり言葉を発しない。リリィも話したがらない様子だった。俺とマリも料理を作っていたせいでかなり疲れた。対応も一苦労だった。だがルンレイ達に聞かなければならないことがある。例の取り決めとやらだ。
「ルンレイ。アヴァロン。疲れてるところ済まないんだが、そろそろ教えてくれないか?例の話について…」
「そうですわね…。そろそろお伝え致しましょうか。アヴァロン。仔細を」
「端的に言えば私達が結んだ契約は…『劇の中の人物』になること」
「つ、つまり…?」
「彼らは私達に様々な支援をする代わり、私達に劇の中の人物になることを要求してきた。性格までは要求してこなかった」
「言うなればちょっとした悲恋の人物を演じろって言われてたわけですわ」
「ちょっとした悲恋…ですか?」
「読みたければどうぞ。一冊だけ拝借してきましたわ」
ルンレイが拝借してきたという劇団の台本らしきものには、プロットから台詞に至るまでとにかく詳しく描かれていた。物語としてはこうだ。ある日、子供の頃に婚約した幼馴染の令嬢と執事。しかし成長した令嬢には相応しい格を持った人物が現れ、執事との子供同士の小さな秘密の婚約は無残にも引き裂かれた。執事は忘れるべく仕事に集中するが、結婚した令嬢が夫に暴力を振るわれていることを知り、執事は貴族としての名前と格を積み上げて令嬢を救い出し、共に幸せな一生を過ごした。
確かによくある物語だが、それは演じ方や台詞にもよるだろう。シンプルでありふれた物語。だがこれを如何にして扱うかで物語はあらゆる方向へと伸びる。ふと、三匹の子豚を自分なりに書いてみろという授業を受けたことを思い出した。友人らが何を書いたのかは思い出せないが、自分が何を書いたのかは思い出せる。藁の家を作った子豚は何度も作り直せることを売りにして様々な家なき人々に作り歩いた。木の家を作った子豚は、藁よりも頑丈で腐った部分は作り替えればいいことを売りにしてもっといい家を欲しがった人々に作り歩いた。レンガの家を作った子豚は、様々な敵から人々を守るための砦を欲しがった人々に作り歩いた。狼は…子豚に食べ物や金、武器を作らせて、子豚達を守る為の兵士になった。ナイフを持ち、照準を敵に合わせ、確実に殺す弾丸になるために。例え死んでも別の狼が、子豚達がいれば何度でも建て直す。そして彼らは死の間際に理解する。残るものがあるのだと。ミームが。国家が。血統が。意志が。誇らしく死ぬ。それが自分の生きてきた意味であったのだと。
今思えば、なんともまあ酷いものだ。でも、それでも嫌いにはなれない。子豚も狼も。自分の物語も。
「つまり私達は物語の執事になっていた…と。物語通り考えるなら、この後に令嬢を救う白馬の王子様になっていたと?」
「その通り。但し、執事と言っても多種多様。自分なりの王子様を考えて補完しろってことですわね」
「なぜ言わなかったのです?」
「向こうとの契約だったから」
「あなた達のことですから、どうせ気張るでしょう?だったら最初は話さずにってことにしましたのよ」
「確かに下手な性格つけるよりかは確実かもね。色々な執事がいて、その内の誰か、もしくは担当した執事だけが自分の運命の皇子様…」
「夢見る乙女…か」
「私達には程遠い存在だね」
「さぁてね。それは未来の自分だけが知ってることでしょ。シャルロットも私も。他の皆も同じように、ね」
取り決めのおかげで大量に客が来たのは良しとして、問題の営業については可能な限りの話し合いをして導線の確保や回転可能な客数の固定化によって効率化することとなった。ブロマイドに関しても増産が間に合わないと言うことで枚数は限定。ただし転売屋対策に名簿の照会システムを導入し、購入先が分かるようにされた。これはこれで画期的だった。
「さて…明日があるので私は寝かせていただきますわ。皆さんは?」
「「寝ます‼︎」」
「え、ええ…。分かりましたわ…」
妙な結束感により生まれた言葉は、ただ寝るの一言だった。だが、俺達に与えられたのは睡眠時間などと言うものではなく、束の間の休息。仮眠時間と言っても等しいものだった。
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