中央発令室
2日遅れですんません!
学園生活2日目。少し硬いベッドから出て学食にて朝食を取る。アスパラのスープやパンが身に染みる。ルーモルトやシャルロット、エリザやカレンも一緒だったが、相変わらずリリィは帰ってきていないらしい。ではルンレイ達はどうしてるのかと言うと、学園の近くにある森でサバイバルして食料を現地調達。その場で食べて合流するという。カレン曰く、学園で生活していると闘いの感覚を忘れそうになるから。守護龍祭になる度にああなるんだと言う。
朝食を終えて身支度を済ませたところで会議室ならぬ発令室に向かう。そこには既に書類一式を揃え終わった面々が椅子に座り、朝日の逆光を背に受けて円卓を囲うように待っていた。俺達は空いている席に座り、昨日決めかねていたメニュー草案を見る。黒板の近くは書記としてシャルロットが。上座にはカレンが座る。そして扉は魔法により厳重にロックされ、防諜魔法がかけられた。
「同志諸君。よく集まってくれました。現在の状況報告を。公爵から順にお願いします」
「現在は加熱工程が少ない、もしくは油を比較的使用しない甘味を考案中。ただし今後の調達状況によっても変わるため、更に詰める予定だ」
「食材確保は我がファモーア家にかかれば問題などありません。調理器具については最新式の機械の導入を進める予定です。不足があるのならなんなりと」
「生徒会への協力取り付けに成功。今後の搬入ルートは特別ルートになりますね。私には面白い運搬法がありますので、ご期待を!」
「情報戦は今のところうまくいってますわ。報告は特にありませんわ」
「右に同じく」
「必要な部屋数の確保に成功しました。繋がった扉が存在していますが、目立ちにくい教室です。気取られる可能性は少ないでしょう」
「ありがとうございます。では今後のスケジュール案を発表します」
残り1週間と2日という短い準備期間。その間にやらなければならないことはギッチリと詰まっている。しかしカレンはうまく分散することで各自がバラバラになっても連携できるようなスケジュールを既に発案していた。いつ考えたのかは分からないが、これだけのスケジュールを管理するのは大変だったろうに。
今日はエリザとマリ、ルーモルトが手芸部の顧問に衣装の協力取り付けに行き、同時進行でカレンが外部協力者を何人かガウディから暇そうな奴を見繕う予定らしい。ルンレイ達は相変わらず情報戦…と思いきや何故か劇団部の何人かに協力の取り付け交渉に向かう。一応スケジュールが書かれた紙には武力交渉は禁止と書かれていたが、情報戦に長けている彼女達のことだ。あまり考えたくはない。
俺は発令室に残りリリィと共にメニュー考案に携わる。これは本当に悩みどころなのでしっかり考えなければならない。ジュースや機材だってタダではないのだ。リリィも商人の端くれ。黒字を出さなければ意味を成さないと意気込んでいる以上、俺も交渉しなければ行けない。こうして俺と難攻不落のリリィとのメニュー草案を賭けた戦が始まった。
「公爵様。言いにくいんですがこんなメニューじゃ黒字にはならないんですよ。もっと利益率を考えないと。粗利で儲かっただけじゃ話になんないんですよ?」
「分かってる…分かってるさ…。だがな?これ以上どうしろって言うんだよ⁈もっと安く買い叩くなりやり方はあるんじゃないのか⁈」
「市場価格に比べりゃ安い方なんですよ!こんな価格にまで下げてんですから折れてくれませんかねぇ⁈」
「だとしても無理だろ!原価率40%超えじゃ話にならないんだぞ⁈」
「そこを上手くするのがメニュー考案者の仕事でしょうが‼︎」
「あの…」
「何おう⁈そもそも商売人なら人脈最大利用してくれよ!」
「しましたよ!これが私の限界なんですぅ!」
「あのぅ…」
「嘘だろ…。マジでどうするよ…」
「残念ですが私は黒字を諦めませんよ。価格を吊り上げるか赤字補填の他のやり方を決めるかは公爵様のやり方次第ですがね」
「他国の要人。それも公爵脅すつもりかおどれは…」
「現に脅してますが何か」
「お二人とも。議論に熱中するのはいいですが、シャルロット書記の意見を聞くのもお忘れなく」
熱中していた俺達をよそに、シャルロットは静かにあははと苦笑いしていた。彼女の声も気づけないほど暴走してしまうとは…。
「あの…リリィさん。市場価格って言ってましたよね?」
「ええ。ですがこれ以上はどうにも」
「傷モノは入っていますか?」
「傷…モノ…⁈」
「はい。市場に出る果実とかはかなり綺麗なものが多いですよね?色が良くなかったりする傷モノ商品は朝市とかでよく売られています。それらをほとんど加工品にするなら問題ないのでは?」
「しまった…。私としたことが…!」
「機材も買うより似たようなものを作った方が早いと思います」
「作る?作るって言っても…」
「確かクラセフトは職人の国ですよね?ルンレイさん達やリリィさんの人脈があれば安く作って貰えるんじゃないのでしょうか?」
リリィは真っ白になって立ち尽くしていた。それが己の未熟さ故なのか、それは分からない。だが一瞬にして自分のセオリーを打ち壊された彼女は全てを出し切り、燃え尽きたボクサーのように床へ膝から崩れ落ちた。
「勝った!第三部完!」
「ハインド公爵もちょっと無駄が多いです」
「へ?」
「メインの大きい甘味が多すぎます。メインは2つくらいにまで絞って、あとは小さいものにしましょう。それと価格設定も…あら?」
俺も真っ白になって立ち尽くしてしまった。今まで必死に考えてきたものがあっという間に最適化されていく姿を見るのは気持ちいいものだが、バッサリ切り捨てられることの裏返しでもある。考案していたケーキやらシャーベットやらがバサバサ切り捨てられていく姿を見ると、苦労が全て消えていく気がした。ただ、同時に俺が感じたのは敗北感だけではなかった。一瞬にして最適化するだけの頭脳。最初、何故カレンが補佐に回したのか分からなかった。だが今ならわかる気がする。
「…謀ったな」
「私は何も謀ってなどいませんよ」
そう言いながら、得意げにする彼女の手にはいつのまにか紅茶が注がれカップがあった。信じられないほどの秘書気質。高い助言能力。農民時代があったからこその知識。それこそがシャルロット・イスカリオテという女性の正体だったというのか…⁈信じられん…。会って間もないとはいえ、ここまで脅威に感じるのは何故だ⁈
と、おふざけはここまでにして俺達は彼女の助言を貰いながらメニューを決めて行った。とりあえずメインとして残せたのは小さな1人分サイズのパフェとケーキだけだったが、ジュースやコーヒー、紅茶といった飲み物。サンドイッチやシャーベットなどは残すことを許された。あとは製法や機材のコストを上手く抑えるだけの仕事だ。
詰めに詰めて3時間後。定時報告の時間となりぞろぞろと外へ行っていた姫達やマリが帰ってきた。
「お疲れ様です。それでは午前定時報告を手短に」
「メニューはかなり絞り込めた。最終決定はスケジュールより前倒しする。早ければ今日の午後定時報告に間に合わせる」
「劇団の交渉は難航中ですわ。向こうさんにも予定がある以上、言質を引き出すにはもう少しかかりますわ」
「武力交渉ならいくらでもやる」
「手芸部の顧問には協力を取り付けました。まあ、半分はマリさんのおかげでしたが」
「あそこまで入り込むとは思わなかったねぇ」
「マリ。本当か?」
「ひとまずなんとかなったから大丈夫!衣装製作の目処がつきそうだよ!」
「あとは私ですね…ちょうど来たみたいです」
魔法により堅固にロックされた扉が開く。そこにいたのは、何人かのメイド。そしてカレンやエリザと非常に醸し出す雰囲気が似た若い黒髪の執事だった。
「紹介します。政府機関ガウディ、迎賓館所属。トサエル一族が1人」
「クラウドです。お気軽にクラウとお呼び下さい」
「クラウドはトシュメロ連邦国際執事連合にも所属している一級品の仕事人。彼を基軸に、私達は執事としての基礎、及び態度を叩き込みます」
「よろしくお願いします。お嬢様」
クラウドは爽やかな笑いをこちらに向けてきた。これが若さか…。そして、少しずつだが役者が揃いつつある。以降の定時報告及び会議では今後の話し合いが行われた。
執事服の製作は元からある型紙など一部を流用して作る量産計画が持ち上がっている。何故かは分からないが、なんでもマリに裁縫魔法を使わせたら隠れた才能を持っていたようで手芸部の顧問を驚愕させたらしい。よって以降の衣装担当はマリとエリザベートが対応することになった。更に幸運にも手芸部の手が空いていたこともあって、量産ペースを上げられることが発覚。2日で作り上げ、3日目に最終調整を終わらせられるプランになった。
劇団部員を借りることについては、ルンレイ達からの詳細な報告から、一応空いた時間の一部にという中途交渉の段階では出ているらしい。ふと何故借りるのかをカレンに聞いたところ、演出とは、ただリアリティだけのものであってはならない。フィクションと混ぜ合い理想と現実を曖昧にすることで、対象をこちら側の世界に引き込む必要がある。そのためには小道具を含め実力派である劇団部員の力が必要になるから、だと。よく考えてるもんだ。
メニューは現在の添削された修正案に多少の加筆を加えるのみで良しという意見が全会一致で可決されたため、そのまま通すこととなった。これにより、俺の仕事はリリィやカレン達と共に機材や食材の確保へシフトした。また、一部機材についてはルンレイとアヴァロンのツテを使わせてもらうことになった。必要なものをいくつか提示したのだが、運がいいことに生産可能な機材がほとんどで、使わなくなっても回収・再利用を想定できるらしい。なんてありがたいんだ。クラセフト王国は…。こうして午前定時報告までの段階では、全くこれと言った問題は発生することはなかった。情報戦に対してもルンレイ達が対応しているため、問題はなかった。
だがその時は唐突に訪れた。俺達は発令室でリリィが通信魔法による商談を続けているのを見ながら、スケジュール管理やクラウドにやってもらう4日間即席執事養成セミナーについて話し合っていた。しかし、俺の中でただの書記から有能秘書へと格上げになったシャルロットが紅茶を淹れに行ってから帰ってこない。少なくとも15分はいなかった。商談を終えたリリィがちょっと探しに行ってくると言ってから数分後、ドタドタ走りながら呼びに来た。学園の魔法訓練施設で、シャルロットが襲撃を受けていると、青ざめた顔で言いながら。その言葉を聞いた瞬間、俺達は直ちに現場へ向かった。
「何が起きたのかさっぱりわかりません!詳細な状況を!」
「はぁっはぁっ…!だからっ…はぁっ…!閉じ込められたみたいなんですよ!しかも戦闘してるみたいで!」
「閉じ込められた⁈戦闘中⁈」
「この学園の魔法訓練施設は魔法学の実践中、魔法が暴走した時に備えて強固なシールド魔法の魔法陣が配置されています。中に入るのは訓練時のみ…。更に特定の暗号を持った教師陣しか、本来操作できません。物理的干渉は不可能に近いのです」
「じゃあまさか…⁈」
「思ったより早く実力行使に出てきましたね。始末するつもりなんでしょう。シャルロット・イスカリオテを」
カレンについて行った先。そこでは確かに立方体に強固なシールド魔法が張られていた。そしてその中では小柄な体格に見合わない巨大な訓練用と思われる質素な大剣を振り回し、謎のドラゴンらしき4速歩行のモンスターと渡り合っていた。
俺達も加勢すべく、中への強行突入を仕掛けたがカレンやリリィの攻撃は悉く弾かれた。俺も攻撃すべきと腰に手をかけたが、撃つことは出来なかった。ここで銃を出すのはマズイなどという考えではない。この展開されているシールド魔法を破壊するだけの威力が今のマグナム弾にないと確信したからだ。
しかしだからといって何もしないわけにもいかず直ぐにシールド魔法を管理している魔法陣がある場所のひとつへ向かったものの最悪なことが判明した。カレンが調べたところ、管理魔法陣は完全に書き換えられてしまっていた。俺が書き換えてどうこうの問題ではない。そもそも特定の暗号キーがなければ外部干渉が不可能なシステム。おまけに犯人は誰かが強制解除しようとした場合に備えたのか対象者に物理的なダメージが入るよう設定されていた。こうなっては手出しできない。俺が強制解除するのは問題ないが、それがトリガーとなって中にいるシャルロットに危害が発生するとも限らないのだから。
一方で、シャルロットはその小柄な身体で未だ戦い続けている。まるで体力に底がないように。
「凄い…!あんな小さな身体のどこから来てるんだ⁈」
「あれが…シャルちゃんです」
「ルーモルト。遅かったですね」
「すいません。上手く抜け出すのに苦労しちゃいまして。先生たちには報告済みです」
「どう言うことだ?」
「ハインドさん。知っての通り、シャルちゃんには私でさえ知らない経歴が沢山あります。でもその中でも異質なのが、あの力。それにシャルちゃんは…一部の魔法が使えないんです」
「…つまり?」
「シャルちゃんに備わっているのは、あの際立った身体能力。それと火魔法、光魔法だけなんです。理由は分かりません」
際立った身体能力。それだけじゃない。高い戦闘センスもあるだろう。そうじゃなかったら人間とは思えない動きで、あんな自分より大きな相手と戦えるわけがない。相手を斬りつけ、受け流し、打撃し、足払いし、挙げ句の果てには挑発すらしている節がある。敵は怒りに身を委ねて巨体で暴れるが当たる様子すらない。小柄な身体を最大限に使い、最小限のエネルギーで戦っている。ルンレイやアヴァロンが対人戦闘のプロならば、シャルロットは対モンスターのプロだな。
しかし…気になるところもある。映像ではあんな派手な戦い方をしていたにも関わらず、今の彼女のやり方は生ぬるいと言っても過言ではない。何かあるのか?
「眺めるだけしかできないのが歯痒いですね…。せめて援護できれば…!」
「違う…あの中に入るのは危険過ぎる…」
「ルーモルトさん?」
「リリィさん。シャルちゃんは…まだ本性すら出していませんよ」
その瞬間だった。派手な金属音と共にドラゴンの首がとられていた。シャルロットは返り血すらついていない。
「…まだシャルちゃんが拾われたてで、私が小さい頃の話です。旅行に来ていた私を助けてくれたことがありました」
賊に馬車が囲まれて、護衛も苦戦していた時です。村に冒険者が残していった錆びた大剣を担ぎ、つぎはぎだらけの服を来て、彼女は現れました。戦いが終わった時、返り血はついていませんでした。魔物や賊がよく出る農村。水も満足に使えなかった。シャルちゃんにとっては、返り血を洗うだけの水も無駄には出来なかったんです。
いつしかシャルちゃんは戦うことで畑を守り、生きる道を選んでいたんです。自分に与えられた力は神様からの贈り物。お母さんと畑を守りなさいって渡された力なんだって信じて疑いませんでした。
それから数年後には、私とシャルちゃんの交流は多くなりました。水路も私達が拠出した資金で仕上がって、畑は潤いました。もちろん、そんな農村なので、まあムカつくクソ野郎もいたわけです。子供のやることなので大した事件でもありませんでしたが。でもその時にのした事件の首謀者にかけた言葉、今でも忘れていません。
『喧嘩の値踏みもできない男が大将面するんじゃねぇ!』
「この一言がシャルちゃんがよく分かる言葉だと思います。今のシャルちゃんは本気なんて出してない。遊びです」
「あれが遊びかよ…⁈」
「…シャルロット・イスカリオテ。興味が湧いてきましたね」
「冗談を言ってる場合ではなくなってきましたよ。見てください。連続召喚魔法陣です。あれも訓練用ですが…強化されています。学生が使うレベルではありません」
そんなことを言いながら、カレンは魔法陣をいじって何とかすべくクラッキングしていた。見た感じだと凡ゆる直接ルートを避けて物理ダメージを避けつつサブルートのみで攻略せんとしていたようだが、おそらく無理だ。時間がかかり過ぎる。
しかし防御結界内のシャルロットは全く焦る様子もなく、かと言って諦めているわけでもない。囲まれているにも関わらず、何故彼女は落ち着いていられるのだろうか。そしてシャルロットから感じられる力はどこかで似たようなものを俺も知っているような気がしてならなかった。
「数にモノ言わせるのだけが戦いじゃないのに。面倒になっちゃったなぁ」
「シャルロット!今カレンが管理魔法陣を攻略している!教師陣も来るはずだ!持ち堪えてくれ!」
「持ち堪える?ハインド公爵。違いますよ。早い話、数が来るなら素早く数を潰すに限ります。迅速に勝る対処法はありません。せっかくですし、少し面白いものをお見せしましょうか」
「冗談言ってる場合か!来るぞ!」
だがシャルロットは俺の声が聞こえていないかのようにニヤニヤと笑いを浮かべていた。そして敵が一斉に飛びかかると同時にシャルロットは大剣を投げつけた。それはブーメランのように特殊な軌道を見せつけ、敵を無惨にも斬りつけていく。威力は凄まじかった。連続召喚魔法陣から無尽蔵に出てくる敵をいとも容易く撃破していった。
「威力は凄いんだけど戻ってくるまでがまどろっこしいんだよね」
そう言ってシャルロットは戻ってきた大剣を手にして再び斬りかかりに行った。映像で見た不可視の衝撃波を発生させ、次々と倒していく。そこに鼻ちょうちんを浮かべていたあの顔はない。今ここにいるのは、シャルロット・イスカリオテ。その本性だ。
しかし意外なのが、彼女の使っている大剣が戦闘中全くダメージを受けていないことだ。どこかガタが来ているわけでもない。刃こぼれもしていない。あれだけの大技を使っておいて、未だ壊れる様子がない。それだけ素晴らしい大剣かと思ったが、そうと言うわけではない。よく見てみれば所々傷があり刃こぼれもある。学生の訓練用なのだから、それくらいは当たり前。だがシャルロットが使っている時に限って壊れたり傷つく様子はない。何故だ?
「なんであの大剣が壊れないんだ?って顔してますね。ハインドさん」
「そりゃそうだろ…。いくら訓練用に頑丈に作られていたとしてもあの強度は…」
「ふふん。では種明かししましょう。あの大剣はエンチャントに適合する金属では作られてません。しかしそれはかつてシャルちゃんが使っていた錆び剣と同じ。じゃあどうやって強度を上げたか?答えは一つのみ!光属性魔法を纏わせて無理矢理戦えるようにしている!」
「…エンチャントと違うのか?それ」
「エンチャントっていうのは剣自体に効果を持たせる魔法です。シャルちゃんは違う。剣の周りに光魔法を塗料みたいに塗りたくって強制的に戦えるようにしてるんです!」
「なるほど。コーティングみたいなものか」
いや仮にそれが正解だったとしても力技過ぎる。何ちゅう方法で戦ってきたんだ。
生き残るため。そして守るべきものを守るために独学で学んできた結果であるのは間違いない。だがその発想に至るまでを聞いてみたいものだ。俺だったら、そんなやり方を思いつくまでどれくらいの時を待たなければならないのか想像がつかない。
気づけば教師陣が到着し、カレンが途中まで突破した道を引き継いで魔法陣へクラッキング攻撃を始めた。別の教師陣は何とか物理的に防御結界を破壊すべく様々な方法を模索し始め、周囲に立ち入り禁止区域を作り始めた。しかしそうこうしている内にもシャルロットは押されていた。無尽蔵に沸いて出てくる敵。倒された端から光になって消えていくが、その度にどんどん出てくる。倒した数に対して出てくる数が尋常じゃない。流石のシャルロットも顔に余裕が無くなっている。集中力が切れてきたのか、剣に纏い続けてきた光魔法にも揺らぎが出てきた。
「シャルちゃん!あとちょっと!あとちょっとだけ耐えて!」
「頑張れシャルロット!絶対に死ぬな!」
「ハァ…ハァ…。ルーちゃんに言われちゃ…ハァ…かっこつけなきゃいけないよね…。さて…と」
シャルロットは再び敵に囲まれる中、静かに息を整え始めた。あろうことか、剣に纏わせていた光魔法すら解除してしまった。
「ルーちゃん。私に使える魔法は2種だけ。光と火だけって言ったよね。でも今まで隠してきた魔法があるの」
「隠してきた…魔法…?」
「そう。異端と言われた魔法。たぶん、光と火は違う『何か』のおかげ。私自身の魔法…それは…」
先程よりも大量の敵が一斉に飛びかかる。今度こそ終わったと思った。言葉は遮られ、魔物にシャルロットが食われる。だがそのイメージとは裏腹に団子状態となった魔物が弾き飛ばされた。そして、見たことのある光と音がその場にあった。
俺が感じていた力。どこかで分かっていたような既視感。シャルロットの周囲に広がる魔法。エンチャントに適合しないはずの剣に走る、光魔法ではない光。そうか…彼女は…!
「異端の魔法。この世に扱える種族が何人いるかも分からない力。でも私は昔から好きだった。嵐と共に来て私を怖がらせてきた自然の力が、私に宿ってると知った時は特にね。激しい一撃を秘めた、地を揺るがす究極の力…雷属性魔法。ルーちゃん。これが私の本当の力よ」
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