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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
7人の姫達
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重戦闘艦 加古

もう一話 更新予定です

 

 綺麗な海。青い空。そしてごった返す人の数々。そこにはいかにも港といった場所があった。巨大な帆船もいくつか停泊している。中には帆ではなく魔法で動くのであろうタンカーのような木造船もある。この世界の船は何で動いているのか、少し気になるところだ。

 しかし俺が向かったのは誰も来ないような、港から離れた静かな場所。周囲は森と砂浜しかないが、開拓すればリゾートホテルも建設できそうな場所だ。が、砂浜故に艦に乗り込むのはほぼ不可能。護岸工事を行うわけにもいかないのでまずMK-35を再生成。トラックから荷物を全て移し変えてトラックは魔力化。マリも乗ってもらい少し離れた沖合まで飛ぶ。


「マリ。下は誰かいる?」


『誰もいないから大丈夫かな』


「よし…」


 そのまま真下の沖合に多目的重戦闘艦『加古』を生成開始。そして数分もしないうちに姿を現す。黒鉄の城。数々の最新技術とそれに伴う抜本改造により未来化を進めた最新鋭艦だ。


「着艦体勢に入る。マリ。衝撃に気をつけて」


「りょーかい!」


 対潜・対空警戒用のヘリポートへ着艦した後は片っ端から荷物を出して生活用艦橋へ持っていく。少し遠かったが、なんとか全ての荷物を移し変えたあとはMK-35も魔力化。早速、制御系統を司る第一艦橋へ向かう。


「すごいよケイ君!こんなの作れちゃうの?」


「作れちゃうの」


 驚きながらついてくるマリを後ろに第一艦橋に到着した俺はまずGPSを起動。リンクが確認できたあとは艦を制御する量子式AI『古鷹』を起動。不可思議と繋いで位置情報を取得して地図を入力。最後に航路を設定して出航準備は万端。

 次に武器制御系統を司るCIC艦橋へと向かった。ここも基本的に古鷹が対応する艦橋ではあるのだが、武器系統は色々と追加したこともあって勝手には使えないようにしてある。まあ俺の命令一つで自動迎撃ができるようにはなっているが。ちなみにこれらのシステム構成はイージスシステムを元に作ったのだが、素のイージスシステム自体はどうにも反応速度や武器システムの複雑さ等がネックになった。なので新開発された2080年に開発された日本製武器統合システム『イザナギ』を搭載している。基本的にコレは半自動がサブであり大抵は自動モードなのだが手動モードがないのが特徴だ。機械的に脅威かどうかの判断に加えて人間による判断も加えられる。はっきり言って、この世界でもイラン航空事件を起こさないとは言い切れない。脅威判定くらいは機械に任させてもらう。あの事件については、俺から言わせて貰えばあんなものはヒューマンエラー以外のなにものでもないと思えるが。

 さて。大体の準備は終わった。だがこれでも全てバッテリーによる予備電源で賄っている。最後に機関室にある大型FCジェネレーターを起動する必要がある。クーガーに装着されてるものと同じではあるが、出力としてはこちらが上だ。


「機関室機関室っと…」


 機関室に向かったらFクリスタルを二つ生成。専用の共振装置にはめ込んで起動し共振させる。すると一気に電力が供給されて暗かった艦内が明るくなった。やはりFCジェネレーターはすごい。Fクリスタルさえ壊れなければ半永久的に動かせる。共振装置自体は単純な構造なので俺じゃなくとも修理は容易だ。


「よし。これで行けるな」


 再び第一艦橋に戻る。しかしそこにマリの姿はない。艦橋外に出てみると転落防止用チェーンの近くで海を眺めていた。


「綺麗だね…」


「…そうだな」


 ごつい武装艦に立つワンピースのような服に身を包む自分の伴侶。これが平原とか街なら健気に生きる庶民の町娘に見えるのだが、武装艦ともなると背中に艤装を背負って戦っていそうだ。


「私、海って見たことなかったんだぁ…。とっても綺麗…」


「あー…あまり元の世界の海は綺麗じゃないから見ない方がいいぞ」


「そうなの?じゃあ、この海は汚さないようにしなくちゃね…」


「ああ…そうだな…」


 潮風にあたりながらゆっくりとする俺達。こんな日が来るなんて思ってもいなかった。隣には初恋の女性。海に浮かぶのは軍艦。ミスマッチ過ぎるが気にしない。


「よし!ケイ君!ケイ艦長!出発進行!」


「はいはい。そろそろ行こうかね」


 2人で第一艦橋に入って古鷹に出発進行を指示。機関室に電力が送電され1基2軸とも呼べる可変ピッチプロペラを採用したスーパーキャビテーションスクリューが動き出し、加古はGPS測位情報と予定航路に従って動き出す。更に自動迎撃モードが起動しアクティブ・パッシプレーダー共に機能し始めた。


「全機関全速前進!」


「よーそろー!」


 かくしてハインド騎士団初となる海上戦力、多目的重戦闘艦『加古』は俺達を乗せてトシュメロ連邦へと航路についた。海路はとても穏やかで、この先変な天候にさえならなければなんとか行けそうだ。波浪に強い船体にはしてある。ここは日本の技術を信じることにする。

 さて。自分で作っておいてスペックを把握できてないのもなんだからしっかり確認しておこう。無我夢中になると、全体を忘れて細部にこだわり過ぎるのが俺の悪い癖だ。こだわり過ぎて説明文になってるし。まあいいか。


 えーと?まず船体の幅が22m、吃水6.5m、全長190m。バルバス・バウの追加とそれに伴うバウスラスターの増設。船体の使用金属は大気圏再突入にも耐え得る特殊合金を採用。水防対策も考慮された防御機構、グリフィスを採用。そういやそんなもん入れてたな。

 機関はFクリスタルを利用したFCジェネレーターを主軸とするエレクトリック・ストレージ方式。予め電力をFCジェネレーターにより発電、大容量・高出力な大型バッテリーに蓄電。航行用タービンは低速から高速まで自由に切り替えが可能な可変トルクギアを採用。スクリューは可変ピッチ式スーパーキャビテーションスクリューが採用されている…か。最大速力は弾薬食料満載で48ノット。

 武装は…主砲の20.3cm砲は改造され完全無人化・自動化が実現。内数基ほどは速射砲やレールガンに切り替え済み。魚雷は有線の35式水素魚雷を採用。煙突部や一部艦橋が小型化した代わりにCIWSや対空VLSが多数搭載してある。対潜水戦用として音響迎撃魚雷の他に高エネルギー低周波による水中音響兵装も搭載している。我ながら過剰戦力だな。

 カタパルト部は無人ヘリが出撃可能になっており、哨戒中は加古より無線給電を受けながら対潜・対空警戒を行う、か。レーダーやアクティブ・パッシブソナーは全て西暦3000年代のものを採用。小型ながらも精密度は非常に高く軌道計算システムと連動している為、動目標に新造された55式20.3cm3連装砲で30km先までなら確実に当てられるほどである。すげぇ。

 内部は豪華にされ広いキッチンはもちろん巨大冷蔵庫から逆浸透型浄水器、ふかふかのベッドや和式の部屋まで存在しており、落ち着ける環境となっている。もちろんCIC艦橋も存在している。


 …内部はともかく、こだわり過ぎだぞ過去の俺。細部にこだわり過ぎたせいで全体がおかしいだろコレ。まあ…いいか。自衛の為に使えばいいんだ。いざという時に自分とマリを守れなかったら意味がないしな。

 そんな言い訳を考えながら、俺はトシュメロ連邦へと向かった。


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