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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
7人の姫達
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トシュメロ連邦

 

 天候に襲われることもなく、準備段階で買っていた生鮮食品も大型冷蔵庫のおかげで長期保存できた。海中にモンスターが現れることはなく、危惧していた海賊も現れることはなかった。何より風呂を設置しておいて良かった。暇過ぎて魚を釣っていたら汗をかいてしまったのでさっぱりできた。

 交差していったいくつかの木造船には変な目で見られたが、手作りで作ったアルスの旗を掲げていたら何ともなかった。ちょっとした好奇心で日の丸も掲げて航行してみたが何の反応もなかった。残念。航行中、謎の大型飛行物体を捕捉した迎撃システムが戦闘態勢になったこともあったが、そのままどこかへ消えてしまったので事なきを得た。あの時は生きた心地がしなかったな…。


「と、まあ色々あった4日間でしたが!」


「トシュメロ連邦に到着ー!」


 アルスとはまた違った雰囲気で賑わっている港。最初は怪しまれたが、アルスの旗を掲げていたおかげか空いていた停泊所に木造船に乗っていた人が誘導してくれた。今は停泊所に加古を止めて錨を降ろして外に出る準備をしている。外では加古を見て何やら話している人でいっぱいになっていた。

 加古の停泊時用トラップを起動。簡易階段が桟橋にかかり俺とマリが降りるとひとりの立派な身なりをした女性がこちらに来た。


「失礼ながら…アルス王国の公爵、ハインド・ウォッカ様とマリー夫人でしょうか?」


「ああ」


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


 女性が案内してくれる先には馬車が数台あり、従者達は俺達の荷物を馬車に入れて俺とマリはまた別の馬車へ一緒に乗せられた。

 しかし色々と準備をしているのか出発しない。とりあえず加古を停泊させておくわけにもいかないので不可思議を使って加古を制御。ある程度の沖合まで進んだところで魔力化した。


「お待たせしました。これより御二方の迎賓を賜っていますトサエル国へ向かわせていただきます。私はカレン・トサエルと申します」


「トサエル…同じ名字みたいだけど?」


「私は側室の姫…いえ、騎士に過ぎません。お気になさらず」


「分かりました…」


 なんだか少しお固めな感じな人だな…。

 馬車が出発し、トサエル国とやらに向かうことになった。後ろを見ると荷物を馬車はしっかりとついて来ている。どうやら本当に正規な出迎えだったらしい。良かった。


「あー…何と呼べばいいかな?」


「カレンで問題ありません」


「カレン。トサエル国とはどういう国だか教えてくれないか?」


「トサエル国は麦などの主要穀物に加えて香辛料を栽培、輸出しています。軍備は連邦側で整備してますので公的な軍組織は存在していません。恥ずかしながら現在は私が代表を務めています」


「あなたが代表を?」


「はい。現在、我が国王は隠居という形になってます」


「何か重篤な病なのか?」


「いえ。そういうわけではありません。既にご高齢なのです」


「でもカレンさんは代表なんでしょ?」


「私は…所詮、側室の子に過ぎません。正式には正室の御令嬢が継ぐことになるでしょう」


「御令嬢…ということは既に継げる立ち位置にいるのでは?」


「御令嬢からの命令により、私が代表を務めている状況です。現在ある問題を片付け次第、解任される予定になっています」


 何かあまり聞いてはいけないことを聞いたような気がする。ただ、少しばかり不自然なところもある。

 その御令嬢様とやらはなぜカレンを指名したのか。単なる嫌がらせならともかく、現在ある問題を解決すれば解任される…というのはおかしいだろう。問題が何かは分からないがそれを解決すればカレンの名声になる。仮に選別した人間が凄かった、と後から付け加えたところでそう簡単に国民がなびくとは思えない。なびいてしまうとすれば、それはジョシュア並みのカリスマ性がなければできない。その御令嬢によほど自信があるのか…或いは本当にカレンに代表を務めさせる為のものなのか。

 …余計なことは考えないで行こう。まだ初日なんだ。変なことに首を突っ込まない方が身のためというもの。楽しく行こう。楽しく。


「他に何かご質問はありますか?」


「ああ…実は、俺はまだ新任なんだ。どういう日程になっているのかを教えて欲しい」


「2週間はトシュメロ連邦各国に回って頂くことになっています。残りは連邦立の学校へ行き、4週間は交流会が行われます。この交流会は何人かの組み合わせが1つ作られます。その組み合わせの方達と行動を共にして頂きます」


「2週間は国家間交流みたいだが…4週間は学校との交流か」


「4週間はあまり緊張なさらないでください。学校内部はもちろん、校外の方々や国民も楽しまなければならない祭事です。仕事だと固くなり過ぎないようお願いします」


「分かった」


「お祭りがあるの?」


「はい。詳細はまた後日ご説明いたします」


 2週間は挨拶回りって感じか。その後は祭事。大雑把過ぎる予定だが、何をすればいいのかが分かればまだ何とかなる。しかし祭りか…。屋台か何かあれば食べてみたいもんだ。俺が行ったことがある国といえば今のところエヴィロイドだけ。アレックドールは抜く。依頼とかで行っただけで大した観光もしていない。


「…ねぇカレンさん。その問題ってどんなのがあるの?」


「主としては税率、徴兵、貿易などが挙げられます」


「解決策はあるの?」


「それなりに草案はありますが実現には未だ至らず、 と言ったところです」


「…『兵は拙速を聞くも未だ巧久なるを賭ざるなり』」


「それは…?」


「完璧を期して事を長引かせるより多少拙くても速やかに進めた方が良い、という教えです。その草案、それなりにできてるんですよね?」


「はい。ですがいくつかありますので一概にこれがいいとは…」


「この世に完璧なんてありません。どれも一長一短ではあると思います。ですが予算と時間を削るだけで何の意味もありません」


「しかし…」


「私は政治については素人です。何も分かりません。ですが実行したことによりどうなるかを考えてみるのもいいと思います。良い面が悪い面を上回ったらそれで良し。逆だったら修正する。それを速く行えばいいんです。仕事は増えるかもしれませんが…」


「…確かに吟味する時間が少々長過ぎたような気がします。…私としたことが、攻めっ気が足りなかったようです」


 ふむ…まさに『始めは処女の如くにして敵人戸を開くや後は脱兎の如くす。敵拒ぐに及ばず』だな。反論させずとにかく一気に説得させた。まあ政治ってのは長期的な目で見る必要があるからこの教えは少し合わない。だが、政治屋ってのはどうしても長期的な面ばかりを重視するあまり吟味する時間が長過ぎて結局時間が増えていく。本来ならその時間を別に組み込めば他の議案に回せるものを。回転率も大切だ。

 日本の国会運営も億単位でかかる。何もコスト削減しろとは言わない。官僚達だって責務をしっかり果たしている。ただ、その億単位という大金に見合う責務を本当に全員が全員果たしているか、という問題がある。大体一議員に一日数万円近くかかっているというのに国を背負っている自覚があるのかよと。そういうわけだ。


「議会制度ってあるのか?」


「私のような王族の権力集中を防止する為に各機構に採用されています。確実に働いてるかと聞かれれば、あまり良い返答はできかねませんが」


「貴女が意見できる範囲は?」


「行政と法の作成…この辺りですが、一議員としての扱いですので、大した発言権はありません」


 聞いた感じでは立憲君主制っぽいな。その中で行政や立法に少し意見ができるみたいだ。

 立憲共和制も決して悪いわけではないが、何せ後者は安定性がない。100年、200年と考えると何だかんだ言って前者の方が長く続く。変革に乏しいのが欠点だが、何度も何度も繰り返し情勢が変わってたらたまったもんじゃない。それに…立憲共和制は大統領に権力のほとんどが集中する。議会という防止装置があるから大丈夫、などという甘い考えはよろしくない。変革しやすいと言うことは逆に壊れやすいことも意味する。

 そう考えると、金ごときで言い合いをしている方がよほど平和だ。下手に権力が集中しない以上、敵に戦争を仕掛けるような真似もしない。『主は怒りを以て師を興す可からず。将は憤りを以て戦いを致す可からず』だ。

 当たり前だが俺は政治については同じく素人だ。ちなみにとある世界では的確なタイミングで共産主義的政治宣伝してたり、UVに昇格したからコンピュータ様をぶち壊して都市そのものを廃墟にしたりした。あとドールを宇宙戦仕様にさせて隕石押し返したりとかしてたが今となってはどうでもいい。いや…アレだけは最後までセッションしたかったな。

 

「少し長くなってしまいました。外をご覧になって下さい。トサエル国では最大規模。連邦内でも主要部都市…ヴォルガ区です」


 窓の外に広がっていたのは、様々な屋台市。そこで生活する沢山の人々。中には賭博のようなものまで存在している。だがなによりも…アルスで見るよりギルドの建物が多い。マークが彼方此方にある。おそらく、アルスよりもギルドの影響が大きいのだろう。

 アルスは確かに巨大な国家で王も少しばかり甘いところがある。が、市民権やら何やら意外と書類管理の観点から見るとアルスは法が厳し目な国家とも言えるだろう。絶対君主制に近いシステムとはいえ人民保護を優先にしている節がある。ギルドもここに比べればかなり小さい。普通こんな世界に市民権なんてあってないようなものだ。どういうシステムになってるかは分からないが、IT技術もないのによく運用できるものだ。


「ギルドってこんなデカいんだな…」


「国によって様々です。トシュメロ連邦全域に対応しているのがこのギルドです。いくつか支部もありますが、この辺りで本部といえばあの建物を示します」


 カレンが指し示した方向には巨大な建物があった。アルスに現存しているものより更に大きい。周囲には冒険者らしき人が出入りしているのがよく見える。ハントしたモンスターを担ぎこむ人もいる。俺が考えていたギルドとはまた違った側面がそこにあった。


「アルスはさほど大きくないが…」


「恐らく分散配置しているのではありませんか?」


「分散配置…?」


「我々のように全ての処理を行うような巨大な本部はあまり見られるものではありません。むしろ中、小規模なギルドを各地に配置する分散配置する方が普通です。トシュメロ連邦の場合、制約や様々な理由でギルドの建設ができないことがありました」


「それを補うための巨大本部か…」


「特にこの地区ではハンターや冒険者が多く、加えて飛行船の発着場もあります。連邦が運営している中でも最大の物流拠点でもありますので」


「そんなに輸出入してるのか?ここで」


「はい。輸出入はもちろん、ギルドによる他国支部への物資搬出にも使われます。飛行船自体は民間企業のみですが、物流拠点自体の整備・運営は政府主体となっています」


 いや…なんというか、物流システムの構築度が高すぎて笑えない。高度な物流がある自体驚いたことではあった。郵便馬車やら色々とあるからな。だがそれ以上に集配センターのような役目を果たす機能があることが更なる驚きだ。俺が思っている以上にこの世界の物流システムは整備されている。通販があってもおかしくないだろう。


「他にも紹介するところは多々ありますが、時間が来てしまいましたのでまたの機会に話させていただきます…」


 馬車がゆっくりと止まり、従者が扉を開ける。外に降り立つとそこには見漫画とかでしか見たことがない立派な建物がそこにそびえ立っていた。


「改めて御歓迎します。ここはトサエル国政府機関『ガウディ』。ようこそ。トサエル国へ」

書き溜めはこれで終わりです。9月中に1.2話更新する予定です。

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