合流
また1日遅れてしまいました・・・。
そろそろ更新スピードがキツくなってきてます。
転送された先は深い森の中。俺が一番最初に来た場所に比べれば、木漏れ日があり風が吹く春の陽気に包まれた、とてもいい場所だ。
微かに香っている血の匂いという、ただ一点を除けば。
「血の香りが微かにくるか」
「反乱軍はどこに?」
「恐らく、地下武器庫だろう。私が負傷したあの日から数日程度ならば、地下が見つかるはずがない」
「なら早く行かなければ。時間が惜しい」
「ああ。それより、その仮面は何とかならないのか?」
「この仮面をつけている理由が、全く分からないとでも?」
「・・・介入の痕跡を残さない為か」
「ご名答」
ロイスは前を向くと身体強化魔法を発動し、素早く森の中を走り始めた。俺はというと、抹消迷彩を発動して走っている。気づけばロイスの後を追いかける形になっていた。
木の間を通り、時には衝撃波装甲の応用で足元に爆発を起こして木の上に飛び上がり、モンスターとできる限りエンカウントしないよう回避しながら走り続ける。
探し始めて体感で1時間ほどたった頃、枯れた小さな滝壺の奥底に粗末な縄ばしごを見つけた。
ロイスによると臨時で造った武器庫で全く使用していないらしいが、可能性がなきにしもあらずなのでゆっくりと降りていく。
さほど深くはないが、先程の森よりは光が届かない滝壺。縄ばしごが終わり、足をつける頃には血の匂いが更に強くなっていた。
「酷い匂いだな・・・」
「血、だけではない。恐らくモンスターの血も含まれている。何とか食い凌いできた証拠だ」
「ロイスさん。アンタ、血の匂いが分かるのか?」
「ああ。Aランクハンターともなれば尚更な」
「Aランクハンター・・・?アンタまさか」
「・・・誰だ」
トーンの落ちた低い声。出てきたのは左腕を失い、粗末な治療だけで済まされた男だった。
包帯を各所に巻き、隠すように顔に巻かれた部位に至っては吐血のようなもので血みどろになっている。
右手に握っている剣は刃こぼれし、その3分の2は既にない。
ただでさえ傷つき、産まれたての子鹿レベルの立ち方。正直言って生きているのが不思議なくらいだ。
「反乱軍幹部、ウィグだ」
「幹部・・・だと?今更、反乱軍に再びやれと言うのか⁈」
「待て。そうではない」
「なら降伏か⁈ああ!ならいい!堕落した政権に尻尾を振って生きた方がマシだ!いや、戻ったところでまた拷問か。・・・ククッ」
不気味な笑い声。その笑い声は乾いた血を撒き散らしながら、滝壺に響いた。
「幹部も、王も知ったことか・・・!俺は、俺であり続けるためなら・・・」
あぐらをかき、右手に握っている剣を己に向ける男。瞬時にある結末が、俺の頭の中でリアルに映り込んできた。考えている暇なんてなかった。
テーザーガンを生成し、止めようとした。苦痛があるとか無いとか、そんなことを鑑みることは無駄だった。
撃ち込もうとした時には、剣は既に男の腹部に刺さっていた。男は何一つ、さけび声すらあげることなく逝った。
その顔に張り付いていたのは、恐怖。ただ怯え続け、その果てに辿り着いたものは簡単なもの。
己が己で在る為に、自ら死を選んだ。
「こんな結末・・・認めろってか?ふざけんなよ!これが、これが人のやることか⁈」
「彼の死を無駄にはしない為にも、仲間を探す。ついてきてくれ」
「ああ・・・」
枯れた枝木に軍事用ジッポライターで火をつけ、彼の前に刺しておいた。本当なら線香を使い、弔うべきなのだが、彼のような人を出さない為にも今は前に進むしかない。
滝壺の中を歩いていくと、声が聞こえてきた。霞むような小さな声だが、女性の声も聞こえくる。
焚き火で照らされた場所へと歩みを進めていくと、そこには20人程の人が身を寄せ合っていた。
「ウィグ?ウィグか⁈」
「ああ」
「帰ってきた!帰ってきたんだ!皆!幹部が帰ってきたぞ!」
ウィグに群がる反乱軍の人達。俺はウィグに紹介してもらい、持ってきた食料と共に回復魔法の魔方陣が描かれた使い捨ての紙を配布。
士気は何とか立ち直るギリギリになるまで戻すことができた。
「で、そのアンタは何者なんだ?」
「ああそうだ。ウィグに紹介してもらったけどよ。名前も知らねぇし」
「悪いが、ちょっとした理由があってな。名前は控えさせてもらう。その代わり、俺のことはビッグ・サルとでも呼んでくれ。キング・ワニでもいいぞ?」
「あ、ああ。分かった。じゃあ、ビッグサル。アンタは何しにここへ?観光じゃああるまいし」
「決まっている。俺はここに・・・戦争をしに来たのさ」
「戦争⁈食料と治療だけじゃないってか⁈」
「そうだ。君達に協力する為にここに来た」
「「おおお!」」
おおっと。流石にやり過ぎたかな。何か拍手が巻き起こってるんですけど。
だがその中、一人が手を上げて立ち上がるのが見えた。
「待て。協力する、というのは大変嬉しい。だが仮面を付けている人間を、はいそうですかと認めるわけが無い」
こんな事を言われるのは想定の内だ。いくらアテがない反乱軍とて藁にもすがる思いで頼むならともかく、ぽっと出のよく分からん奴が急に協力すると言っているんだ。本名も明かせず、顔すら見せない。怪しむのも当然の結果。
だが、仮面を付けていようがいまいが実力を見せれば、少ないかもしれないが信用を得る事は出来る。
「仮面を付けている人間を信用するなど、難しいことは分かっている。だが、君達にできない事を俺がやったら、きっと認めざるを得なくなるだろう」
「俺達が・・・」
「できない事を、だと?」
「ああ。一番最初にやるのは・・・そうだな。宣戦布告だ。伝えるのは反乱軍が、まだ生きているということ。そして・・・」
皆が固唾を飲んで見守る中、俺はあるとんでもない作戦に出る事を既に決心していた。これは宣戦布告というより、完全なる挑発行為だが。
「独裁政権の奴らに勝ち目はない、ということを国民に喧伝させてもらおう」
次の投稿は2月20日を予定しています。
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