プロパガンダ
プロパガンダ。それは特定の思想や主義について政治的に宣伝する行為。
現実世界で有名な例を並べるならば、ナチス・ドイツや日本帝国軍などのファシズム思想に基づく戦争促進広告。戦争中のアメリカの日本に対する反日感情を高める為に作られたポスター。
挙げればまだまだ出てくるが、一番知られているのは大体この辺りまでか。
教育にも関わってくるから表裏一体である点も存在するが、特にマスメディアなんてのは国民が一番信用する媒体であり、一番厄介だ。外からの情報を通さなければ、それだけが国民にとっての真実に他ならない。
「さぁて。これからどうするかね」
あれから色々話してもらって、今は真夜中。寝るつもりはないので俺は焚き火の火を消さないように番をしている。
あの自殺をした奴の事に関しては、元々精神が参っていたようで、いつ自殺してもおかしくなかった状態だったらしい。俺達が来る前にも仲間が何を言っても反応せず、ブツブツ言っていたという。長らくの戦いと惨敗のせいで鬱か何かだったんだろう。
プロパガンダの事については、唐突に考え出したのではない。高度情報社会を最低知識のみとはいえ5年間は関わってきた。その内でネットの動画による啓蒙活動によりテロリズムに発展する例も見てきた。
そんな俺が、情報社会ではないこの閉ざされた国で如何にするか。それを考えるためにベースにしたかった。
「ねぇ。貴方、誰?」
首に感じる冷たくて硬いもの。すごく命を刈り取る形をしている。鎌ではない。ロングソードでもない。
・・・短剣だ。それもヤバそうな液体が付けられたやつ。
「・・・俺は反政府軍協力者、ビッグサル。君達に加勢するものであり、君達にとっての不可能を可能にする人間だ」
「分かった。じゃあその仮面を外して」
「それは出来ない。もし外したら、俺は君達に協力出来なくなる」
「やめておけファローズ。お前に人殺しは早い」
「モンスターなら幾らでも殺したことがあります。兄様。ここは私が」
「止めろ」
「・・・はい」
短剣が首から離れ、九死に一生を得た気がした。九死っていうか零死十生だけど。
焚き火の明かりが強い近くへ来た二人の男女。女性は短剣に相応しい軽装備。男性の方は逆にロングソードを付けている割に、女性以上の軽装備。
幾ら機動力を重視していたとしても、ほぼ鎧などないに等しい。一度食らったら終わりだ。
「話はロイスから聞いた。仮面は外さなくてもいい。我々に敵対意思はない」
「貴方は?」
「私か?私はジョシュア・エヴィロイド。今、君を殺そうとしたのは妹のファローズ」
「ファローズ・エヴィロイドです」
ファローズはそれだけ言うと、大きなバックの中から現地調達した食料を出し始め、木を削り出して作った串に魚や肉を刺して焚き火で炙り始めた。
滝壺内にパチパチと油が滴り落ちて跳ねる音が響き始める。
「さて、ビッグサル。我々に不可能であり、君が可能にするとは、一体どういうことか。ご説明願いたい」
「ジ・・・陛下。その前にこの国の状況を私に教えて下さい。そうでなければ説明は出来ません」
「分かった」
ジョシュアから示された情報の通り道は以下の通りとなった。
まず外からの情報は全て政権側に入り、政権の広報担当に値する『情報監査室』に行く。情報監査室から出た情報は新聞として印刷され、街中に張り出されたり配布される。
ギルドのハンターや冒険者による情報開示は騎士団により堅く禁止され、もし破れば相応の刑が処される。
外部から送られて来た物は全て情報監査室の下部組織が一つ一つ確認。紙切れまで様々なものを鑑定する。もし食材や資金なら即没収。全て政権が回収し、全員に平等に配布する、としている。
ここまでなら、まだ戦前の日本に若干似ている。問題はここから先だ。
情報は全て情報監査室にて全て、『改竄』された上で伝えられている。つまり国民にとって改竄された情報こそが完全なる真実。
反乱軍に期待していた人がいたとしても、騎士団が完全に殲滅する前に『反乱軍壊滅』とでもしておけば政権側は楽だ。
普通、あり得ない!と考える。しかし処罰が厳しい上に疑っても知る為の方法がないので、知ろうとすることを諦めるしかない。 或いは、知らないものは調べない、というスタンスを守り続けているとも言える。この国で生きて行くには無駄な詮索はしないが吉、という感じか。
ジョシュアが国外向けに匿名で伝えることにより、漸く独裁政権だというのが外側に届いた。
事実20年以上前から、正しい血統の人間が玉座についた記録がないという。
「こんなところだ。情報は提供した。さて。ビッグサル。君のやり方を説明願いたい」
「・・・分かりました。ご説明しましょう」
俺は立ち上がり、いくつか考えていたプランの内、簡単かつ確実な方法を選んだ。
誰も傷つくことなく、失敗しても見つかることすらない方法だ。
「相手側に改竄されるなら、正規のルートを通さずにやればいけます」
「不正規ルートを使うと?だが情報をばら撒くにも不正規ルートも正規ルートもないが?」
「政権側に通さなければ簡単です」
「・・・我々に潜入してまでやれと言うか?」
「まさか。もっと簡単で、誰一人傷つかず、政権側の人間は、ある意味誰一人気づきません」
「そんな方法があると?」
「はい。ただし、時間帯は日が落ちてからです」
日が落ちてからが勝負。こればっかりは仕方がない。だが逆に暗い内なら可能な作戦だ。
俺はジョシュアに今回の作戦を説明しながら、幾つか必要なものを生成し始めた。
今回の作戦、それは・・・
『ドローンによるリアルタイム生中継作戦』
である。
言葉だけ聞けば甘い作戦かもしれない。しかしそれはドローンが存在する俺がいた高度情報化社会だけの話。
ドローンがないこの魔法の世界ならば、ステルスにするだけで至って簡単。投影機を積んだドローンと大音量スピーカーを積んだドローン。この二種類を大量に配備する。
ただ、この作戦はその前に国内部の構造を調べなければならない為、翌日に調査用ドローンを発射する予定だ。
「だがそんなことができるのか?」
「はい。任せてください。この作戦は少なくとも明日の夕方には実行出来ます」
「にわかに信じがたい。が、君を信じてみることにした」
「何故です?」
「君は・・・信用出来る気がした、数少ない人間だからだ」
「ありがとうございます。では、また明日」
焚き火から離れて、俺は自衛隊で使われている宿営用テントを生成。空いた場所に組み立てて、一緒に出てきた寝袋に身を包む。
ゆっくりと睡魔がやってきて、段々まぶたが重くなっていく。
「あ・・・テント・・・皆に・・・出せば良か・・・た」
次の投稿は2月25日を予定しています!
いつも沢山のPV・ユニークをありがとうございます!
感想・ブックマークを是非!お願いします!




