真美の彼女心6
閉じ込められた翌日は熱が高かったので学校を休み、ゆっくり寝ていた。
その放課後の時間。
朝、私が休んでいる事を知った同級生の佐藤さんが、匠の携帯から電話をくれた。
お見舞いに来ると言うけれど
「もういいから。そんなに気にしないでいいよ。私は大丈夫だから。」
そう言えて断れた。
薄暗くなってから匠が、同級生の佐藤さんから持たされたお菓子を持って私の部屋にきた。
何年かぶりだし、付き合って初めてなのにパジャマで緊張しながら恥ずかしくなってしまう。
今日はあれから同級生と佐藤さんと、話を聞こうとした桜ちゃんと三人で帰ったそうだ。
どうしてもお詫びとお見舞いにと駅の地下で、私の好きそうなお菓子を一緒に選んで買って匠は渡されたそうだ。
下校時間で学生で賑わう駅の改札前で偶然高田さんにも会ったらしい。
「殴ってやろうかと思った。」
顔を見ただけで匠は、そう思ったと言った。
匠達に会って、気に入らない風に佐藤さんを見る高田さん。
「噂でも何でも好きに流したらいい。もう、私と関わらないで。」
緊張しながらそう言った佐藤さんを高田さんは鼻で笑ったらしい。
佐藤さんがくれた包装を開いた、とても美味しいお菓子を見つめてしまう。
「たっくんがどうこうじゃなくて、私が気に入らないだけだったんだね。」
「ごめん。本当にごめん。」
そんな私の言葉に辛そうに匠に謝られた。
「別にたっくんのせいじゃないでしょ?ほら、噂は本当だったみたいだし私が気に入らないって書いてあったし。高田さんが悪いんだよ。」
「けど、俺と居なかったら会わなかっただろ?」
どこか言いにくそうに、目線を外して言われた。
「もしかして…今まであんなに言っておいて、別れ話しようって思ったりしてないよね?」
しゅるしゅる眉の下がる匠。
図星のようだ。ため息が出てしまう。
「あのね…。上手く言えないけどね。
閉じ込められてても、絶対にたっくんが探し続けてくれてるって。見つけてくれるって信じられ続けたから割と怖くも不安もなかったの。
ただ寒いのとトイレが辛かっただけで。
私からしたら、こんな事で私に悪いから別れようって思うたっくんが信じられないよ。」
驚く匠だけど、私は匠に隣からいなくなって欲しくなかった。
「この前も言ってたじゃん。たっくんには、私と別れる予定はないと思ってていいって。私が予定たてても全力で潰すって。あれは嘘?」
静かに首を横に振る匠。
「じゃあ、そんなに落ち込まないで元気出してよ。私は大丈夫だからさ。そんな話しようとしないでよ。」
「ごめん。本当にごめん。」
まだ、辛そうに言う匠に抱きしめられて、背中をゆっくり優しく撫でられた。
「けど、本当にいいのか?閉じ込められたりしたのに…。」
コクコク頷いた。それでも、まだ何か考える匠。
そうして、静かに言った。
「分かった。本当は別れたくなんかなかった。でも、まぁちゃんには、そうした方が良いような気ばかりしていたんだ。
別れたりなんかしない。」
その言葉で、やっと倉庫の事も匠が離れて行かない事も安心できて涙がこぼれてきた。
その日の夜に熱は下がったので翌日は、学校に行く事にした。
いつもの様に匠の迎えで駅前で桜ちゃんと合流した。
「真美ちゃんが言った笑う悪魔が分かったよ。あれは悪魔じゃ無くて魔王だね。佐藤さんなんて、後ずさりしてて空気も重かったもん。」
笑う小悪魔桜がいきなり攻撃してきた。
桜ちゃん…。
本人には、笑う悪魔なんて言ってないんだよ?言える訳ないでしょ?
余計、悪魔になりそうで…。
匠と目が合うと意地悪くニヤリと笑われた。
「笑う悪魔で悪かったね。後で話そうね。」
もういい、逃げられそうにないから…。
「ごめんね。笑う悪魔なんて言って。そう思うだけ。だって本当に、谷沢くんの友達のあの三人が天使に見えたくらいの悪魔ぶりだったから。
それで、桜ちゃん何かあったの?」
サラっと謝り言い訳をして、桜ちゃんに聞いた。
「やっぱり後でじっくり話そう。」
低い声で私の耳の近くで匠が言う。
「絶対嫌。桜ちゃんどうしたの?」
「後は頑張ってね。」
断る私を桜ちゃんは、何故か応援したあと教えてくれた。
昨日、改札前で会った時に高田さんは佐藤さんを鼻で笑った後、匠をちらっと見て去ろうとしたそうだ。
「待てよ。そこのブス。」
お人形のように可愛くて、ふわふわ茶色い髪の高田さんをそう呼び止めたそうだ。
そして、周りに同じように下校する高校生が沢山いる改札前で、綺麗に微笑む魔王になったらしい。
ただでさえ目立つ匠なのに…。
信号での悪魔の時を思いだし、魔王の狙いが私じゃなくて良かったと思った。
昨日は、私の為に匠そうなったんだろけど平然と聞いている魔王の匠。
詳しく楽しそうに話してくれる小悪魔桜。
私は、天使を探しに行きたくなった朝だった。
後日、私が一人の学校帰りの時に、高田さんを駅前で見かけた。
高田さんは私に気が付くと、物凄く嫌そうな顔をして私を避けるようにすれ違った。
それで、やっと高田さんの事が終わったんだと思えて、匠に教えてあげようと夜にメールをした。
そんな匠の彼女の真美の日々でした。